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超空陽天楼  作者: 大野田レルバル
天空斜光
53/81

「じゃあ作戦について話すぞ。

 主な戦場はここ、だ。

 シグナエ連邦エイリヤ山岳湾地帯。

 ここにシグナエ……いや、センスウェムか。

 センスウェム攻略のために落とさなければならない場所があるんだ」


「あら、私め達の出番ってことですわね?」


「久しぶりっすからちゃんと殺れるかどうか心配っす」


 蒼の話が終わり、真白と春秋も司令室に呼び出された。

春秋はまだ眠そうだ。


「ここだ」


 赤く塗られたシグナエ連邦の地図の中ほど。

セウジョウから凡そ七千キロほど先の地点がズームされる。

いりくんだ二つの半島には対岸へと物資を運ぶためのものだと予想されるこれまた巨大な橋がかかっている。

橋長さは凡そ十四キロでミハエル大橋と呼ばれていた。

橋の端は両方ともトンネルになっており、鋼鉄でその入り口が固められていた。

トンネルからは電車の線路が二十車線も伸びている。

電車の車両基地のような量の線路だ。

橋桁だけで直径五十メートルはあるだろう。

橋を越えた先にまでその線路は伸び、すぐ近くにあるシグナエの首都へと辿り着く。

古くからの交通の要所を司る要塞はその橋を越えた奥に存在していた。


「このエイリヤ要塞は直径三十キロにもなる極めてキツイ要塞だ。

 何よりたんまりと弾薬を蓄えていやがるに違いない。

 エイリヤ要塞はシグナエの首都へ行くためには絶対に落とさなけりゃならないんだ。

 そうしなきゃ首都攻略の時に横槍を入れられちまう。

 そして交通の要所にセンスウェムが当然軍を置いていない訳がないよな」


マックスは湾内を棒で指し、述べる。


「ですね。

 前に落とした要塞軍港ガールジック並みには大事ですからね。

 あそこには《天端兵器級》がありましたね。

 でも今回はどうなんですか?」


「そうですわ。

 どうなっているのですこと?

 私めのデカいのを突っ込めないのは嫌ですわ」


春秋は何か言おうとしたが、黙って口を閉じた。


「……わかってて質問してるんだよなお前ら?

 実は連合軍の先方隊が全滅してな。

 その時の無線がある。

 聞くか?」


 作戦ファイルに添付されたフォルダを開く素振りをして、こちらの様子をうかがってくるマックスだったが、明らかに気分を害しそうだったので蒼は首を左右に振って拒否の反応を示す。

真白は興味があったと主張し、マックスにイヤホンを渡された。


「どうっすか?」


一分くらいたったところで春秋が真白の顔色を伺い、反応を確める。

聞き終わり、イヤホンを机に置く前から真白の顔は上気して蕩けていた。

幸せに満ち溢れています、といったようだ。


「ゾクゾクするわぁ。

 快感ね」


「絶対ヤバイ奴っすね。

 聞かないことにするっす」


「私も案の定やめておきます。

 真白姉様がこれなんですから、ヤバくないわけがないですよ」


「どういう意味かしら?」


「そのままですよ」


拒否する蒼と春秋の反応を見て、少しつまらなそうにしながらも


「それがいい。

 なにやら、不穏なんだ。

 隕石が落ちてくるだの、火の雨だのと。

 最近は兵器の規模が大きすぎてワケわからん。

 それで蒼、まーたお前たちの出番って訳さ」


 マックスはタバコに火を点けると大きく吸い込んだ。

蒼は地図をもう一度見下ろした。

大きな橋と要塞の守りが万全な要所。

予想される敵の護衛艦隊の姿は今は無し。

まるで罠のようにも見えますね。


「そもそも隕石が比喩なのか本当に隕石が降ってきてるのかが、問題だ。

 色々と曖昧なんだよなぁ、全く」


「隕石ですか……。

 隕石って名前だけは知っているんですが……。

 本物はみたことないですね。

 隕石ですよね?」


作戦を《ネメシエル》に送りつつマックスの発したワードに疑問を抱え込む。


「隕石っていうとあのー。

 宇宙から落ちてくるゴミのことですよね。

 そりゃ凄い破壊力なのは知ってますが……」


「大天使クロースがどうの、とか藍なら言いますわね」


「間違いないです」


二人でにやにや笑う。

それを聞いてマックスは副司令に一つコーヒーを作ってくれとねだった。


「大天使クラースじゃないのか?

 まぁ、藍のことはよく分からん。

 話す言葉が難しい。

 間に朱を挟まないとダメなのはどうにかならんか。

 まぁいい。

 その隕石に先方隊、戦艦二隻を含む六隻が殺られたのさ」


「また大量にやられたっすね」


「仕方ないさ。

 旧式艦の寄せ集めの使い道はそれしかないってのがヒクセスだからな」


「酷いことを……」


「解体費用も不要だからな。

 経済的にはいいこと、といえなくもないな」


真白はやれやれ、と肩をすくめる。

その悲鳴を聞いてにやにやしていたのはこの人なのだが。


「どうしてヒクセスはあの国の《超極兵器級》を出さないんですかね。

 シグナエが《天端兵器級》を持っている限り使い道はあると思うんですけどね」


「ん?

