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アウトロー・アウトロリータ  作者: パセリ
小牧さゆりと死の無法地帯
11/26

第十話


 人が多くいる住宅街。

 港広市はヤクザがいても、結構な都市である。

 しかし、一部地域はヤクザに支配されていると言ってもよいところがあり、そこは、警察もいない無法地帯となっている。

「この家から、星井っていう苗字の家を探せば見つかるかな?」

「お兄ちゃん、相手はヤクザだよ。そんな親切に表札とかかけてあるとは思えないよ」

 それもそうであった。

 しかしながら、そんなことでも、やらなければ見つけられない。

「そういえば、港広星山組の本部というか、事務所みたいなところの住所はわかっているの?」

「わかってない。そういうところは明かさない組織らしいから」

 事務所を突き止めるのも、少し難しいようだ。

 でも、事務所がわかったところで、そこに乗りこんでも無謀な気はする。

 暫く歩いていると、そこには『星井』と書いた表札があった。

「星井だって」

「インターホン押してみる?」

「うん」

 そのインターホンには、カメラがなかったので、テレビモニター付きではない。

 相手がヤクザではなく、一般人だった場合、高校生である僕がインターホンで喋るよりも、中学生である少女が喋ったほうが、相手に安心感を与えるだろうと考え、少女がインターホンを押して、家の人と喋ることにした。

「すみません、ちょっといいですか?」

「なんだい、アンタはヤクザかい?」

 声の主は、四十代の女性であろうか。

「ヤクザではないです」

「そうかい。アンタは何歳なんだい?」

「十二歳です」

「へえ、私の娘と同じぐらいだねえ」

「娘さんですか」

「そう、だけどまだ帰ってこなくて」

 帰ってこなくてという言葉が、僕には少し引っかかった。

 だから、僕は質問をした。

「その娘さん、少し太っていましたか?」

「なんだ、男の人もいたのかい。太めかって? 失礼なこと聞くね。でも、そうだよ。確かに娘は太っていたさ。でもなんだい?」

「服は、青いワンピースでしたか?」

「そうだよ」

 あの女の子は、この星井さんの娘さんだったのだ。

 ただ、特徴が似ている場合もあるかもしれないが、それは願望にしかならない。

「それでは、失礼しました」

 少女が突然そう言って、歩きだした。

 察したのだろう、暗い表情であった。

 そして、僕たちは、星井という苗字の人を探し続けた。

 この間にとった昼飯は、コンビニおにぎりとジュースだけで済ました。

 ジュースはペットボトルで、少女と回し飲みをした。

 コンビニで食事をした時の金は、少女が払った。

 少女の両親は、少女を見捨てたわけではないので、お金は送ってくれるようで、毎日こうやってご飯を食べる分には困らない。

 昼飯を食べて、星井という表札のある家を探したが、一向に見つからなかった。

 ずっと探し続けていると、空が暗くなってきて、お腹も空いた。

 夜飯は、歩いていて近くにあったファストフード店で済ませることにした。

 僕も少女も、チキンのハンバーガーのセットを頼んだ。

 ハンバーガーとポテトをコーラで胃に流し込み、また、星井という表札探しを続行した。

 見落とさぬように、ゆっくりと歩いて探した。

 住宅街なら、もう少しはいても良さそうな、星井という苗字は、結局先ほどの星井さんしか、ここにはいなかった。


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