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アウトロー・アウトロリータ  作者: パセリ
小牧さゆりと死の無法地帯
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第三話


 そして、朝である。

 テレビの画面をぼんやりと眺めていたのだが、テレビの画面に僕は目を疑った。

ニュース。

「今日未明、港広市の住宅街で暴力団による銃乱射事件がありました」

 港広市は、僕が今日行こうとしている場所だ。

 どうやら、少女が言っていることは何も大袈裟に言うなどしていることはなく、ただ真実を述べていた上で、僕に銃を渡したらしい。

 これは、本当に死ぬかもしれない。

 渡された拳銃、デザートイーグルで、ヤクザ相手にどこまで通用するかはわからないし、生きて帰れるなんていう考えは捨てた方がいいと思っている。

 そして、僕は家をでて、隣の少女の家のインターホンを押した。

「はい、お兄ちゃんだね!」

「お、おう」

 僕は少し驚いた。

 少女の格好は、半袖の服に短めのスカート。

 これから戦いに行くという格好には見えなかったのだ。

 それに比べて僕は、怪我の心配をして長袖シャツにジーンズである。

「港広市で、ヤクザの銃乱射事件があったらしいな」

「そうみたいだね」

「怖くないのか?」

「怖い、でもお兄ちゃんがいるもん」

「そ、そうか。そんで、いつぐらいに出発する?」

「そんなに早くなくてもいいけど。だって、出発しちゃったらいつ帰ってこられるかわからないし……とりあえず、家上がって。今日は親、いないから」

「お、おう」

 僕はそんなわけで、少女の家へ侵入成功したのだ!

「はい、ジュース」

 そう言って少女はコップにオレンジジュースを注いでくれた。

 僕は、それを嬉しそうに飲み干す。

 ジュースのひんやりとした感じが夏には堪らないうまさをつくりだす。

 これを世間一般では、冷たいもの中毒とか言うらしいが、なんでも中毒とか言って馬鹿じゃないかと思うし、僕が何かの中毒であるなら、少女中毒だ。

 そんな感じで少しダラダラしながらテレビを見ていると、野球が始まった。

 今日は、僕の応援している投手が登板する日だった。

 マウンド上で大きく振りかぶり、投げられる球。

 外角低めにビシッと決まるストレート。

 気持ちいい、見逃し三振。

 その投手の所属するチームは、今絶好調であり、僕は、二年ぐらい前から、そのチームを応援しているが、これだけ貯金あっての単独首位だと、今年は優勝できる気配がある。

 そのチームを応援し始めた一年目も、こんな感じで優勝していたし、今年、このチームの優勝が決定するまでは、死ぬのも少し嫌になっている気がした。

 少女も両親もいない一年半、支えてくれたのは、こういうスポーツ観戦だったことを思い出した。

 しかし、それは、少女も両親もいない時の話であって、今の話ではない。

 今は、少女がいる。

 少女を守るために死ぬことが、今、僕がもっともするべきことなのだ。

 ――いや、守るために死ぬのではなく、守って死ぬことが大切。

 僕は、そう確信している。

 それは、間違いではないのだ。

 そして、野球の結果はというと、僕が応援している投手の調子が絶好調の絶好調で、まさかのノーヒットノーランを達成してしまった。

 最後の球は、アウトローのストレートだった。

「そんじゃ、さゆちゃん、そろそろ行こうか」

「もう、行くの?」

「ヤクザにこれ以上暴れさせるのは、許せない。僕の正義感的に」

「お兄ちゃん、そういうとこあるんだね。やっぱり、私はお兄ちゃんが好きだよ」

 嬉しいことを言ってくれる。

 ここから港広市までの距離は結構あるので、バスを使って行くのが一番いいのだが、如何せん、銃を持っているので、歩くことにする。

 結構な距離。

 歩いて一時間、否、二時間。

 ちなみに少女。

 結構なロリ。

 ヤって逮捕、否、死刑。

 死刑とは大袈裟だと思う人もいるだろうが、僕は少女と行為に及ぶなんて奴は許さないし、もし、そんなことをする奴がいるのであれば、僕が殺す。

 つまり、死刑だ。

 そんな少女と今歩く。

 死に場所に向かっているのかもしれなかった。

「そういえば、お兄ちゃん…」

「ん」

「私を庇って死んだら駄目だからね」

「な、なんでだ?」

「お兄ちゃんが死んじゃったら、私は生きていけないから。だから、私を放っておいて、お兄ちゃんだけ生き残るのが一番いいと思うの」

「さゆちゃん、それなら僕だって、君がいなくなったら生きていけないのは一緒だよ。でも」

「でも?」

「だからと言って一緒に死ねばいいとかは駄目だ。一緒に生きて帰ろう」

「そうだね、うん」

 今わかったことは、少女の思いを聞く限りには、僕は死んではいけないということ。

 少女を守るには、絶対に生きて帰らなければいけない。

 そう思いながら、目的地、港広市に向かって歩いている。


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