 一応前線にいるぞ。

 俺達が見ていないだけで。

 《ネメシエル》ぐらいデカいのもあるな。

 装甲を削り、スピードを出したやつもある。

 《ネメシエル》に比べたらどれもいまいちらしいがな」


「そりゃ、私に敵う船があったら見てみたいものですよ」


「《超極兵器級》に敵う船なんてないっすよ。

 何しろ極みを超えた兵器なんすから」


「そのうち《超ネ級》とか出てきたりするのかしら?」


「あんまりかっこよくないっすね……」


春秋が耳からイヤホンを外す。


「あら、春秋いつからそんな上手になったんですか?」


 タバコをふかしつつマックスはチョコレートを口の中に入れる。

モゴモゴとチョコレートを噛みながらマックスは横に立っている副司令から紙を預かり、蒼に渡してきた。


「なんですか、これは」


A4サイズの紙には連合軍の上層部の印が押してある。

帝国軍として戦った蒼はかつての敵の上層部によって動くことを許可されている。

その事に関して微かに苛立ちを覚えている蒼は書類の表紙に描いてある連合軍のマークを見て眉をひそめた。


「また堅苦しいですね。

 私こういう書類とか苦手です。

 通訳を頼みます」


渡された紙を預かり、パラパラと適当にめくり蒼はポイ、と机に投げ戻した。

くだらない、といった態度が丸見えだ。

書類をマックスは机の上から取ると、副司令に返却しつつ要点を教えてあげる。


「実は、蒼。

 今回の作戦だが、《メレジア》の使用が許可されたのさ。

 《ネメシエル》、《ニジェントパエル》、《アルズス》、《メレジア》。 

以上の四隻でこの海域の偵察に向かって欲しい。

 何もないならそのまま要塞の制圧に向かってくれ」


「地上の制圧ならお手のものですよ。

 そのための《ネメシエル》ですから」


いくら要塞が大きかろうが、《ネメシエル》の装甲が破れるほど強力な物を備えていることはほとんどない。

《天端兵器級》でもなければ、だが。


「四隻の突撃に、より安全が保証され次第、主力を海域に投入する。

 もし、《天端兵器級》に匹敵するようなのがいたら潰すんだ」


「うっす、了解っす。

 蒼先輩は俺が守るっすよ」


「あら、私めは守ってくれないのかしら?

 酷い巡洋艦ですこと」


「そ、そういうわけじゃないっすよ!」






     ※






「見えてきました。

 あれがミハエル大橋ですね」


 距離にしておよそ五十キロほど先。

真っ白なコンクリートの橋桁がすでに見えていた。

トラスが海面へと延びており、ブリーフィングの時は確か無かったはず、と蒼は首をかしげた。

実際トラスの部分だけ色が新しい気がする。


『結構大きいデスね』


『私達はここから援護に入りマス。

 旗艦のやりたいようにやってくだサイ』


《メレジア》がスピードを緩め、艦隊の最後で停止する。


『え、ヤりたいようにヤっていいのですこと?』


『真白先輩が入るとややこしくなるっすよ……』


「私達は三隻はこのまま行きますよ」


『了解っす』


『蒼、私めの華麗なるギャグをスルーするなんて……ひどい妹ですこと』


『艦載機、発艦させマス。

 艦隊の真上に三分の一、残りを索敵と攻撃に当てマス』


 そうメレニウムが言うと《メレジア》のエレベーターが起動し、甲板に次々と艦載機が運ばれ並びはじめた。

デュアルアングルドデッキが二つ左右にはみ出している船体は非常に寸胴だ。

全長八百メートル弱、五百万トンほどある《メレジア》は艦底のハッチを開きカタパルトを使うことで上と下の両方から艦載機を出すことができる。

巨大な船体に詰め込めるだけ詰め込んだ艦載機の数は四百を超え、一隻で一海域分は艦載機をばらまける。

また、艦橋構造物の周りや舷側、艦底に合計八基設置された“三十八センチ連装光波共震砲”は非常に強力。

空母といっても戦艦並みの火力まで兼ね備えている。

この《メレジア》は《超常兵器級》の中でも完成度が高く、割りとかっこいい。


『索敵機を海域Aの五に展開。

 敵影はありまセン』


上空に次々と上がっていく艦載機が同じ種類のもの同士で六機の編隊を組み、蒼達の回りを飛ぶ姿はとても頼もしい。

私も整備班に頼んで一機だけでも載せてもらいましょうか。

まるでペットのようにかわいがってしまいそうですけども。


『すごいわね。

 私め、絶対に空母の“核”にはなれませんわ』


真白も蒼と同じことを考えていた。

なんといっても何百機を一人で操るのだ。

その処理能力は戦艦にも勝るとも劣らないという。


『エヘヘ……。

 案外慣れればすぐデスよ』


エレベーターから甲板に並んだ艦載機が紫色の光をエンジンから灯し、“超光波カタパルト”から射出され次々と大空へと飛び出していく。

やがて空を艦載機が埋めつくし、蒼達の前に艦載機群が展開された。


(レーダーに異常ノイズの反応あり。

 アルル重粒子反応は無い。

 数は八、ミハエル大橋付近!

