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超空陽天楼  作者: 大野田レルバル
蒼天孔
41/81

怪盗

藍の性格に手を加えています。

すごく特徴のない人から中二病になっています。

更に多数の設定に小さな変更点を加えました。

そんなわけで色々と藍登場から書きなおしたのでまた、よろしくお願いします。

 海に何とか浮かんでいるものの《アイティスニジエル》の構造物のほとんどはやられてしまっているようだった。

大量にあったはずの砲塔はほとんどがその形を失っている。

海へと艦首側から傾いていく《アイティスニジエル》に群がる様に駆逐艦クラスまでの大きな全ての軍艦が動員され、浅瀬へと押してゆく。

艦橋の扉が開かれ、中から救出され医療用の台に乗せて運ばれていく実の姉。

その姿はとても生きているとにわかには信じられない程にまでボロボロだった。

煤がべったり張り付いたついた顔。

開いている口がやけに大きく、赤く見える。

微かに胸が上下していることから呼吸をしていて、生きていると何とか判断した。


「急いで運べ!」


 ドクターブラドも流石に軽口を叩く気分にはならなかったらしい。

蒼の姿を認めても何も言わずに朱の状態を見る。

そしてさっ、と青ざめるとさっさと手術室へ運ばせていく。


「朱姉様!」


 側に駆け寄り必死で呼び掛ける。

反応はない。

見えるところだけでも皮膚が焼け、黒こげになっている部分がある。

あまりにも痛々しい姿に蒼はその様子を凝視することが出来ずにすぐに目を背けてしまった。

朱がまだ生きているということは《アイティスニジエル》は完全に撃沈されたとは考えられない。

バイタルパートの中のAIや機関はやられていないという事だろう。

春秋が例外なだけで、普通は艦が沈んだら“核”も死ぬのだから。


「我が妹……が……。

 一体……何が……」


「まだ分からないですことよ……。

 何かがきっと現れたんじゃないですこと?」


「《超極兵器級》……を……沈める何かが……か……」


《超極兵器級》を破るほどの何かしらが帝都周辺に現れたということだ。


「蒼か!

 すまん急すぎるかもしれないが任務だ。

 まぁ……分かっているとは思うが」


 マックスが言おうとしていることはもう分かっている。

帝都への出撃、そして《アイティスニジエル》を轟沈寸前にまで追い込んだ敵の撃破だろう。


「真黒も真白も蒼と一緒に司令室に来てくれ。

 作戦会議を大至急執り行うぞ」




      ※




 司令室。

緊張の面持ちに包まれたメンツの中マックスが重々しい口を開いた。


「見たと思う……が。

 《アイティスニジエル》がやられた。

 そいつの正体は不明な上に、何をしてくるかも分からない。

 今解析班によって船体の損害状態から使用された兵装ぐらいは……。

 突き止められそうだが……」


 蒼と真黒、真白、藍はマックスの顔を同時に見た。

とても信じられないというような顔はしていない。

ただ結果を受け止めるという面持ちだ。

コグレでくすぶっていた時と違いすっかり司令官らしくなったマックスだったが今回は少し危機を感じているらしい。


「《ネメシエル》の修理は今急ピッチで進んでいる。

 他の艦に回していた修理ドローンの半分を集結させた。

 明後日の朝には完了するだろう。

 問題は…………」


「敵が何か分からない……ということですね」


 蒼の答えに皆が同意する。

マックスは手に持っているタブレットのスイッチを切った。

たばこをポケットから取りだし火をつける。

紫がかかった煙が天井の換気扇に吸い込まれていく。


「まず俺の考えなんだが……。

 帝都はまず無視することに決めた。

 おっと、分かってる。

 藍、聞いてくれ」


何かを言いたそうな藍を押し留めマックスは話を続ける。


「攻略することを諦めた訳じゃない。

 ただ、《ネメシエル》の修理が終わるまで触らないことにするってだけだ。

 その代わりにその周辺地域の制圧から始めることにする。

 これは周辺から帝都へ増援が来る事態を抑える為だ。

 周辺地域の制圧は電撃戦とし、明後日までに制圧することとする。

 ……ここまでいいか?」


一気に捲し立てる。


「電撃戦……。

 機動力のある駆逐艦で奇襲。

 まさに神のごとき力で世を惑わす。

 ダークエネルギーの時間のずれで敵が混乱してる間に戦艦で封印を解かれし力を持ってして大打撃を与える……。

 そう言うことでええんかいね?」


 藍はベルカ周囲の地図を見た。

 翻訳してくれる朱がいないと藍の言葉もどこか説得力に欠ける。

それはさておきベルカにしつこく居座り続けるヒクセスをはじめとする連合の制圧する地域は残り少なくなってきているもののまだ多い。

まず手を付けるとしたら――。


「あなた!」


 全員が電撃戦での撃滅で決定する、という時点だった。

副司令がドアを破るように入ってきた。

自動ドアが開くのすら待てないぐらいにまで焦っている。

副司令が入ってきた瞬間マックスは怒鳴った。


「今は勤務中だ!

 あなたと呼ぶなと―――」


「そんな場合じゃあないのよ!

