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アウトロー・アウトロリータ  作者: パセリ
小牧さゆりと死の無法地帯
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第十四話


 歩いて一時間ほどで家についた。

 結局、道でヤクザには出会わなかった。

 鞄の中から、家の鍵を取り出して、家の中に入る。

「どうする? はいる?」

「うん、そうする」

 少女は、僕の家の中にはいると、脱いだ靴をしっかりと並べた。

「うーん、お兄ちゃんの家にはいるのは久しぶりだなあ」

 少女は、僕の家の中のものを探り始めた。

 何故か、少女は僕の何かを疑っているようだった。

 だけど、一向に見つからないようで、それを諦めたようだった。

 そう、残念ながら僕の家の中にエッチな本は一冊もないのである。

 逆に不健全な気もするが、そんなことはどうでもいいのだ。

「服はどこにあるの?」

 僕は、記憶の中に服がどこにあったかを思いだそうとした。

 半袖の服の場所は思い出したが、長袖の服は思い出せなかった。

 何故、夏に長袖の服かと言うと、まあ、怪我の対策である。

 しかし、暑いのはあるかもしれない。

 僕は、半袖を着ようと思い、半袖の服を取りにいった。

「ここに、夏服がいっぱいあるよ」

 僕はそう言って少女を呼んだ。

「ほう、ここからセンスのいい服を探せばいいのですね」

 少女はそう言って好奇心旺盛に僕の服を見た。

「お兄ちゃん、このピンクの服がいいんじゃない?」

 驚いたことに、僕はピンクの服を持っていたらしい。

 少女が僕の服を他にもないかと探す。

 すると、少女は突然笑い出した。

 早く笑いを止めなければ死んでしまいそうなほど笑っている。

 I’M COCKと書かれた、ピンクのノースリーブのシャツがそこにはあった。

 僕は、その服を着た覚えはなかったが、何故かあったようだ。

 ちなみに、服を買ったのは僕の母親である。

 母親が行方不明になる前だから、二年ぐらい前のものなのだろうけど、改めて見ると、僕の母親の服のセンスの奇抜さに驚かされる。

 それに気づいたのが最近であること自体がおかしいかもしれないけど。

「お兄ちゃん、これ着てよ」

 ピンクの邪心ノースリーブシャツを指さして少女は笑っている。

 こんなに笑われているのに、着られるわけがない。

「かっこいい服なかった?」

「かっこいい服? うーん……」

 少女は夏服の山から、また服を探し始めた。

 その中には、邪心ノースリーブシャツに、負けず劣らずのダサさの服が多くあり、その服が発掘される度に、少女の腹筋を崩壊させた。

「もしかして、かっこいい服ない?」

「そんなことないと思うよ。いや、服は着る人のほうが大事だから」

「ほう。僕はどんなんなら似合う?」

 少女は再び、邪心ノースリーブシャツをとって、これを着てとしつこくジェスチャーする。

 僕は、絶対にこの服を着ないという気持ちができたので、それを無視する。

 少女は半分ふざけているようだったので、自分で服を探してみると、『逝ってよし』とか、『自宅警備員』等と書かれた、ふざけた服が大量にあった。

 その中から、僕は『働いたら負け』と書いてあり、その横に坊主頭の青年がプリントアウトされたシャツを選んで着ることにした。

 意外にそれを着たらウキウキした。

 それが、何故だかはわからない。

 多分、母親とセンスが一致したということだろう。

 それはそれで、息子としては非常に恥ずかしいことだ。

 しかし、僕は結構母親に似ているところが多くある気がする。

 でも、父親には似ているとこは少ないと思う。

「お兄ちゃん、本当にそれ着るんだ」

「うん、いいでしょ」

「それで、人を銃で撃つことになるけど」

「人を銃で撃ったら負けかなって思っている」

「……」

 少女は駄目ってしまった。

 心底呆れたようだった。

 いや、だって普通、人を撃ったら負けでしょ。

 喧嘩の時だって最初に殴った奴が悪いみたいになるし。

「それで、私を守ってくれる?」

「どんな服を着ていても、僕は君を守るよ」

「そのセリフ、別にかっこよくないよ」

「マジで?」

 そんなはずはない、滅茶苦茶かっこよかったぞ、今のセリフ。

 ほら、聞いてよ『どんな服を着ていても、僕は君を守るよ』っていうセリフ、ほら、かっこいいよね…… いや、冷静に考えると少女にそんなセリフを言い出す高校三年生がいるとなると、そして、それが自分だと思うと、なんだか恥ずかしくなってきた。

 だけど、僕は着る服を選んだし、『逝ってよし』とか、『自宅警備員』とか書いてある服を数枚持って、家をでることにした。

「あれ、さゆちゃん……」

「なに?」

「着替えた?」

「あっ……」

 少女は、まだ着替えをしていなかったのだ。

 それに気づいてなく、女性として、服を何日も着替えていないというのは、恥ずかしく思っているようだった。

「お兄ちゃん、早く、倉庫に帰ろうよ」

 少女の着替えは、倉庫にある。

 それなら、何故毎日着替えをしなかったのか謎だが、きっと人を撃つとか、そういう光景を見ていて、着替えなんてものを忘れてしまっていたのだろう。

 でも、少女の今の服装はタンクトップにホットパンツ。

 次の服装がどうなるかは、楽しみではある。

 そういうことなので、倉庫に戻ることにして、僕は少女と手をつないで、一時間程度の道を歩くことにした。


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