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アウトロー・アウトロリータ  作者: パセリ
小牧さゆりと死の無法地帯
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第五話


 倉庫は、道を暫く歩いて、道路を外れていったところにあった。

 道理で、ヤクザに見つからないというわけだ。

 こんなところを探しにくるなんてことは、流石にしてこないだろう。

 倉庫は、木造で、結構古びていたが、蹴ったりぶつかったりするだけで壊れるということはなさそうなので、特に問題はないと言える。

 倉庫の中に入ると、そこには大量の箱があった。

 どうやら、ここに銃弾が入っているらしい。

「デザートイーグルは.50AE版だよね。だから、これ」

 渡されたのは、中々に、大きな弾だった。

 実銃の弾とは、こういうものなのだろう。

「それ、七発しか撃てないから、それだけで仕留めてね」

「七発ありゃ、十分じゃないのか?」

「至近距離なら、そうかもしれないけど」

「そ、そうか。って……」

 少女は服を脱ぎ、着替えを始めていた。

 着替えるなら、言ってくれればいいのに。

「さゆちゃん、ごめん」

「なんで謝るの?」

「いや、だって着替えをみちゃったから」

 そう言うと少女は頬を赤く染めた。

「少しだけ外に行っていてくれる?」

「言われなくてもそうするさ」 

 僕は、そんな感じで渋々外に出た。


「もう着替え終わったよ」

 少女はそう言って、僕を呼んだ。

 少女の服装は、タンクトップにホットパンツという、身軽そうな服装に変わっていた。

「ねえ、お兄ちゃん」

「なに?」

「この格好、どう?」

「いや、どうって言われてもなあ」

 何と言えば正解なのか、全く見当のつかない場合は、答えないのが正解である。

「それじゃあ、僕が聞くよ。僕の格好、どう?」

「ダサい」

「…………………」

「特に、シャツにI’M COCKって書かれているのが致命的にダサい。お兄ちゃんは、もっとカッコいい服装にしなきゃダメでしょ」

「カッコいい服装ってなんですか?」

「今度、服屋さんにいったら、教えてあげる」

「そう、そういうことなら、まだ死ねないな。で、このシャツに書かれている英語の意味は、どういう意味なの?」

「それ聞くの?」

「そりゃ、聞くよ」

「お兄ちゃんにあって、私にないもの」

「邪心かな」

「そう思うなら、そういうことにしておいて」

「で、正解はなに?」

 正解は、答えてくれなかった。

「あっ、お兄ちゃん、私の服装はどうかって聞いたのに誤魔化した!」

「さゆちゃんは、どんな服でも可愛いよ」

 そう言ってみたものの、少女の顔は、納得のいってない表情であった。

「で、お兄ちゃん」

「なんだ?」

「人を銃で撃つ覚悟はある?」

「うーん、どうだろう」

 こればかりは、やってみないとわからないというか、撃たないと死ぬというタイミングで撃てるかどうかっていうのは本当に微妙である。

 でも、守らなくてはいけないものがある。

 僕の命も、少女の命も、どちらも守らなくてはいけない。

 何故なら、少女がそう言ってくれたから。

 裏切ることはしたくないから、撃つときは撃つことになるだろう。

 それが、いつになるかはわからない。

「そう言えば、僕たちはどこで寝て、どうやってご飯を食べればいいんだ?」

「ここで寝て、ここでご飯を自炊します」

「え、本当?」

「私はお兄ちゃんには嘘をついた覚えはないよ」

「自炊って言っても、どうやって?」

 そう聞くと、少女は倉庫の隅のほうに歩いていった。

 そこには、なんと冷蔵庫があったのだ。

「ここ、ボロボロなだけの倉庫じゃないの。しっかりと、生活するための設備は揃っているから、住みやすいんだよ」

「ほう、住みやすいのか」

 少女は、冷蔵庫から、なにやらスーパーの肉のようなものを取り出した。

「これ、豚肉」

「いつ、この冷蔵庫にいれたの?」

「これは昨日の朝」

 昨日も、ここを使っていたのか

「何を作ってくれるのかな?」

「今日は、豚カツにするね」

 豚カツ? 初日からやけにご馳走である。

 ちなみに豚カツは僕の大好物である。

「なんか、手伝うことある?」

「いや、今日は私が全部やる」

 少女はそう言って、僕の提案を頑なに断った。

 そして、どこからか、持ち運びタイプのガスバーナーを取り出した。

 倉庫には、調理器具も多く完備されていたようだった。

 油やら、卵も倉庫の中にあった。

 ここまで完備されていると、ここで暮らすこともできそうだった。

 暮らすこともできそうなだけで、暮らしたくはないのだが。

 だけど、ここで暮らさなくてはいけない。

 こんなボロボロの倉庫での生活は、一人だと死にたくなるだろう。

 でも、少女と一緒に住むとなると、話は別だ。

 そんなことを考えていると、僕は眠ってしまった。

 眠くなっている自覚は全くといっていいほどなかったのだが。

 そりゃ、まあ、生まれて初めて銃で人が殺されているところを見たのだから、精神的に疲れていたとしても無理のないことだ。

 次は、僕が死ぬかもしれない。

 その恐怖はあった。

 だからこそ、現実逃避をするように眠ったのだろう。


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