 これを見てちょうだい!」


 ヒクセスのとある小さな町。

タブレットの画面に写っていたのは町。

海まではそう遠くない。

車で十五分と言ったところだろうか。

都市名はニューカトラスと書いてある。

ヨットが並び、ただ和やかな空間に一つだけ似つかわない物体があった。


「夏冬の《ナニウム》……?

 またなんでそんなところに……?」


湾岸から少し離れた所に夏冬が操る《ナニウム》の姿があった。

どうしてこんなところに……。


「それだけじゃないのよ!」


興奮気味の副司令がもう一つの写真を見せる。


「ロバート大統領!」


 呼んだのは真黒だった。

驚いて全員が真黒を見るほどにいつもとは考えにくい声量だ。

真白ですら驚いた表情をしたことから本当にごくまれに見せる声量だと推測できる。


「知っているのか?」


「知ってるもなにもないですことよ。

 私めが血眼になって探した相手ですことよ。

 この老人の腐れドマラをいつ噛み切ってやろうかと思っていましたわ。

 まぁ……そのチャンスは来なかったですことよ」


「ああ……。

 その通りだ……妹よ……。

 そして我は……美しい……」


「はいはいですことよ」


 いとおしそうに真白はロバート大統領の写真を撫でた。

汚い発言をしゃあしゃあと言ってのけるあたり肝が据わっているのか。

以外、というように真白をじろじろ見るマックス。


「何見てるんですの、早漏。

 いいから話を続けたらいかがですこと?」


「腐れドマラ……?

 そ、そーろう……?」


「ごほん。

 蒼、気にしなくていいからな。

 それと別に俺は早漏じゃないからな」


「?」


 疑問のはてなを浮かべる蒼だけを置いて話は進んでいく。

おぼろげながら藍も言葉の意味を理解しているようだった。


「我々は……戦争を……終わらせる。

 そのため……ロバート大統領を……探していた。

 見つけて……殺せば……終わる。

 だから……探した……。

 でも……いなかった……。

 見つからなかった……」


「声量元に戻るんかい……」


「いくら探しても見つからないのはそう言うことだったのですわね。

 この陰湿な腐れドマラがチャックの内側に居続けていたってことですことよ」


「チャック……?

 どうしてチャックがここで出てくるのです……?」


「だから蒼。

 気にしなくていいからな」


「?」


 何はともあれこれでずっと前、蒼が立てた仮説が正しかったことになる。

ヒクセスに大統領は今いなかったということだ。

つまりこの戦争行為自体をヒクセスは望んでいなかった可能性がある。

あらかたのやり取りを聞きながら全員を見渡した後副司令はいじわるそうな顔をする。

まだ何かあるらしい。


「それだけじゃないわよ。

 もう一枚写真があるの。

 見て驚かないでよ?」


 副司令が出した写真は見たことのある施設の写真だった。

不自然過ぎるほど真っ白な世界にぽつんと二つの点がある。

その色のない世界にロバート大統領と夏冬が立っていた。


「《宇宙空間航行観測艦》に追跡プログラムを走らせたの。

 さすが全時代のカメラと言っていいかしら。

 きっちり《ナニウム》も追いかけてくれたわ。

 これはついさっきの写真よ」


 施設を見た瞬間ぞわりとしたものが背筋を駆け巡る。

嫌な思い出はない。

自分を生み出した場所への嫌悪、とでも言えばいいのだろうか。

出来ればもう一生見たくないと思っていたほど。

それは蒼以外も同じ感想らしい。

真白は身震いし、肩をすくめていた。


「技術島じゃないか……?

 これってもしかして……」


だから誰も答えなかった。

唯一答えたのはマックスだ。


「その通り。

 恐らくロバート首相は今ベルカの技術島にいるわ。

 あなた、ソムレコフの話が本当ならこれはヒクセスを……。

 いや、シグナエを除く全ての国との同盟への第一歩になるのではないかしら?」


そう言い切った副司令の目は希望に輝いていた。


「詩聖よくやった!

 この戦争を終わらせることが出来る記念すべき第一歩だ!」


「ちょっと、あなた!」


 思いっきり自分の妻に抱き着くマックス。

夫婦仲がいいというのは、まぁいいことなのだろう。

未だに妻のスリーサイズは教えてもらえないらしいが。


「あのーマックス?

 天空より降りし直光でぶっ飛ばされたいんかいね?」


「いい加減いちゃつくのをやめてほしいですわ。

 そのままベッドルームにまで行きたいのですなら止めはしないですことよ?」


 何時まで経っても離れようとしない二人にいい加減イラッとした藍。

それは真白も同じだったらしい。

被っていた猫を脱ぎ去った彼女の毒舌……いや。

下ネタ舌が炸裂する。・


「ああ、すまん。

 解析班を使ってロバート首相がどの部屋にいるのかを突き止めさせる。

 すまないが蒼は待機で頼む」


待機……?

