第二十二話
夜は倉庫で少女が調理したご飯を食べた。
食後、銭湯に歩いて行って風呂に入った。
あの変態爺が盗撮はしないと言っているから信頼はしておこう。
僕はこれから毎日少女と風呂を入ることになりそうだ。
少女は体の所々に怪我をしていた。
入浴中の会話。
「怪我、大丈夫?」
「大丈夫」
「本当?」
「本当」
「嘘?」
「嘘」
「真似しているのかな?」
「真似しているのかな」
「真似しないで!」
「真似しないで!」
馬鹿にされているようだ。
そうだ、『お兄ちゃん大好き』と僕が言えば少女もそう言ってくれるかもしれないじゃないか。
このノリを利用しなければならないね。
「お兄ちゃん大好き!」
「………………」
空しい、切ない、悲しい、哀しい、切ない、空しい、しい、しい、しぃ、し、死のう。
「デザートイーグルを取ってくるよ」
「え?」
「僕は死ぬんだ」
「お兄ちゃん大好き!」
「やったあ! 僕、自殺しない」
倉庫に戻って、二人で寝るには小さいベッドに入った。
意外にすんなりと眠れた。
今日は母親の命日になった。
僕の父親は、いつ男に殺されたのだろうか。
でも本当の父親があの男であるならば、今日は実の父親の命日でもある。
実の父親があの男なら、僕は港広星山組のヤクザの子になってしまう。
親で言えば、少女の親と対極の立場にあるだろう。
でも僕は少女を守りたい。
否、守る。
しかし、行方不明だった親の話はここであっけなく終わってしまった。
でも少女の問題は、まだ一歩を進んでいない。
本当に僕が解決したいのは親のことではなかったのであろう。
親のことは、行方不明だと言って諦めている節があった。
もしかしたら自己解決していたのかもしれない。
今日の出来事は、それを少し汚しただけに過ぎないのだと思う。
すっかりと眠ってしまっていて、朝になったが、夢なんか見なかった。
少女は起きていて、朝ご飯をつくっていた。
だんだんと、少女は僕より起きるのが早くなってきている気がする。
そうやって、ぼんやりしていると、昨日の頭を至近距離で撃ち抜いて飛び散った男の顔を思い出した。
その男は本当に親なのかもしれないし、そうではないのかもしれない。
そんなの、今更知ることはできないだろう。
終わってしまったことを振り返るということほど、意味のない行動は存在しないと断言できる。
だから、今日からの行動はやはり、ホシイヤマオという人間を探すということだ。
ホシイヤマオ。
本当に存在するのかわからないし、どんな行動をしているのかは未知である。
でも、これだけは言える。
本当に存在しているのなら、『ホシイヤマオ』は僕が殺す。