 蒼副長警戒せよ)


《ネメシエル》のレーダーが何かを捕捉した。

敵影発見の警報を鳴らし、データを僚艦と共有する。


『なんすか、あれ……?』


『カステラみたいデス』


「そんな生易しいもんじゃないですよ絶対に……」


 《ネメシエル》達の行方を塞ぐようにしてトンネルから壁のようなものが現れた。

窓もなければ煙突もない。

動力源は《天端兵器級》特有のものだろう。

鋼鉄の長方形の姿は大昔の《移民列車》にも似ている。

大昔、戦争で荒れた大地を移動するときに使われた全長五キロを越えるものだ。

武装は最小限だけ積み、中には何万人もの人間が住んでいた。

まさにその《移民列車》にそっくりなのだ。

二十ある線路の上を火花を上げて走る巨大化を遂げたその姿は何も通さない盾にも見える。


(機関ノイズ音、更に増大!

 これは間違いなく《天端兵器級》だ!

 警戒しろ!)


列車に引かれ、トンネルから《ニジェントパエル》の半分ほどの大きさを持った砲塔が現れる。

カバーすらついておらず、突貫工事で仕上げたようにも見えるその姿はとても違和感を覚える。

列車の体積二両分ほど占領しているだろう。

一キロを越える砲身の先にはまるで銛のようになった尖った金属がついていた。


『かなり大きいですわよ……!』


銛の半径の大きさは凡そ百メートルはくだらない。

恐らくもっと大きいだろう。

橋の端から端まで列車が渡りきると銛を中心にして、列車は止まった。


「敵なんですよね?」


(そのはずだが……)


 サイレンが三度鳴り響き、銛車両の周りの鋼鉄の箱がシャッターのように開いた。

中には大量の砲塔と、ミサイルランチャーが内蔵されている。

それが全部で五両もある。

一両が八百メートルほどの大きさがあり、そのスペースにありとあらゆる兵装を詰め込んだ、そんな風貌だ。

砲塔の数は《ネメシエル》の全ての砲門よりも多いだろう。

いや、この四隻全てを数えても勝つことは出来なさそうだ。


「全艦“イージス”展開。

 最大許容量、最大値に設定してください。

 隙を見せたら近寄って粉砕して――」


【ごきげんよう、蒼さん。

 あいからわずの快進撃みたいですねぇ。

 噂は常々伺っています】


思わず言葉を呑み込むぐらいに不愉快。

不愉快、その一言ほど的確に言い表す事の出来る言葉を蒼は知らない。

モニターに映った姿はあの夏冬だった。

服装もシグナエのものを着用しているように見える。

ただ、シグナエの紋章があったところにはセンスウェムの紋章がついていた。


「夏冬……。

 あなたセンスウェムに……」


『お兄ちゃん……』


春秋の小さな呟きに夏冬はピクリとも反応を示さない。

むしろ、蒼の方が少し寂しさを覚えるほどだ。

兄妹と言うことすら忘れてしまっているのか。

春秋に目もくれず夏冬は真っ直ぐに蒼を見つめてきた。


「今更何の用事ですか?」


【ねぇ、蒼さん。

 世界を平和にするためには一つの組織による統治が一番だって思いませんか?

 その組織は今現在の人類より遥かに上を行く存在で構成されている。

 それならば今の人類のように間違えることもない】


それを聞いたメレニウムが夏冬に吐き捨てるように罵る。


『裏切り者が、よく喋りマスね』


【何とでも言え《超常兵器級》風情が。

 私は……私達は《超極兵器級》と話をしている。

 格の違いを意識しろ】


『っ……なんダトこの野郎……!』


ジアニウムが噛み付こうとするが、蒼が制止した。

二人の子供の喧嘩のような言い争いは出来るだけ避け、時間の無駄を省きたいのだ。

何よりセンスウェムの情報を引き出すのに今は集中したい。


「私の僚艦が失礼をいいましたね」


【……蒼さん。

 もう一度聞くが世界を平和にする為には新人類の統治をやめさせるべきだと思わないか?

 戦争でこの星ごと壊すような存在だ。

 さっさと見切りをつけてこっちに来ないか?】


「その質問、前にもしてきませんでしたか?

 私はなんとも、と答えるしかないですね」


ジアニウムを叱りつけたためか言葉使いが荒い。

センスウェムについての情報が得れるかと思った蒼の口からため息が流れる。

魅力的なお誘いとも言えない。


「デートのお誘いってことですかね、夏冬?

