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アウトロー・アウトロリータ  作者: パセリ
小牧さゆりと死の無法地帯
17/26

第十六話


 星井さん探しパート二。

 今度は、前回よりも人の少ない場所だ。

 家は十軒ぐらいしかないかもしれない。

 その中で、星井という苗字を見つけ出すのが困難なのかどうかはわからなかった。

 ということで、再び星井さん探し決行。

 十軒ぐらいしかないのに、探す範囲が広いから、家と家との感覚が異様に長い。

 探して、一軒、二軒苗字は特に、星井というのに関連性すらなさそうなものばかり。

 秋山、坂本、山田、中村……。

 特に珍しくもない苗字ばかりだったが、その苗字でどこか打線が組めそうなものであった。

 しかし、肝心の星井は、九軒目というのに現れず。

 もしかしたら、星井という苗字は、前回の一軒しかなかったんじゃないかと思ってしまう。

 ――そして、十軒目。

 松井。

 関係のない人たちの苗字を次々に晒していて申し訳ないが、ここでは星井という苗字は見つからなかったのだ。

 前回行ったあそこの星井さんの家のところの主人が、ホシイヤマオという名前である可能性もなくはないが、娘が殺されているということになってしまうので、現実味がない。

 ここでも、星井さん探しは終わってしまうことになる。

 ほぼ諦めて、帰ろうとしていると、銃を持っているヤクザらしき人間と遭遇してしまう。

 まあ、銃を持っているということはヤクザだろうけど。

 怖いという感情は特に湧いてこなかったが、銃を持っている人間がいるということは、今日は人の血を見なければいけないような気がする。

 銃を持っている男の近くには、ポニーテールのかなり痩せた小学生ぐらいの女の子と、その横に兄と思われる高校二年ぐらいの男が半泣きになって正座のような、しかし正座というにはかなり崩れた体勢で座っていた。

 ヤクザの男は銃を、座っている二人に向けた。

 少女は、男のほうに向かっていき銃を構えた。

 ブローニング・ベイビーという小型の拳銃の銃口は完全に男の方に向いていた。

 ターン。

 鋭く高い音がした。

 僕は男のほうを見る。

 ――男は唖然とした顔をしながらも、立っていた。

 銃が上に外れたのだ。

 拳銃で正確に撃ち抜くのは、難しく外れることもあるだろう。

 しかし、今は状況が最悪である。

「ほう……」

 男はそう言って撃つ的を少女に変える。

「小牧さゆり、お前を狙っていたのだが、見つからなくて、別の、女子と男子の組み合わせを殺そうとしていたのだが、お前が来たからにはお前を撃つことにしよう」

 言っていることが意味不明であった。

 何で少女が見つからなかったら、違う人間を撃つのだ。

 そして、危険を感じた。

 少女が撃たれる……。

 それだけは避けたいことだ。

 僕はデザートイーグルのロックを解除した。

 少女曰く、最強の拳銃らしい。

 どこでもいい、弾が当たれば、男は死ぬ。

 左手でスライドを操作し、銃口を相手に向ける。

 しかし、こちら側にも相手の殺意が伝わってきた。

 相手が銃の引き金に人差し指をかける。

 少女は絶望的な表情をしていた。

 殺されることは覚悟できないのであろう、やめてくれというのが顔から伝わってくるし、目からは涙が零れていた。

 僕はその間に、相手を撃っていた。

 ダァアアアアアアアン!

 かなり大きい音が、僕の耳を攻撃する。

 男は胸を撃たれ、口から血を噴き出した。

 そして、撃たれたと後にトリガーを引いたようで、地面に銃が撃たれていた。

 男は血を出して倒れていたが、もうすぐ死ぬであろう。

 先ほどまで座っていた二人組は、立ち上がれないほど震えていたが、やがてその震えを、逆に利用するかのように立ち上がり、走って逃げていった。

 デザートイーグルの反動は、やはり強かったが腕や肩に痺れはこなかった。

 僕は『働いたら負け』のシャツを着ながらにして、人を殺した。

「怖かった……」

 少女はそう言って座り込んでしまった。

 座り、俯き、体が震えだす。

 この震えは、泣いている時の震えだ。

 少女は、人を銃で撃って殺していて、その経験があったとしても、やはり、銃は怖いものなのであるのだろう。

 僕はデザートイーグルを見つめた。

 この銃であと何人、人を殺さなくてはいけないのだろうか。

 僕は、自分が殺した男を見つめて、蹴り飛ばしたくなったが、気持ち悪くなったのでやめた。

 今は、普通なら昼飯を食べるぐらいの時間帯だが、今の僕たちには、食欲というものは皆無といってよかった。

 恐怖。

 僕たちは、これから死を目の当たりにしなければならない。

 ヤクザの言動を見る限り、少女、小牧さゆりを殺すのに、同じ年ぐらいの女の子を殺すという意味不明なことをやってもいい風潮にあるようだった。

 それは、阻止しなければならない。

 ヤクザなんかに、子供たちの将来を奪われてはいけないのだ。


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