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アウトロー・アウトロリータ  作者: パセリ
小牧さゆりと死の無法地帯
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第四話


 歩いて一時間と、少しが経った。

 空は少し暗くなり始めていた。

 ゴツゴツとしたアスファルトの道を、黙々と、コツコツと歩いていたら、海が見えてきた。

 ここにきて、港広市に来たという感じがする。

 八月の海というのに、人はそれほどいなかった。

 砂浜じゃないのが問題だ。

 砂浜ならば、遠くからでも人は来る。

 それと、ヤクザの件も、人がいないのに、大きく関係しているだろう。

 港町。

 治安はそんなに悪くないはずなのだが、ヤクザが住み着いてからは、そうとは言えなくなってしまった。

 その影響で貿易もヤクザ関係の企業しか、ここらの港ではやらない。


 ――海を見ていると、一人の男が僕たちに話しかけてきた。

「おい、君たち」

 スーツ姿のその男は、低い声でそう言う。

「お前は、小牧さゆりだな」

 どうやら、この男は少女の名前を知っている。

 知り合いなのだろうか。

 だが、少女はヤクザの標的となっており、相手がヤクザならば、少女の名前を知っていて当然と言える。

「そうだけど、なに?」

「なに? じゃない。お前には死んでもらわないと駄目だ」

 コイツ、なんてことを言うのだろう。

「なんで死んでもらわないと駄目なんだよ。意味がわからない」

「組長の命令だ」

「組長?」

「ああ、そうだ。そんで青年よ、何故この少女と一緒にいるんだ?」

「少女を守るためだ」

「お兄ちゃん……」

「お兄ちゃん? お前たちは兄妹だったのか? そうなると、両方死んでもらわないと駄目になっちゃうな」

 男は、そう言ってなにやら銃らしきものを取り出した。

 マジかよ。

 僕は、そんなにすぐ銃撃戦的なことが始まってしまうという事実から目を背けていたせいで、銃に弾は入れてなかったのだ。

 というか、弾は渡されていなかった。

「まずは、青年、お前のほうから殺してやるよ」

 男は銃口を僕に向けた。

 ――コイツ、本当に撃つ気だ。

 当然と言えば当然かもしれなかったが、心の準備はできていなかった。

 そんなことを言っている暇もないぐらいの絶望的な状況なのだが。

 少女のほうを見ると、なにやらスカートの丈を気にしているようであった。

 こんな状況であっても、何やら呑気である。

 そんなことも御構い無しに、男は銃口を僕に向け、僕をにらみ続けた。

 ターンと銃声が鳴り響く。

 全てが終わったと思い、僕は目を瞑った。

 

 ――しかし、僕は生きていた。

 そして凄い後悔が僕に飛び込む。

 何故なら、銃声がして僕が生きているということは、撃たれたのは、少女だということになるのだから。

 しかし、目を開けると少女は生きていた。

 あの音は空耳だったのだろうか。

 それにしてはリアルであるし、音がでかすぎる。

 男の方を見ると、なんと、男は大量の血を出し、倒れていた。

 そのリアルで惨いものに、僕は見てもたってもいられなくなって、少女の方に目をやる。

 よく見ると少女は拳銃を持っていた。

 小型の銃だ。

 名はデリンジャーというらしい。

 手のひらに収まり、ポケットにすら隠すこともできるその銃は、アメリカのリンカーン大統領暗殺事件にも使われた、隠し持つには最適の銃である。

 少女はスカートの丈を確認していたと言ったが、その丈を確認している動作をしているような真似をし、銃を取り出し、相手を油断させておいて、殺したのだ。

 さっきまで見ていた鮮やかな海とは対照的に、今のこの光景は、真っ赤な血の海だ。

 黒いスーツだった男から、大量の血が溢れだし、本当に、スーツの色が黒であったのかわからない、そこまでの赤、血の量である。

 ショッキングな光景である。

 僕は吐き気を覚えたが、何もすることはなかった。

「ここにいたら、また人が来るかもしれないね。次は本当に殺されちゃうかもしれないから、倉庫にいきましょうか」

「倉庫?」

「銃弾とかが大量にあって、ヤクザには発見されてない隠れ場所があるの」

「ほう、まあ、僕は弾を持ってなかったからね。玉は二つも持っているけれども」

 場を和ませようとして、僕は空回りしてしまった。

「え、何を言っているの? 私には理解できないわ」

「理解しなくていいです」

 そんなわけで、倉庫に向かうことになったのだ。


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