第十九話 後編
朝になっていた。
倉庫の中には、朝の光はなく薄暗い。
少女は僕より先に起きていた。
「昨日、私にキスしたでしょ?」
「えっ、なんのことかな」
「私、あの時起きていたの」
「え、あれは寝言じゃなかったの?」
「うん。お兄ちゃんに喋りかけようと思って呼んだら、いきなりニヤニヤしだして、なんかキスしてきて、私がショックで動けなくなっていたらお兄ちゃんは一瞬で寝ちゃったんだもん」
「ショックだったんだ……」
「そういうものには順序があるんです!」
女子中学生に、順序がどうのという話で怒られてしまった僕は、本当に情けない人間だ。
あれ、でも順序の問題ということは、順序を正しくムードを演出すれば、僕がキスしても構わないということじゃないか。
それは朗報だね。
少女はベッドからでて、朝ご飯の準備をしだした。
暫くすると、机にはトーストとオレンジジュースが置いてあった。
「できたよ」
僕は椅子に座った。
「いただきます」
「いただきます」
トーストを食べて、オレンジジュースを飲み、朝ご飯はこんな感じの軽いものでも良いなあと思ったりした。
僕の目的は、少女を守ることであるが、少女を守るためには、組長とかいう奴を見つけ出して説得するなりしないと駄目だと思う。
話が通じない人間ならば、殺さないといけないかもしれない。
僕たちは朝から、その組長を探すために倉庫をでることにした。
本当に組長という人間が存在しているかどうかは怪しいところである。
しかし、ヤクザによれば組長という人間はいるようだし、それが嘘だと疑っていても、どうしようもないことである。
組長という奴の特徴はよくわからないが、残虐な人間であるのは確かだ。
少女を殺すために、少女と同じぐらいの人間を殺しても良いという風潮をつくっている原因である可能性が極めて高い。
僕はそういう人間は許せない。




