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第4話

 さて、異世界召喚モノでは必須とも言える冒険者ギルドが目の前にある。

 色々と家具等を買い込み、例の貴族屋敷で生活すること数日、金策の必要性に迫られたのだ。冒険者ギルドがあるということを聞いた時の僕の胸の高鳴りはまあ、案外同じ境遇の人間には理解を得られるだろう。そんな人間が実在するかは知らないけどね。


 フィリアさんの案内に従い、ドアを開ける。一般区画にあるそこそこ広い二階建ての建物だ。1階の受付でギルド登録を行う。

 簡単な説明を要約すると

 ①ギルドランクはEランク~Aランク・Sランクがある。

 ②依頼を受けることが出来るのは自分のランクから1個上まで。

 ③依頼を所定の数行えばギルドランクはアップする。ただし、各ランクのアップにかかわる依頼数は毎回異なる。

 ④依頼に失敗すれば所定の違約金を取られてしまう。何度も依頼に失敗すれば、ギルドランクのダウン、つまりは降格だ。

 ⑤依頼に関わらず、魔物を倒すことができれば、素材等買い取りを行う。

 ⑥パーティーを組めば、そのパーティーのランクの平均から1つ上までのランクの依頼を行うことが出来る。


 まあ、他にも細々とした事を言われたが、よくはわからなかった。そこら辺は理解しなくてもやっていけるということを理解したということだろうか。

 血液を採取され、それを垂らしたカードに自分のパーソナルデータが登録される。


 名前:シンヤ・クドウ

 性別:M

 ギルドランク:E

 所持金:0


 このギルドカードには、口座を作っておけば、このカードを利用して貯金、ギルドと提携しているお店などでのカードを利用しての売買が出来るそうだ。

 魔法文明恐るべし。

 ちなみにこのカード、登録を行った本人しか利用することが出来ないそうだ。違法に利用されないようになっているなど、現代日本よりも案外進んでいるシステムかもしれない。


 フィリアさんもギルドに加入しているとの事。どうせならということで、パーティーを組ませてもらった。ちなみに彼女のランクはB。Bランクにもなると、ギルド内でも引く手数多だとか。彼女の美貌は更に荒くれ者が多いギルドでは目立つ。今まで彼女とパーティーを組んだ人間はいないということで、からまれた。


 「おう、黒ずくめのあんちゃんよ、彼女とは俺たちが組む約束だったんだよ。後からしゃしゃり出てきて余計な真似住んなよ」

 筋骨隆々のスキンヘッドが語りかけてくる。フィリアさんに確認すると、そんな約束はしていないとの事。ならばということで僕はスキンヘッドを無視して、依頼書の貼られている壁側に向かう。こちらとしては、とりあえず王都の近場で行える依頼を探さなければいけない。若い女性を連れて1日以上かかるというのは、なんとなくしてはいけないと思ってしまう。

 そんな僕の態度に激昂したスキンヘッド君は「てめえ、シカトしてんじゃねえよ」と言いながら、僕が取ろうとした依頼書があるあたりに拳を叩きつけた。

 その刹那、スキンヘッド君の右手の肘から先が綺麗な切断面を見せて地面に落ちた。僕はスキンヘッド君の血がかからないうちに壁から依頼書をはがし、受付に持っていく。


 受付で薬草採取の依頼を受ける旨を告げた。もちろん、フィリアさんに簡単な説明を受け、すぐに依頼達成できると判断した上でだ。王都近辺でも少しずつ魔物が現れつつあるということなので、案外素材の採取なども出来るかもしれない。


 さあ、初依頼だ。少し気合を入れながら、王都近辺の薬草採取地に向けて僕はフィリアさんを伴い意気揚々と出かけて行った。

 例のスキンヘッド君は僕らがギルドの建物を出る前から声にならない叫び声をあげていたが、この世界には治療魔法や回復魔法といった類のものがあるのだ。その使い手に頼めば、高い金は取られるかもしれないが、ちゃんと治してくれるだろう。僕も治してやることは出来るが、あんな奴を治してやる程、優しい人間ではない。ああ、もちろん彼の右腕の肘から先が綺麗に切り落とされたのは僕の能力によるものだ。


 国王への借金返済のほうが、優先度は高い。冒険者ギルドに加入しているのだ。荒れ事には慣れているだろうし、人に絡んだら、何らかの形でやり返されることもあるという事を体で理解でき、良かったのではないだろうか。スキンヘッド君の未来に、合掌。


 しかし、ここで僕は大事な見落としをしていた。

 王都は広い。王都近辺での薬草採取という事で受けた依頼だったが、王都を出るまでに徒歩で1時間以上かかってしまった。ギルドの建物の前から、王都の出入口まで乗合馬車が出ていた。しかも格安で。

 それを利用すればよかった。フィリアさんは僕を呆れた目で見ていた。付き合わされた彼女はいい迷惑だったろう。今度何か埋め合わせをしなければな。


 この初依頼の達成が僕の今後の勇者人生を左右する。そんな予感がする。いい意味で。しかし、以前も述べたかもしれないが、いい予感というのは、たいてい当たらないものだ。悪い予感がする、イヤナ予感がすると、あえて考え直しておこう。過度な期待は禁物だ。

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