第十九話 前編
倉庫に戻った。
久しぶりの風呂にも入ったし、やるべきことはもうない気がした。
いや、違う。
僕たちの目的は、ホシイヤマオという組長を見つけ出すことだ。
でも星井という苗字はここらへんでは全然いないようだった。
そんなことを考えていると、ご飯を何も食べていなかったからお腹が空いた。
僕は仕方なく一人でインスタントラーメンを食べた。
あれ、少女は? と、思うでしょ?
少女なら、僕の横で寝ているよ。
なんか最低な男の発言な気がした。
僕は結構空腹だったようでラーメンをスープまで飲み干した。
そして急にお腹が痛くなったので、倉庫の外にあるトイレに行った。
この倉庫は本当に生活に困らないようにできているなと感心させられるばかりだ。
僕は今日でやることを全て済ましてベッドに入った。
二人だと少し小さいけど、少女となら、べつに大丈夫だ。
すると、少女が寝言を言った。
「お兄ちゃん……」
寝言で僕のことを呼んでくれている。
凄く嬉しい気持ちになった。
でも、何故僕のことを呼んだのか。
夢の中で僕が殺されていて、僕の死体を見ながら『お兄ちゃん……』と悲しげに呟いた可能性もなくはない。
夢の中で僕が全裸で踊りだして、ドン引きしながら『お兄ちゃん……』と呟いた可能性もあるにはある。
でも、きっと少女は僕のことを白馬の王子さまを見るようにして、そう呟いたのだろうと妄想してみると少女が可愛くてしょうがない。
僕は勢いで少女の唇に思いっきりキスをした。
少女は寝ていた。
僕も寝た。




