第二話
今は夏休み。
だが、僕は受験もしないし、就職先も決まってない。
というか、そんな未来のことなんて考えたくもないのだ。
僕は県で一番頭の悪い高校に入学し、なんとか卒業しようとしているのだが、卒業しても、この学歴社会での敗北者であることに変わりはないのであるから、こんな先の見えない人生は、少女、小牧さゆりに捧げるということが、一番正しいことだと思うのだ。
しかも、僕には友達がいないし、彼女なんて当然のことながらいない。
それは顔が悲惨だからとかそういう理由ではなく、顔は逆にかっこいいぐらいだと思う。
今、僕が自分の顔をかっこいいと評したことは、世間一般にはナルシシズムとされ、格好悪いものだろう。
そこが、僕のモテない所以である。
性格に難があり、人と上手く接することができないのだ。
それでも優しくしてくれたのが、近所の少女、さゆちゃん。
これは運命である。
僕は唯一、僕に優しくしてくれた少女のために死ねる。
今、死のうとしている。
自宅でデザートイーグルを眺めながらそう思っていた。
ちなみに、僕の両親は二人とも、二年前に行方不明になっている。
そして、一年半に唯一心の支えであった少女も、姿を消したのだから、僕はその間、人生に深く失望していた。
絶望だった。
そんな時に、さゆちゃん、小牧さゆりは戻ってきたのだ。
と言っても、それでヤクザがどうのという話で、これから僕が死んでこようというのは少し筋が通ってないようにも思われるかもしれない。
だけど、それが唯一の希望、少女を守るということなのだ。
僕は夜飯を食べ、風呂に入り、歯を磨き、寝た。