 私に祖国を裏切ってセンスウェムにつけと?」


【先ほどは取り乱して失礼しました。

 そう言うことです。

 どうですか?】


「ふー、あなた勧誘も下手ですね。

 何より私ではなく他の人の方がいいのでは?」


【仕方ないでしょう?

 あなたを失うのは人類としても惜しい。

 その与えられた力を遺憾なく発揮させてあげたい。

 それだけですよ】


「そのセンスウェムにつけば世界は平和になるんですか?」


さっきから同じ姿勢を崩さない夏冬に蒼は違和感を覚える。

動かない体、変わらない表情。

まるでただの画像を見せつけられているような、そんな感覚だ。

しかし、口は動いている。

本当に感情や表情を失ったかのように声だけが夏冬の感情を悟る唯一の道具になっていた。


【そうです。

 世界は平和になる。

 確実に、戦争というものは過去の存在になるのですよ。

 春秋、お前もそんな風に言ってたことあるだろ?】


『……………………』


春秋はなにも答えることなく、俯くだけだった。


「……お断りです」


【は?】


「お断り、っていったんですよ」


【平和になるんですよ?

 もう誰も死ななくてすむ。

 “核”として生きなくても―――】


溢れ出る夏冬の言葉を遮るようににやり、と蒼は笑ってみせた。


「違いますよ、そうじゃありません。

 なんと言っても戦争のない世界なんて私達にとってつまらないじゃないですか。

 私達は兵器。

 平和になったら私達の存在意義が無くなります」


【……酔狂な。

 そこまでして戦いたいか狂人め】


「さあ、それはどうでしょうか」


【分かりました。

 ならばここで沈んでもらう。

 あなたは……変わってしまった】


「別に何も変わってませんよ。

 夏冬、あなたが変わりすぎただけです」


【言ってろ!】


少し怒ったように夏冬が言うと銛が起動し、砲門に超高圧のプラズマが集まり始める。


(敵砲門に高エネルギー反応!

 来るぞ!)


警報音と共に《ネメシエル》の舷側を隕石のようなスピードで撃ち出された銛が掠めた。

空気と擦れて燃えながら銛は《ネメシエル》の上空へと消える。


「全兵装備解放!

 “イージス”の上限を取っ払い“強制消滅光装甲”の起動を!

 あの一撃を貰うのはまずいですよ!」


「隕石って……。

 見事に言い得ていますわね……!」


外した銛はワイヤーでまた巻き返され、砲門へと帰っていく。

そこへ狙いを定めたが細すぎるワイヤーに中々当てることができない。


「たいした威力です……!

 全艦、なんとしても食らわないようにしてください。

 特に春秋。

 あれはヤバイ代物です」


 《ネメシエル》の舷側には擦っただけだと言うのに大きな破損が認められていた。

溶け落ちた装甲が剥がれ、中の電子機器が顔を覗かせている。

百センチを越える分厚い装甲が紙のように切り裂かれていた。


【大したもんだな、センスウェムの力は。

 蒼さん、あなたを守る装甲すら切り裂ける】


「五月蝿いですよ。

 だからなんだって言うんですか」


【すぐに自分よりも強いものに屈する喜びを知ることになりますよ、きっとね。

 ふふふふ】


(敵車両各部で機関音多数!

 猛攻が来るぞ!)


敵の砲搭からレーザーが飛翔する。

さらにレーザーだけでなくミサイルまでもおまけのようについてくる。


「自動迎撃装着オン。

 迎撃開始と共に“三百六十センチ”起動。

 全艦、ターゲットをマークします。

 そこを攻撃してください!」


『了解!』


《ネメシエル》は右舷を敵に向け、全ての砲門を一つの車両を狙わせる。


「撃て!」


“光波共震砲”のオレンジ色の光がカステラのような車両に突き刺さり、次々と装甲を、バリアを射抜いて破壊していく。

爆発は穴のない車両内を巡り、やがて装甲すらも繋ぎ目から吹き飛ばした。

黒煙と真っ赤な炎が吹き上がり、振動で橋が揺れる。


【流石、ですね】


『まず一丁あがりですわね』


続く敵の猛攻を《ネメシエル》は自らを盾にして、《ニジェントパエル》と《アルズス》を守る。


(“イージス”過負荷率十パーセント突破。

 迎撃成功率八十二!)


「次は――」


 一両潰すのにこれだけ“イージス”を……。

残る敵の車両は四両。

何とか凌ぎきれますかね。

先ほど潰した車両の次へとロックオンをかける。


(敵、発砲!)


《ネメシエル》の装甲を削り取るようにレーザーが着弾する。

広がる光は、長いキズを装甲に刻む。


「そんな程度効きません!

