第九話
「お兄ちゃん、大丈夫?」
そこは、倉庫のベッドだった。
また、僕は少女に助けられてしまったのだ。
「女の子はどうなった?」
「どうにもできなかった。あのまま」
「そんな、ここに警察はいないのか?」
「ここにはいない。港広警察署は、港広でも、安全な場所でしか働いてないの」
「無法地帯じゃないか」
「そう。そこでおじいちゃんは頑張っちゃったの」
「その後の警察はまともにヤクザと戦わないのか」
「で、お兄ちゃん」
「なんだ」
「今日はかっこいいところを見せてもらったよ」
「おお、そうか」
「でも失神はかっこわるいなあ」
「うん、僕もそう思っているよ。でも、あの銃の威力は凄いね。一撃で相手の顔がぐちゃぐちゃになっちゃうんだから」
「デザートイーグルは拳銃の中で最強の威力と言われているから」
「そうなの?」
「それは.50AE版だからね。簡単に言えば一番強いんだよ」
「だから、あんな顔が吹っ飛んだのか。……って、肩痛っ!」
「反動で手が凄い上に跳ね上がっていたからね」
どうやら今日は、もう一度銃を撃てと言われても無理そうなコンディションである。
でも、人探しはまだ終わったわけじゃないし、これからだ。
時間もまだまだあるし、ここで休むわけにはいかない。
「また、今から人探しを再開しよう」
「あ、うん。わかった」
また、道にでて、再び歩道を歩く。
「うっ……」
「どうした、お兄ちゃん?」
僕は吐き気がした。
これは、無理もないことだと思う。
何故なら、そこには太めの女の子の死体と、銃で撃たれ顔が原形をとどめていない男の死体が、平然と転がっていたからだ。
「これから、もっとこんなのが増えていくのかな?」
僕は少女に疑問を投げかけてみた。
「そうかもしれない。でも、今回の場合、ヤクザと関わりのない女の子が一人死んでいる。それで、被害が広がるなら、私が死んだほうがいいかもしれないね」
「そんなわけない。僕のことを考えてくれ。僕は君がいなければ、駄目なんだ」
「う、うん。そうだね」
僕は死体を見ながら、少女をこんな姿にしない、させないというのを、心に誓った。
道を歩いていき、港広市でも、特に人の多い場所に向かっていく。
組長を探しに、そして殺すために。
これ以上の被害をださないために。
「組長の名前って、なんか情報ある?」
「聞いた話だと、『ホシイヤマオ』って言うらしい。でも、年齢も性別もよくわからない」
「ほう、でも変な名前だな。」
漢字にすると、星井山夫になるのだろうか。