その言葉だけが大きく反響する。


「マックス、私はまだ――」


手を出してきて遮る。


「ごほん。

 とてつもなく嬉しい情報だったが、喜んでばかりもいられない。

 作戦は先ほどと同じく周辺地域の制圧から始める」


 マックスはまず藍を見た。

手元のパネルに地図を映しだし、ペンで情報を書きこんでいく。

あらかたかけたところで藍にマックスは話しかけた。


「さて。

 《ルフトハナムリエル》は……そうだな。

 シュア地方の奪還を頼みたい」


 シュア地方の地形が映し出される。

二つの島の間に挟まれた地方は全体的に気候は穏やかだ。

このシュア地方にはベルカ第二の都市であるニロゴヤがある。

工業がとても栄えており、平和な時代だと自動車等の重工業が主だった。


「このシュア地方は総力戦のダメージが残っているためか、敵戦力は少ないようだからな。

 艦隊を率いて制圧を頼む。

 念のために《超常兵器級》を二隻つけよう。

 すまんが頼んだぞ。

 詳しい作戦は追って説明する。

 自分が欲しい従属艦をリストから選んでくれ」


「了解。

 まー何とかなるじゃろ。

 大天使クラースの化身であるわちきにかかれば人智の一つや二 つ……。

 簡単に超えることができるんじゃけんね。

 やって新しい力を使役する様を拝見願うしかないんじゃろうけぇのぉ」


 マックスの頭が回り始めていた。

いかにしてこの戦争を終わらせるかを。

ようやくその糸口が見えたのだ。

ここまで積み重ねてきたことを無駄にするわけにはいかない。


「シュア地方は《ルフトハナムリエル》に任せるとして……。

《ヴォルニーエル》と《ニジェントパエル》二隻でヒカド地方を頼む。

 帝都奪還の際に最も増援が来ると考えられるのがここだ」


 シュア地方の地図が消え、ヒカド地方の地図が現れる。

ヒカド地方は帝都のベットタウンとして栄えている地方だ。

帝都のある本州は地価が高い。

そのため帝都で働く連中は、ほとんどが帝都の周辺であるシエルカル地方やヒカド地方で暮らしをしている。

このヒカド地方を取り返すことが出来れば、ベルカの人口の半分以上を取り戻した計算になる。

またこの地域はセウジョウにも並ぶほど大きな軍港がある。

《超空制圧艦隊》の本部もここだった。


「当然……敵の主力艦隊が置かれている。

 敵勢力は……超戦艦級が十。

 空母が三、戦艦が八、巡洋艦が……二十。

 あと駆逐艦が数えきれないほどだ。

 当然ここからも増える可能性がある」


 地図の上にいくつもの艦のデータが刻まれていく。

通常なら《超極兵器級》でも中々に厳しい相手だ。

所が真黒も真白も嫌な顔何一つしなかった。

むしろ自分の力を発揮できることに嬉しさを滲ませていた。


「だがお前たちならすぐに制圧できるだろう?」


そうマックスは言うと二人を見た。


「うむ……。

 すぐに……勝てる……。

 何と言っても……我は……美しいからな……」


「敵に私めのレーザーをぶち込めばいいのですこと?

 それならお任せくださいですことよ。

 やさしく強烈なのをぶち込んでやりますことよ」


余裕の表情を見せる二人。


「じゃあ作戦の全権はお前ら三人に委譲する。

 責任は俺が持つ。

 艦隊旗艦として、それぞれの力を存分に奮ってくれ。

 以上だ。

 出発は同時、明日朝八時だ。

 各自ミーティングはしっかりな」


「はっ!」


「はい!ですことよ」


「……任せろ」


「頼んだぞ……。

 ここが正念場だ」


「失礼しますわ」


 三人はそろって司令室を出て行った。

残ったのは蒼だけ。

マックスは吸っていたタバコを灰皿に押し付けると椅子に座りなおした。

変な沈黙が場に流れる。


「マックス……あの……。

 私は……まだ戦えますそれに……《ネメシエル》だって……!」


もしかして今回この作戦から外されたのかもしれない。

そう心配した蒼だったがその心配は杞憂に終わった。


「?

 ああ、何を勘違いしてるんだと思ったぞ蒼。

 お前には一番大事な役割を担ってもらう」


「一番大事な……?」


「そうだ」


マックスは司令室のカーテンを開けると外を見るように言った。


「《アウドルルス》!」


 蒼。

お前には《アウドルルス》を使い、首相を救い出してもらいたい」


 《アウドルルス》……を。

ん?