 戦艦を殺るときは!」


《ネメシエル》の“三百六十センチ六連装光波共震砲”が吼える。

展開された“グクス荷電障壁”をものともしないで敵車両に次々と光が突き刺さる。


「こうやって!」


別の“三百六十センチ六連装光波共震砲”がまた吼え、敵車両の動力部を射抜く。

オレンジ色の十万度を超える灼熱に耐える装甲は存在しない。

溶けた装甲が赤くはじけ、その奥にある重要な区画に突き刺さった“光波”の光がさらにダメージを与えていく。


「やるんですよ……!

 全く、二隻とも四両目を潰します。

 同調お願いします」


 蒼が撃とうとした目標にミサイルが次々と刺さる。

《メレジア艦が》操る攻撃機が波状攻撃を仕掛けたのだ。

空を埋めつくような艦載機の放った爆弾とミサイルにダメージを受けた車両は対応しきれない。

広がる爆発と、散らばった破片が空高くに舞い上がる。

ミサイルポッドが線路に落ち、機銃、砲塔がばらばらになる。


『目標の沈黙をカクニン。

 次はドレにしまスカ』


『ひゃー、さすが艦載機ってスゴイっすね。

 あの火力はぶち込まれたくないっすよ』


「春秋、そんなこといいから“光波魚雷”をぶち込んでください。

 ほとんど動いていないも当然だから当てれるでしょう?」


『ほい、了解っす!』


【っち、流石に四隻相手はキツイな――!】


「真白姉様、春秋の援護をしますよ!」


『私めの太いのをブチ込めるなら何でもよろしくてよ』


艦隊の奥から春秋の《アルズス》が出て、舷側を向ける。

飛翔するレーザーをその船体の小ささでかわし、肉薄する。


【春秋!

 貴様!!】


『お兄ちゃんは少しやりすぎたっすよ』


《アルズス》の舷側が開くと魚雷発射管がそこには顔を覗かせていた。

四連装が三基。


「発射!」


合計十二発の魚雷が目標を識別し、紫の光を後ろから出して爆進する。

ミサイルと違い魚雷は大きい。

単純にそれだけで威力は桁違いだ。

迎撃も間に合わないほどの距離。


【っち!!】


敵の砲塔が魚雷を撃つ為に舷側を向けた《アルズス》に集中する。


『おおっと!』


《アルズス》の砲塔がレーザーの掃射を受けて、吹き飛ぶ。


「春秋!」


『大丈夫っす!

 少し艦首が焦げただけっすよ!』


「私が前に出ます。

 春秋は下がってください、真白姉様!」


『はいよ、続きますわ』


 今度は《ネメシエル》が距離を詰め始める。

艦首を敵に向け、最低の被弾面積になるようにしながら“イージス”をピンポイントで張り巡らせる。

丁度そのとき、春秋の到達した魚雷が大爆発を起こす。

そこに艦載機の爆弾やミサイルがまた突き刺さる。

二十、三十の爆炎が目の前に展開され蒼と真白の視界を一瞬遮る。


「面舵一杯、舷側を向けて一斉射撃の準備を!

 煙を抜けたらぶち込みますよ!」


(了解だ!)


【甘いですよ、蒼さん?】


黒煙を抜けた先の《ネメシエル》を待っていたのはエネルギーを存分に蓄えた銛だった。


「っ!?」


銛はマッハ5を超えるスピードと、ものすごいエネルギーを纏ったまま射出さた。


【はははは!

 味方に視界を遮られてちゃ様ねぇですなぁ!】


銛は《ネメシエル》の左舷中央深くの装甲をバターのように融かし、一番分厚い装甲で守られているはずの主要区画の奥にまで突き刺さった。

その衝撃で《ネメシエル》の巨体が軋み、数々の兵装が沈黙する。


(第四主機損傷!

 エンジン出力低下!)


「この程度で……!」


キーン、とした耳鳴りがすると共に自分の心臓の音が大きく聞こえる。

五味上げてくる痛みに歯を食いしばり、蒼は砲門を向けそれでも斉射で消し飛ばすために舷側を向ける。

相手の銛の威力は絶大だった。

しかし、《ネメシエル》には通じない。

残念でしたね、と夏冬に嫌味を言ってやろう、と痛みをこらえながら口を開いた。


「あぁぁぁぁ!!」


しかし、実際に口から漏れたのは自分でも聞いたことのないような絶叫だった。

痛み、そして痺れ。

頭の中を焦がされるような激しい頭痛と吐き気が込み上げる。


(蒼副長―――これ……は…………)


原因を突き止める為の自己診断プログラムが答えを出してくれた。

《ネメシエル》の主機に近くに突き刺さった銛の先からはまるで触手のようにコードが伸び、《ネメシエル》の“レリエルシステム”へと侵入していたのだ。


「なに……を……!?」


蒼の視界は《ネメシエル》の視界。

ぼやけた視界に穴が開いたように黒い模様が沸き起こる。


【残念でしたね、蒼さん。

あなたの時代はここで終わりです】


「なつと……よく…………も…………」


痛みにこらえきれなくなった蒼の頭から意識が揺らいでいく。

“レリエルシステム”から切断するため腕を装置から引き抜こうとするが間に合わない。

そして、《ネメシエル》は活動を停止したのだった。






     ※







「《ネメシエル》!?

