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生か死か

「……フィリア?」




突然、自らの前に立ちはだかった少女に、リディウムは驚きの声を漏らした。一際強い風が吹き、周囲の草木が踊るように揺れた。




「……あなたと、その女の子に何があったのかは私には分からない…だけど……それ以上はやめてッ!」




「………………」




それがフィリアの心の中をぐるぐると巡っていたモノだった。

遠くから見ることしか出来なかった彼女には見えなかったのだ。彼女が言う『その女の子』が、一度リディウムの腕を切り落としていることを。


ただ―――――――何故か、目の前の少年が闘っているのが哀しかった(・・・・・)のだ。


リディウムは、目だけはに向けたまま、黙ってフィリアの話を聞いていた。




「こんなの……ただの独りよがりだけど……お願い、リディ」




―――――――ねぇ、お願い――リディウム――




「…………!!」




彼の中で、フィリアと彼女(・・)が一瞬だけ結び付いた。


その、一瞬だった――――――――――




「……くすっ………ばーかッ!!」




「なっ!?しまっ――――――」




リディウムが叫んだときにはもう遅く、アグネルはリディウムの拘束からするりと抜け出し、凄まじい速度でフィリアを羽交い締めにした。




「ひっ………」




「フィリアッ!!」




「動くなぁぁッ!!動いたらこの女を殺すぞッ!!」




フィリアの首筋に折れた剣の破片を押し当て、アグネルは気でも狂ったかのような笑顔でリディウムに叫んだ。

その笑顔からは一切の余裕を感じられず、可憐な少女の面は完全に剥がれ落ちていた。




「くっ………」




――――――完全に、自分のミスだ。

リディウムはすぐにでもアグネルの息の根を止めることが出来た筈だった。それこそ、赤子の手を捻るように。


だが、その時、確かにリディウムは躊躇した。目の前の(少女)を殺すことを。




「………ッ」




歯軋りするリディウムの表情は、後悔に包まれていた。捨てきれない彼自身の『甘さ』が仇となった瞬間だった。




「アハハッ!!どうしたッ!?この人間がそんなに大事かよッ!?たいしたお人好しだなぁ!?」




「あ……ぐぅっ……」



羽交い締めにされたまま、首を絞められたフィリアが苦悶の声を漏らす。

リディウムに罵声を浴びせるアグネルの顔には汗。狂ったような笑顔とその笑い声は、明らかに焦燥を隠しきれていなかった。




「………動かなければ…………」




「あぁん!?もっとハキハキ喋りやがれッ!!」




「……動かなければ、いいんだろう?」




「あぁ?何言って――――――ッ!!」




アグネルがそこまで言った瞬間だった。微動だにしないリディウムとは裏腹に、その変化は色濃く、はっきりと現れることになる。




「なッ!?何だこれはッ!?」




その腕で羽交い締めにしている少女に気を取られていたからか、アグネルは自分の足元の変化(・・・・・)に気がつけなかったようだ。足元の地面が黒く染まりつつあることに。




「ばっ、馬鹿なっ!!いつの間にこんな……」




「―――腕を切り落とされた時」




「ッ!?」




「お前に腕を切り落とされた時、腕の一部を地面に仕込んでおいた。お前がどんな手段に出るか分からなかったからな」




リディウムがその言葉を言い終わると同時に、アグネルの足元の黒く染まった地面から無数の黒い触手が飛び出す。アグネルはそれを避けようとするが――――――




「あっ、足がぁッ!?」




更に地面から、どの触手よりも速くに伸びた触手がアグネルの両足に絡み付く。アグネルはそれに抵抗し、凄まじい怪力で触手から逃れようとする。


が、その怪力は地面を砕きこそすれ、触手を切断するまでには至らない。リディウムが作り出した触手は、並の龍では破壊できない程の強度を誇るようだ。




「さて―――――」




「ッ!!」




アグネルが必死に触手に抵抗する中、いつの間にかアグネルの目の前に迫っていたリディウムが言葉を紡ぐ。アグネルはそれを反射的に殴ろうとするが、たちまちにその腕ごと触手に拘束されてしまう。




「取り敢えず……その子を返してもらおうか」




「……ッ、返せと言われて素直に返すわけ―――ぎぁぁっ!?」




アグネルの拒否の言葉の返事の代わりに、一本の触手がアグネルの肩を突き刺す。フィリアの頬を掠れて触手が突き刺さったが、気を失っているのか何の反応も起こさない。




「聞こえたか?返せと言ったんだ」




「はぁ……はぁ……ぎゃぁぁぁ!!」




二撃目、三撃目とリディウムの触手がアグネルの体を貫く。人間であればとっくに命を奪われていてもおかしくない程の威力にアグネルの体は耐えられなかった。




「あ……ぐ…………」




触手に縛られたアグネルの四肢が抵抗を止め、ぶらりとぶら下がる。目は――――閉じられている。




「…………」




アグネルが倒れたと同時に、フィリアも解放され、その場に倒れ―――――ない。そうなる前に、リディウムがフィリアの体を抱き抱えた。


こうして、幼い龍の小さな抵抗は、限りなく静かに幕を閉じたのだった。


半年ぶりに帰って来てどんな顔で投稿すればいいのか解らない……(;´д`)


感想、評価等ございましたらよろしくお願いします。m(__)m

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