「《アウドルルス》で……ですか?」


「そうだ!」


 改めて窓の外に見える《アウドルルス》はコグレで見たときとは大きく変わってしまっていた。

もちろんいい意味で、だ。

 舷側には新しく四つの補助機関がつけられており、兵装も旧“光波共震砲”から新“光波共震砲”になっている。

錆が目立った船体は綺麗に塗装され、船体に空いていた装甲板も新しく追加されていた。

舷側の“ナクナニア貫通砲”はすっかり取り去られ、新しくサイドスラスターが取り付けられていた。

エの字のような構造の主翼は改装され、《ネメシエル》と同じダブルデルタ翼が取り付けられている。

更にステルスを考慮したつもりなのか、主翼の部分が黒く多種類のレーダー波を吸収する塗装がなされ、角度が付けられていた。

船体自体にもステルスを考慮した塗装がなされている。

艦底にあった兵装も強化され、新しく機銃が二門増設されていた。

四台のドローンがクレーンで吊るされている《アウドルルス》の整備をしているようだ。

甲板の一部が開いており、その側には技術長のお爺ちゃんが指示を飛ばしていた。

《ネメシエル》の修理もやっているというのによくまぁそんなにあちこちを行ったり来たり出来るものですね……。


「《アウドルルス》で技術島へ侵入。

 低空でレーダーを避けつつ首相を救出してもらいたい。

 先月忍び込ませていたスパイによって首相の場所の特定を急いでいる。

 判明次第、そのスパイによって首相を湾岸へと誘導。

 《アウドルルス》へ収納、という流れにするつもりだ」


 失敗は許されないだろう。

もし失敗したら警戒して二度とこんなチャンスは訪れないに違いない。


「タイミングが全てですね……。

 わかりました」


 偵察よりかは気楽に行けそうです。

蒼はほっとすると同時に少しだけ物足りなさを味わう。

戦闘がないのは仕方のないことだ。


「出発は……《ルフトハナムリエル》達と合わせるぞ。

 明日朝八時。

 三面同時に作戦を展開する。

 細かい周波数などは《アウドルルス》内で説明する」




     ※




 冷たい廊下。


「朱姉様……きっと大丈夫ですよ……」


「……………………」


 黙りこくる藍。

目の前にはガラスの棺桶のような容器に入った朱がいた。

ガラスの容器の中には透明の液体が充満している。

服を脱がされた朱の体に手当てをする小さな機械の腕が触れ、離れを繰り返している。

それを操作するドクターブラドが慣れた手つきで朱の手術をしてもう八時間が過ぎようとしている。

“核”も脳の構造をはじめとする“核”特有の器官を除けば後はほとんど人間と同じ生き物だ。

しいて違いを上げるなら“核”は生殖機能が故意に取り除かれているということぐらいか。


「こんなとこで死ぬようじゃ《超極兵器級》としての自覚が足りん……って。

 私も朱姉様に言われました。

 だからきっと大丈夫ですよ」


あまりフォローになっていなかっただろうか。

藍は朱をじっと見つめたまま動かない。


「……蒼。

 あちきは……朱に昔からよーけ助けてもろててん。

 まだ暗黒の刻印を見つけ出し、大天使クラースの化身と自分を理解していなかった時や。

 今度はわちきが助ける番やって……そう思いよったんじゃ……。

 せやけど……」


 藍は手に持っていた飲み終わった缶をゴミ箱へ突っ込んだ。

軽い金属と金属がぶつかる音がする。


「ホンマはな……あちきが《アイティスニジエル》で……。

 朱が《ルフトハナムリエル》のはずやった……。

 懐かしいんじゃ、全部……」


藍は自分の手首に刻まれた紋章を優しく撫でた。

微かに光る紋章は《ルフトハナムリエル》を示す番号と共鳴しているだろう。


「蒼、あんた技術島に行くんじゃろ。

 話はマックスから聞きよる。

 《ネメシエル》やのうて、《アウドルルス》で行くんじゃろ?」


「藍姉様……?」


「……気をつけんさいや」


蒼は静かに頷いた。

分かっている、と目で伝える。


「藍姉様もですよ。

 気をつけてください。

 私達空月兄妹には欠けが出てはいけないのですから」


「………………せやなぁ」


「元気出してください。

 朱姉様はきっと、大丈夫ですよ。

 ドクターブラドは口も顔も悪いし嫌な男ですが、腕は一人前です。

 だから、大丈夫ですよ」


ちら、とこっちをドクターブラドが見た気がしたが知ったことではない。

藍は薄く笑いながら部屋から出ていく蒼に手を振った。




     ※




(ひっさしぶりですなぁ。

 お元気でしたか?)


「お陰さまで。

 何よりといった感じですかね」


(あっしもでさぁ。

 《ネメシエル》さんからしっかりお守りをするよう頼まれましてね。

 いやー参りましたよ)


「艦艇ネットワークも人数が増えたんじゃないですか?」


(そりゃもう!

 お蔭さまで話していても退屈しませんでさぁ!

 後輩がいっぱい出来るっていうのも嬉しいもんですわ)


 《アウドルルス》艦内。

午前七時半。

作戦開始まで残り三十分。

エンジンを温めると同時に新しくつけられた補助機関の様子も確かめたくて少し早めに蒼は《アウドルルス》に乗り込んでいた。


「よいしょ……っと」


艦橋内の椅子に座り、シートベルトを締める。

席に設けられた“レリエルシステム”への穴へ両腕を突っ込む。


「“レリエルシステム”、接続開始。

 “レリエルコード”認証を開始してください」


(了解でさ。

 “レリエルシステム”起動。

 コード“Nemeciel 235”特別接続認証完了。

 フラッグシップ権限を認証。

 正規コードの代行接続を開始)