一体何が起こっているのですこと!?」


真白は《ネメシエル》の現状を見て悲鳴をあげていた。

船体のサイドスラスターや、バイナルパターンが鼓動をやめ真っ黒になり停止する。

機関音が止まり、《ネメシエル》は宙に停止する。

完全に解体される前の艦船のようだ。


「蒼!?

 大丈夫ですこと!?」


真白は無線で呼び掛ける。

反応は無い。


『一体何が起こったんすか!?』


『攻撃を受けてそれで……こうなったのデス?』


「《天端兵器級》の攻撃を受けたのよ。

 あのー、銛みたいなやつですわ。

 そうしたら……」


真白は混乱する頭を整理するために二度深呼吸をする。

《ネメシエル》が銛の攻撃を受けた。

そして次の瞬間には《ネメシエル》は停止した。

先ほどまで戦っていたのが嘘のように沈黙してしまった。


「春秋、メレニウム、ジアニウム!

 臨時旗艦は私めが引き継ぎますわ!

 敵の殲滅を命令コード二に設定。

 蒼の救援を最上位命令コードに据えますわ!」


『了解っす!

 なんとしても助けるっすよ!』


「《ネメシエル》を停止させたのはあの銛ですわよ!

 ということはあの伸びているワイヤーを切りさえすれば………!」


《ニジェントパエル》が艦首を翻して、敵《天端兵器級》と同航戦を展開する。

すでに敵の一両は撃破済だ。

最優先目標はワイヤーで《ネメシエル》と繋がっている中央の車両ただ一つ。


「やってしまいますわよ。

 いつまでも私めの妹を虜になんてさせませんわ。

 いいですこと!?」


『了解っす!

 でも、どうやって敵を――?』


「私めが艦首ピンポイントに“イージス”を張って肉薄しますわ。

 そして“ナクナニア光波断撃砲”をぶちこんでやりますことよ。

 いくら《天端兵器級》とはいえ“ナクナニア光波断撃砲”を食らったら即落ちですわ)」


『了解っす!

 援護するっすよ!』


『手伝いマス!

 なんとしても《ネメシエル》を、蒼さんを助けマス!』







     ※







「なんですかここは……」


真白達が悲鳴を上げているその一方で蒼は困惑の声をあげていた。

消し飛ぶ前のベルカの帝都駅前だろうか。

《ネメシエル》のデータベースにアクセスしようとしたが拒絶、の信号が現れる。


「ふー……」


鼻から息を吐き、蒼は周りを見渡してみた。

ビルの狭間に立っている旗がベルカのものだからベルカ帝国で間違いないはずだ。

何万という人間が歩き回り、電車の音、車の音、話し声が辺りを埋め尽くしている。


「マジヤバイんですけど」


「ホントウケるー!」


 音だけではない。

人間がここで生きている、と感じるありとあらゆる様がそこにはあった。

制服を着た学生達が蒼の目の前を通りすぎていく。

太陽は街に斜めに差し込み、風に揺られた木が葉を散らす。

真夏のジリジリとした日差しだったが全く暑さを感じない。


「これは、現実なんかじゃない……ですよね」


あまりにもリアルな光景に自分の掌を眺めた。

そしてはじめて蒼は自分の格好に気がついた。


「これ―――!?」


あわててビルの窓に自分を写す。

とても自分が持っていないようなセンスのいい伏を蒼は着ていた。

最先端の流行を採り入れた服は蒼にぴったりだ。

ヒラヒラと後ろで舞う髪の毛はポニーテールになっており、首からはネックレスがぶら下がっている。

スカートは割りと短く、少しでも油断したらパンツが見えてしまいそうだ。


「気に入ってくれましたかね?

 蒼さん?」


「夏冬、あなた……」


流れる人混みを掻い潜り、夏冬が姿を現す。

夏冬もバッチリと服を決めており、流行を発信するこの帝都にいても浮いた存在ではなかった。


「この前お風呂であなたの裸を拝見したときに測らせて頂きました。

 ご了承下さい。

 服のセンスは私の好みですどうしてなかなか悪くないでしょ?」


「……で?

 一体何が目的で私をここに?

 おしゃべりしたいだけですか?」


蒼は臨戦態勢をとる。

攻撃してこない訳がない。

この夏冬が。


「一般の人間の生活」


「は?」


「それを経験してもらうだけですよ、蒼さん。

 私達は兵器である前に生物ですから」


「言ってる意味が――」


時が一気に進む。

さっきまで昼だったはずなのにすでに街灯に光が灯り、ビルにも光が灯った。

空には宣伝用の気球が浮かんでいる。


「こういうのもいいでしょう?」


その景色を見せられたかと思うとレストランの中に蒼達はいた。

遠くの海にまで伸びる超高層ビル郡はとても美しい。

空にまで伸びるサーチライトの光と共に広告の光も所狭しというように湧き乱れている。

これが戦争前のベルカの姿なんですかね。

微妙な気持ちになりながら見ていると夏冬が話しかけてきた。


「いいものですよね、夜景って。

 センスウェムに来てからずっとこういうものをあなたと見たいと思っていました」


「なんですか、これが。

 たかが光じゃないですか」


「人間のデートはこう言うものらしいですよ、蒼さん。

 嫌いですか、こういうの。

 セウジョウではさぞかし楽しんだみたいですが」


「……………………」


セウジョウは姉につられて行っただけだ。

蒼が行きたいと願ったわけではない。

目の前のテーブルに並んだ小綺麗な料理に手を伸ばしてみる。

しかし、料理に触れることは出来ない。


「食べられないなら出さないで欲しいですよ」


「まぁ、そう拗ねないで下さい。

 あなたの為だけにこの空間を作り上げたんですから」


「また無駄なことを…………」


呆れ返る蒼とは反対に夏冬は笑顔だ。

蒼と違って純粋にこの空間を楽しんでいるのだろう。


「無駄なんかじゃなかった。

 それが証拠にあなたは私のことが好きになる」


「はぁ?

 あなた頭おかしいんじゃ……」


蒼は夏冬の顔を正面から見据えていたが、なぜか急に目を逸らしてしまった。

頬が熱いような、産まれてはじめて感じる感覚に蒼は戸惑いを隠しきれない。

謎の体の火照りが頬から降りてきて汗を少しかくのを感じた。


「どうしましたか?」


「あ、いえ……なんでもない…………です」


まともに夏冬の顔を見ることが出来ず、蒼は俯く。

自分の頭の中では処理できない感情は自分の胸の奥から溢れ出るようだった。


「きっと恋という感情にびっくりしているんですね。

 慰めてあげますよ、蒼さん」


気がついたら蒼はベッドの上に下着姿で倒れこんでいた。


「え、な、えっ?

な、夏冬、何を……?」


「そりゃ、今から生物の理を行うに決まってるじゃないですか」


「え、ちょ、待って下さいその、心の準備があの」


蒼の上に夏冬が覆い被さってくる。

太い夏冬の腕が顔の横に置かれ、逃げれそうにない。

真っ直ぐ見つめてくる視線に我慢できずまた頬が赤くなるのを感じる。


「蒼さん。

愛していますよ」


「………………は、はい…………」






     ※






「“ナクナニア光波断撃砲”、撃て!」


 敵《天端兵器級》との戦いでボロボロになった《ニジェントパエル》の開いた艦首から太いオレンジ色のレーザーが放たれた。

時空をねじ曲げ、空間を新たに作り出す程のエネルギーは直進すると中央の車両へと突き刺さる。

展開されていたバリアすら突き抜け、車両中央部にぶち当たったエネルギーはそこにあった鋼鉄の塊を蒸発させる。

エネルギーはそのまま突き進むと奥にある要塞に突き刺さり、大爆発を起こした。

空に届くほどの大火柱が登り、《天端兵器級》たちを赤く照らす。

少しして届いた爆発の衝撃で傷んだ《ニジェントパエル》の船体が軋む。


「これで……!」


ワイヤーが砲台から千切れたのを確認すると真白はほっとため息をついた。


『蒼先輩、起きてくださいっす!』


『《ネメシエル》に接続を試みマス!』






     ※






「っく!

 はぁ……はぁ……はぁ……」


蒼は《ネメシエル》の艦橋で目を覚ました。

バクバクと心臓が波打ち、頭痛で頭がふらふらした。

込み上げた吐き気に突き動かされ、慌ててトイレに駆け込む。

洗面台の水道で口をゆすぎ、鏡に写った自分を見る。

何時もの腰までのロングヘアーに砂色の軍服。

赤色の線が肩から袖まで伸びている。

ようやくほっとすることが出来た。


「さいっあくな夢を見させられました本当に……!!

 あと少し遅かったらあいつとキスする所でしたよ……!」


夏冬に感じた謎の感覚はもう無い。

逆に沸き上がるのは殺意と破壊欲だった。

爆発か何かの衝撃で《ネメシエル》の内部が揺れる。

壁を背に衝撃をやり過ごすと、蒼は“レリエルシステム”と繋がる椅子に戻ってきた。


「《ネメシエル》!

 起きて下さい!」


(やあ、おはよう蒼副長。

 気分は……ああ!!

 思い出した私達はどうなってしまったんだ!?)


「くっそ最悪な気分ですよ本当に!