 “レリエルインターフェイス”で接続状態を確認する。

少し前までは五十パーセントが関の山という所だったが、今は八十パーセント程度に上昇していた。

《アウドルルス》のデータベースが更新されたことで《ネメシエル》の年式を認識するようになり、その上でフラッグシップ権限を発動出来るようになった為だ。

《アウドルルス》を改装すると同時に“レリエルシステム”も少しいじっておいたのだろう。


「あー……。

 久しぶりですね。

 《超極兵器級》に慣れてると……こう。

 駆逐艦を操るのが不安になりますよ」


(《超極兵器級》を操る貴方でもそういう風になるもんですかい。

 いやーこう、力を抜いていい感じに頼みますわ)


「それがいけばいいんですけどね……」


 世間話をつれづれと垂れ流しながら素早く状態を確認していく。

《ネメシエル》よりも圧倒的に少ない表示のお蔭で確認作業は簡単に終わる。


『蒼、どうだ、調子は?』


「なかなか……いいカスタムです。

 これなら救出も楽そうです」


『よし、作戦の説明としゃれ込もうか。

 いいか?

 今朝、首相は技術島の……ココ。

 ここに収容されたらしい』


 技術島の地図が現れ一部が拡大される。

ベルカを構成する巨大な一つの島が丸々研究室になっているこの州は本当はシースラス州という名前だ。

住んでいる住民の半分がベルカの国立研究室の関係者だ。

多数の軍艦が集まる場所でもあるため帝都に並ぶ軍艦の聖地として崇めたたえられている。《ネメシエル》をはじめとする《超極兵器級》はもちろん、ベルカの艦艇のほとんどはここで研究開発された。

 当然それは“核”も例外ではない。

超光化学関係の技術は全てここにある、と言っても過言ではない。

国内最大の造船ドックもここにある。

そして地図でマーキングがされた場所は技術島の州都付近にある港、セルバだった。

真っ白な建物が並び、州立刑務所がある所だ。


『この塔の最上階に収容されている。

 警備は最も厳しいレベルファイブの所だ。

 まぁ細かい所はスパイがする。

 蒼の役目はレーダーを低空で掻い潜り、港で待機。

 首相を積み込み敵の空間を離脱、という所だ。

 戦闘はほとんどしなくていいぞ』


 刑務所、約五千人を収容することが出来る刑務所は最新鋭の警備体制をしいていることで一時期話題になった。

その州立刑務所のど真ん中に立っている塔がある。

塔のてっぺんに大統領がいる、ということだ。


「つまり私はレーダーを掻い潜って……。

 港でお茶をしていればいいわけですね?」


『そういうことだ。

 それと港にベルカの艦があることは普通の事、だ。

 変なことをしない限りな。

 分かるな?』


 だから《アウドルルス》があったとしても分からない。

まして技術島の設備を敵が全て把握できているとも限らない。

だから何の疑いもなく、敵の支配下に置かれたベルカの艦艇のふりをしろと。

そうすればばれないと。


「了解です」


 ちら、と時計を見る。

そろそろ出撃の時間だろうか。

港が騒がしくなってきた。

《ルフトハナムリエル》、《ヴォルニーエル》、《ニジェントパエル》の三隻の機関が動き出したようだ。


「私達もそろそろ行きましょうか、《アウドルルス》」


唸るような三隻の機関音は装甲を震えさせて艦橋にまで届いている。


(合点承知でさ)


「《アウドルルス》、機関始動。

 出航シークェンス開始!」


いささかいつも聞いている《超極兵器級》の音と比べて寂しく、頼りない機関音だったが今はこの駆逐艦で頑張るしかないのだった。




     ※




(そろそろ敵のレーダー圏内でさ。

 オートパイロットを解除しますで)


「了解です」


 敵レーダーの圏内が円となり地図に表示される。

高度は今、三千の地点だ。

セルバからおよそ五十キロの地点。


(解除まで三、二、一……今!)


 急に艦がぐらついた。

蒼は思いっきり艦首を下に向け、高度を三十にまで落とす。

少しでも操作を誤れば《アウドルルス》は海面に激突するだろう。

主機の回転を逆にし、逆噴射した状態でスピードも少しずつ落としていく。

海面が近くなっていく。

高度計の数字がどんどん減っていく。

そして数字が百を切った時


「今です。

 艦首上げ、船体を立て直します。

 艦底スラスター解放、一番、二番」


(了解でさ。

 艦底スラスター一番、二番、噴射)


 艦底のスラスターが開き、紫の光を海面に落とす。

スピードが落ちると共に艦首が持ち上がる。

海面と船体が並行になった瞬間主機の回転数を最高にまで上げた。

風を切るような勢いで《アウドルルス》は空を蹴りその船体を前へと押し出した。

すぐにセルバの港は見えてきた。

数々の小さな軍艦が並んでいる港がある。

軍港はここから北へ五十キロ程度進んだところにある。

もしばれたとしても《アウドルルス》のスピードなら優に振り切ることが出来るだろう。


「レーダーを避ける意味もあまりなかったかも知れないですね」


(あっしもそう思いまさ)