 起動して、残りの敵を叩きますよ!」


『蒼先輩、起きて下さいっす!』


『《ネメシエル》に接続を試みマス!』


無線機から流れてくる音声に釣られ、窓の外を眺める。

ボロボロであちこちから黒煙を上げた《ニジェントパエル》の艦首が開き、中から“ナクナニア光波断撃砲”が覗いていた。


「みんな、すいません起きました。

 どういう状況なんですか?」


『やっと起きましたの、蒼……。

 すいません、私めは少し海域を離脱しますわ。

 大きな損傷を受けてもう少しで航行不能に陥るところでしたの』


「りょうか――おっと!」


《ネメシエル》の船体に《天端兵器級》のレーザーが突き刺さる。

低い音を立てて始動し始めた《ネメシエル》はゆっくりと動き出した。

機銃や高角砲群が吹き飛ぶが、《ネメシエル》本体は分厚い装甲に遮られ大きな被害は及ばない。


【クソ共が――!!

 あと少しで蒼さんを僕のものに出来たってのによ!!】


「キモイんですよ大バカ者!

 私は私、誰のものにもなりません!」


銛を失った《天端兵器級》だったがその砲門数はすごいものだ。

まともに撃ち合ったらごり押されて負けるだろう。

それにまだ敵には“グクス荷電障壁”が残っている。

こちらは頼りになる“イージス”の過負荷率がもう八十を超えてしまっていた。


「っち、こうなったら一気にやってしまいますよ《ネメシエル》。

 《ネメシエル》、全武装用機関リミッター解除。

  鼓動数百二十から六百まで急上昇

 “ナクナニア光波断撃砲”起動用意!」


(了解。

 “ナクナニア光波断撃砲”使用プロセスを実行する。

 全武装用“ナクナニア光反動繋属炉”圧力上昇。

 リミッター全機関解放。

 鼓動係数上昇開始)


機関音が高まる。

リミッターの解除を受けた機関は自信が壊れるまでエネルギーを産み出し続けるのだ。


「展開開始。

 上装甲開いてください。

 非常弁全閉鎖急ぐと共にプロセスの実行を開始」


 ネメシエルでは甲板に主砲が現れて変形完了だった。

しかし今の《ネメシエル》は違う。

《ネメシエル》の艦首に隙間が生じ、それが上下に開き始める

開いていく途中でライフリングが四枚屹立し、さらに内部に歯のように様々な部品が現れる。

それら一つ一つが膨大なエネルギーをコントロールするためのものだ。

甲板においてある“ナクナニア光波断撃砲”が起動し、艦首まで伸びる溝に赤い光が灯る。

片舷に五つ、合計で十ある廃熱口が開き、展開を開始する。

開いた艦首の奥からもう二つ“ナクナニア光波断撃砲”が表れると少し外側を向いた状態で停止する。

いつもは装甲となっている“エネルギー安定板”が開き、耳のように開いた。


「エネルギー機関全段直結。

 “超大型光波共震砲”内部への回路開いてください。

 アンカー射出」


【なんですかそれ!!】


「いい女はいい武器を最後まで取っておくもんだ、って真白姉様が言ってましたからね。

 今のままで使わずにとっておいたんですよ」


(アンカーロックを確認。

 姿勢制御固定。

 “ナクナニア光波断撃砲”弾倉内正常加圧中。

 ライフリング安定を確認)


『あらそんなこといったかしら?』


「言いました!」


(エネルギー充填率九五……百。

  充填完了、弾倉内圧力臨界点へ)


【っ、くそが!

 全砲門、敵へ集中せよ!

 艦首に叩き込めば止まるはずだ!】


ただで《天端兵器級》もやられるつもりは、そりゃないだろう。

今の《ネメシエル》はほとんど“イージス”も使い物にならない状態だ。

そこに攻撃が叩き込まれれば弱点を攻撃された《ネメシエル》は最悪轟沈する。


『そうはさせないっすよ!』


それを当然蒼は見越していた。

だから《ネメシエル》の艦首前に《アルズス》を配置し、《ネメシエル》の機関と同調させ“イージス”を復旧させる。


「ナイスタイミングです春秋!」


『守るって言ったじゃないっすか!

 任せてくださいっすよ!』


(強制注入開始、ナクナニア光圧力百五十パーセント。

  ――装填完了鼓動係数安定)


「了解、ターゲットスコープオン。

 射線にいる味方機は退避してください」


【っ、クソ!

 機関全速、逃げるぞ!】


ゆっくりと《天端兵器級》は動き出した。


『蒼先輩、敵が逃げそうっすよ!』


「もう遅いですよ……!」


視界に現れた円に敵《天端兵器級》を納めるように微調節する。


「調節完了。

 夏冬、終わりです。

 “ナクナニア光波断撃砲”、撃て!」






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ありがとうございました。

お待たせいたしました明けましておめでとうございます!

どうか今年もよろしくお願い致します!

お願いします!


去年は沢山の方々の応援、本当にありがとうございました。

感謝、感激であると共にもっとがんばって更新していきたく思いますのでどうか今年もよろしくお願い致します。


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