 極めて穏やかに《アウドルルス》はセルバの港に入港することが出来た。

粘つく海水に引っかき傷を残し、船体が海水へと沈んでいく。

回収船である印をマストに上げ、蒼は機関を止める。

敵の気配はない。

海中に沈んでいく錨の鎖の音がしばらく聞こえていたがそれもすぐに聞こえなくなる。

それ以外は本当になにも聞こえない。

上手い事レーダーに引っかからずに行くことが出来たようだ。

まぁもっともレーダーが張ってあったのかどうかも不明だが。

錨が海底に刺さったのを確認して蒼はほっと一息ついた。

周りに並んでいる軍艦は魚雷艇や哨戒艇など小さなものばかりだ。

全長八十メートル程度の《アウドルルス》ですら大きなものに見える。


「穏やかですね……びっくりするぐらい……」


 穏やか過ぎる波と港だ。

ここから見える州立刑務所は何も異変が無いかのように静まり返っている。

真っ白な建物が多い港町に人は多い。

午前九時半ぐらいにもなるこの時間。

連合に支配されたとしてもベルカの民は耐え、変わらぬ日常を送ろうとしているのだろう。

空は青く、雲はどこまでも広がっている。

蒼天、という言葉がまさに似合うようだ。

港から漁船が沖へと出ていく。

こちらを見て不思議な顔をしていたがベルカの紋章を見て小さく二回ほど頷いていた。


(いい天気ですなぁ……)


「そうですね……。

 いつになったら来るのやら……」


(あっしらは連絡を待つだけですんね)


 時計の針は回っていく。

特にやることもない。

蒼は目を少し瞑ることにした。

カモメが《アウドルルス》に留まる。

セルバの日常に溶け込んだ気分は悪くない、につきた。

そして午前十時を過ぎた所だ。

州立刑務所の雰囲気が変わった。

空高く切り裂くように聞こえてきた音、サイレンが鳴り響き騒がしくなっているのが見なくとも分かる。

蒼は目を開け、戦闘体制をとるために機関を指導させた。

追われているのなら《アウドルルス》の火力で押しきってやろう、と思い周辺地形に戦闘が起きていないかトレースを始める。


『おい助けてくれ!』


突然無線が入った。

ようやくまだうとうとしていた意識が一気に戻ってくる。


『くそ、この周波数で合ってるんだろうな!?

 《アウドルルス》!

 聞こえるか!?』


(無線の発信源を確認。

 場所は……)


《アウドルルス》が言うまでもない。

州立刑務所の塔から銃声が鳴り響き始めた。

同時に聞こえていた無線からも銃声が流れ始める。


「こちら《アウドルルス》。

 いったいどうしたんですか?」


切羽詰まった声にすかさず反応する。


『簡単に言うとばれた!

 回収を頼みたい!』


「回収を……!?」


『そうだ!

 塔の窓につけるなりなんなりしてロバート大統領を回収してくれ!』


 そんな無茶な……。

無理だと言おうとしたレーザー銃が空気を切る音がマイク越しに流れてくる。

攻撃まで受けているとなると長くは持たないだろう。

状況は最悪と言ってもいい。

後日出直すわけにもいかない以上失敗は許されない。

塔をトレースすると《アウドルルス》が近付けそうなポイントを発見した。

塔に不釣り合いなほど大きなヘリポートが壁面にくっついている。


「では、塔のヘリポート付近につけます。

 そこまで来れますか?」


蒼は塔から大きく突き出したヘリポートを見ながら言った。


『ヘリポートだな!?

 分かった、すぐに行く!』


 無線は繋がったまま、沈黙する。

時折銃声が響き、それが蒼の不安と焦りを駆り立てた。


「《アウドルルス》、錨を上げてください。

 目標地点塔ヘリポート。

 《アウドルルス》全兵装解放。

 ……エンゲージ!」


 桟橋から離れた《アウドルルス》は少しの加速ですぐに空へと飛んだ。

塔のヘリポートまではすぐだ。

最上階から少し下へ降りることでたどり着くことができる。

回収地点にはもってこいだった。


『《アウドルルス》!

 着きそうか!?』


「今からアプローチです。

 そちらの状況は?」


『今四十三階だ!

 次下に行ったらヘリポートだ!』


「了解しました」


 《アウドルルス》の船体をヘリポートに平行に近づけていく。

《アウドルルス》は駆逐艦とは言え全長八十メートルもある。

ヘリポートを間違って押し潰さないように慎重に気を使いながら寄せていく。


(“イージス”起動、ピンポイント展開!)


 《アウドルルス》の声ではっと、気がつく。

一瞬戦闘艦が現れたのかと思ったがそうではないらしい。

刑務所に居座っている連合の兵士が対空ミサイルを撃ってきたのだ。

だが所詮は人が担げるサイズ。

《アウドルルス》に迫っていたミサイルは“イージス”にいなされ、遠くへと消えていく。

録でもない事をしやがってたかが雑魚の癖に……。


「脅かしてやりますか。

 《アウドルルス》艦底主砲起動。

 私達の下にいる雑魚共に向かって攻撃を敢行します」


(了解しやした!)


せっかく戦場に来たのに撃たないのは勿体無いし、味気ない。


「と、その前に」


せめて塔への増援ぐらいは防いでおかないと、ですね。


『くっ、敵の攻撃がきつい!

 もう少し待ってくれないか!?』


「増援は私が食い止めます。

 急ぎヘリポートにまで」


 塔へ繋がっている数々の連絡橋へ、攻撃するよう蒼は《アウドルルス》に命令を出した。

艦底の二基の二連装“光波共震砲”が起動、連絡橋に狙いを定める。


「攻撃開始!」


 飛び出たオレンジの光が連絡橋を押し潰した。

鋼鉄とコンクリートが飛び散り、高温で焼かれた空気が蜃気楼になってゆらりと立ち昇る。


『くっ、もう少しだ!

 もう少しでヘリポートにたどり着く!』


「了解です。

 大統領は?」


地上へ向かって機銃の弾をばらまきながら尋ねた。

回収のため、舷側格納庫の扉を開ける。

もうすぐヘリポートの入り口に姿が見えはじめるだろう。


『無事だ!

 このままヘリポートへ一気に――』


無線の声が乱れた。

爆発、炎上。

鋼鉄の軋む音と共に《アウドルルス》のバランスが崩れた。

ヘリポートに節舷していた左舷側から押し出されるように塔から距離が遠退く。


「っなん……!?」


 蒼達の狙いに敵がどうやら気がついたらしい。

ヘリポートめがけ、ミサイルやロケット弾が叩き込まれていた。

不定の事態に少し動揺した蒼は崩れるヘリポートから《アウドルルス》を離れさせる。

ヘリ三機を並べて整備出来るほど大きなヘリポートが塔にかけていた足を折られ、傾く。

やがて自重に耐えれなくなり、残った足もひしゃげ始める。

一度傾くともうその傾きを止めることは不可能だった。

傾く速度を一気に上げながらヘリポートは三十メートル下の地面めがけ、落下した。

残っていた連絡橋をその質量で叩き切りながら巻き込み、地面に大きな音を立てて突き刺さるように鋼鉄の板が落ちた。

残骸も跡を追うように小さな破片となって落ちていく。


「っち……やりやがりましたね……!」


慌てて別の地点を探ろうとするがもうヘリポートの代わりとなる場所は見当たらない。


『っ、くそ!

 敵が階段にバリケードを張ってやがる!

 これ以上下に行けない!』


他のルートを取ろうにも味方の観念したような声が無線から流れた。

こちらから援護射撃をしようにも階段をピンポイントで破壊するには《アウドルルス》の艦載砲は大きすぎる。

間違いなく敵もろとも大統領を巻き込むだろう。

かといって大統領を諦める訳にもいかない。


『くそっ!

 くそっ!くそっ!

 ここまでなのかよ!』


「少し……」


思い浮かんだ方法は蒼自身が自分で失笑するようなものだった。


『あん?』


「少し、乱暴に行きますよ。

 大統領を連れて最上階へ急いでください。

 最上階に着いたら壁には寄りかからず、床に寝そべってください」


まるでアニメや漫画の世界のような方法。

いや、アニメですらそんなことはしないですね。

するのは私のようなバカだけです。


『は?

 今更どうしようが……』


「いいですから!」


ごねていた味方に無理やり動かさせる。

その位置だと巻き込まれるからだ。


『わ、分かった。

 大統領上に……上に行きますよ!』


今思い付く最善の方法はこれしかないのだ。

味方の無線の音量を絞り、蒼は《アウドルルス》の錨を射出するトリガーに“レリエルシステム”の指をかけた。


「機関全速前進、面舵一杯!」


(了解でさ!

 機関全開、面舵一杯!)


 《アウドルルス》の船体が塔から離れ始める。

同時に右へと曲がり始めた船体は弧を描くように進む。

端から見たら大統領を蒼が諦めたように見えるだろう。

三十秒ほど飛び、二キロほど離れた地点。

大海原に影を落とすまで離れた所で《アウドルルス》の船体を塔に対して垂直になるように持っていった。

味方の退避は完了しているだろうか。


「再び塔へ向かいます!

 機関、全速を維持!」


翼、舷側に刻まれた模様が巨大な光となる。

空を蹴った《アウドルルス》は持ち前のスピードをいかし、船体を前へと突き出した。


(レーダーに感あり!

 敵艦出現でさ!

 この海域にたどり着くまで後五分!)


 報告に蒼は小さく息を吐く。

想定内だった。

むしろ来ないわけがない。


「構いません!

 この一回にかけます!」


 だからこそ、一度のチャンスで決める。

《アウドルルス》が塔へとぶつかる勢いで迫る。

海原に風圧で白い糸を曳きながら、その質量が空を駆ける。

マッハに到達しそうなスピード、塔まであと五百メートル地点でようやく蒼は艦首を少し左へ向けた。

雲を引いた主翼が太陽光を吸収して鈍く光る。


「《アウドルルス》、右舷主錨射出!」


(了解でさ!!

 右舷主錨射出!)


 《アウドルルス》の艦首にくっついた錨がナクナニアのエネルギーを受け、撃ち出された。

その錨が向かったのは塔を少し逸れた所。

先端は塔を逸れたが船体とくっついているもう片方端は 別だった。


『嘘だろ?』


「しっかり捕まっていた方がいいかも知れないですよ」


『言うのが!

 遅い!!!』


「言いました!」


 船体に引っ張られ、たわんだ鎖が塔にぶち当たった瞬間、錨の先が引っ張られてその進行方向を大きく変えた。

塔に鎖が蛇のように巻き付いていく。

その鎖の最終地点にある、一つで五十トンもある大きな錨が塔の壁をぶち破って食らいついた。

新たな衝撃を受けても耐えていた塔は遂に力尽きたかのように曲がり始める。

ヘリポートのあった傷口が大きく広がり始めその傷口は《アウドルルス》が引っ張るごとに大きくなっていく。


「よっし!

 《アウドルルス》補助機関までを解放!

 フルバーストです!」


(まさか成功するなんて思いもよらなかったっす!

 機関フルバースト承認!)


 主機の回りにくっついている四つの補助機関の口が開き、紫の光を吐き出した。

当然塔を引っ張る力も大きくなっていく。


『っ、大統領!

 大丈夫ですか!?

 いったい何をしてっうお!?!?』


 相当敵、味方双方の攻撃を受け脆くなっていた塔は《アウドルルス》の引っ張る力に勝てるわけなく鋼鉄で出来ているその身を引きちぎられた。

悲鳴のようにも聞こえる音はセルバ中に響き渡る。


(塔が千切れますで!)


 ちぎれた瞬間アウドルルスに新たな重量が追加された。

一瞬船体が落ちそうになり、バランスを崩したがすぐに建て直し、問題はなくなった。

大きな錨はガッチリと塔に食らいつき、離そうとしない。

巻き付いた鎖にも多数の返しがついた棘が出現しガッツリと食らい付いて、塔は鎖だけで繋がれて宙に浮いていると言うのに安定していた。


「錨を巻き取り始めてください!

 速球にこの海域を離脱します!」


(合点でさ!)


 船が塔の先端をぶら下げながら海域を離脱する。

その風景はさぞかし滑稽なものだっただろう。

二分も飛べばセルバの刑務所はもう遥か彼方にまで遠ざかっていた。

この調子で飛び続ければ敵増援が来るまでに海域を離脱することが出来るだろう。


「はー……緊張しました」


(全くでさ。

 失敗するとばかり思っていたあっしをお許しください)


 鎖の巻き取りが始まり、《アウドルルス》の艦首付近に塔の先端が張り付く。

セウジョウにたどり着く前にこの二人を艦に移動させ、塔は破棄した方がいいですよね……。


『くっそー、船はもう懲り懲りだ!

 故郷に帰ったら少し休ませてもらうぞ!

 大統領、大丈夫ですか?』


 しばらくごそごそとした音がマイクから聞こえてきた。

次に聞こえてきた男の声はとても今戦争をしている国のトップとは思えないほど穏やかで優しい声だった。


『ああ。

 えーと、君はベルカの軍艦だな?』


「そうです。

 私はこの重駆逐艦アウドルルスの“核”を務めています。

 蒼、といいます。

 少し乱暴なお迎えになったことお許しください」


『いや……よく来てくれた。

 礼を言うよ。

 ありがとう。

 ヒクセスは……戦争なんて望んでいないはずだ。

 私は止めなければならないようだね』


「そうです。

 お願いします、これ以上戦うのはもう、ベルカは……」


『うむ。

 分かっているよ。

 少し休んだら直ぐにヒクセスに向かおう』


 応援に来た連合の艦がたどり着いた時には既に蒼達はいなかった。

あったのはボロボロになった刑務所のみでちぎれた塔は寂しそうに太陽を浴びていたという。

いったい何があったのか、それを細かく離そうにも連合の兵士は皆馬鹿馬鹿しくて笑ってしまうらしい。

誰が好き好んで駆逐艦が塔を丸ごと取っていったと説明するだろうか。






               This story continues.

やりましたよ一か月の間に二回更新です気持ちいい。

前書きにも書いた通り、多数の変更を加えました。

といっても藍だけですが……。

ここで空月兄妹について改めて少しまとめておこうかなーと。




長男

空月・ヴォルニーエル・真黒

ムキムキお兄さん。

ナルシスト。

小さいメガネかけてる。


長女

空月・ニジェントパエル・真白

下ネタ好きなおなご。

眼帯カメラアイを付けている。

お嬢様みたいなしゃべり方をする。


次女

空月・ルフトハナムリエル・藍

中二病。

いろんな意味で頭おかしい。

大天使クラースの化身って自分で言い張ってる。

でもいろんな意味で設定ががばがばすぎるから突っ込まれたらきつそう。


三女

空月・アイティスニジエル・朱

唯一まとも。

この兄妹で一番まとも。

突っ込み役。

藍の言葉を唯一翻訳できる。


四女

空月・ネメシエル・蒼

頭おかしいロリ。

胸が無いことを気にしまくってる。


次男

空月・ウヅルキ・紫

自分の姉に対してコンプレックスむき出し。

唯一艦名に「エル」が入ってない。

まぁヒクセス(?)に奪われているから仕方ないのかも。


こんな感じです。

全体的にツッコミ不在な気がして仕方ないですがまぁ大丈夫でしょう。

さてと。


では、読んでくださってありがとうございました!

感謝であります。

皆さまのお蔭で小説を書き続けられています。

感想とか、本当にうれしいです。

心から、ありがとうございます。

感謝、感激です。

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