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超空陽天楼  作者: 大野田レルバル
碧落姫
33/81

黒金属艦

「本当はもう少し早く来たかった。

 でも、あいつらが空にいる以上どうしようもなかった」


 蒼の皮肉をフェンリアは流すと、口に咥えていたヘアゴムで長い髪を結びポニーテールを作る。

そして


「私の攻撃は敵にはどうあがいても通じない。

 だから、脅威がなくなってから来た。

 無駄な犠牲の一人になりたくなかっただけ。

 ごめんなさい」


 淡々と言葉を吐くと、蒼に自分の艦へ乗るように促した。

まぁ、そうですよね……。

フェンリアに皮肉を吐いた事を蒼は少し後悔しながら体の傷をさする。

変に皮肉を吐いたら百倍で返してくるような人でした、そういえば。

皮膚に刺さっていた木の棘を爪で摘まんでゆっくり抜き取る。

爪に血と一緒に付着した棘を地面に捨てて蒼は空を見上げた。

 全く、どうしてこうなったんですかね本当に。

次に地面で燃えている敵艦へ目を落とす。

陽光を浴びて虹のように光を反射するこの装甲を解析すればベルカの艦の防御力をもっと高めることが出来るかもしれない。

後で解析班をここによこすようにマックスに伝えておかなくては。

怪我をした箇所を舐め、蒼は視点をまた空へと移した。

上空から大きな影を落とす《タングテン》は、翼を光らせてゆっくり蒼の真上に停止する。


「あ、春秋は?」


「蒼さんが囮になっているうちに逃げきれた。

 今もう司令室にいる」


 フェンリアはそういいながら蒼を運ぶために、甲板の一部を“リフト甲板”へと変え蒼の元へと降ろした。

目の前に降りてきた甲板の一部に乗ると蒼はフェンリア操る《タングテン》へと乗り込む。

何だかんだ言って蒼が《ラングル級》に乗ったのはこれが初めてだ。

尖った艦首に、《超常兵器級》にも負けていない主砲口径の大きさ。

形の整った艦橋、様々な電子機器が光を滲ませながら動いているのは中々に美しい。

“リフト甲板”は、ゆっくり上って行くと艦橋の中へ通じる装甲扉の前で停まった。

重い金属の音が響き、目の前の扉が左右へと開く。

“リフト甲板”から、中へと進むと直ぐに《タングテン》を操艦している“核”のいる部屋にたどり着いた。

分厚い装甲で覆われ、窓一つない空間には数多くの電子機器と、日常生活に必要な風呂やトイレ等といったものが別室で詰め込まれている。

《ネメシエル》には、装甲で覆われた窓があったが《ラングル級》にはないらしい。

真ん中に盛り上がった壇上の上には一つの大きな椅子とその椅子を取り囲むようにして繋がる電子機器の正面には二つの穴が空いている。

そしてその穴には今はフェンリアの腕が突っ込まれており、“レリエルシステム”を通じてフェンリアと《タングテン》が繋がっているのだった。


『蒼、そこにいるのか?』


 フェンリアが操る《タングテン》の艦橋に入り込むとマックスからの通信が入ってきたのだ。

《タングテン》のスピーカーは錆びている。

そのおかげでマックスの声も変なように聞こえる。


「なんですか?」


少し怒ったように蒼はマックスに答えた。

マックスは、やれやれと首を横に降ると言葉を続ける。


『すまなかったよ、蒼。

 あとでたっぷりと謝るからさ。

 そう怒らずに聞いてくれ。

 《タングテン》に乗ったまま第五乾ドックへと向かうんだ。

 そこに俺達からのプレゼントがある。

 受け取ってくれないか?』


第五乾ドック……ですか?

結局春秋からはなんの情報も得られなかった蒼には嬉しい言葉だった。

マックスの後ろでは部下たちが右へ左へと走っており、損害状況等を報告しあっている。


『その中にある艦に乗るんだ。

 詳しいことはそれから話す。

 急いでくれ。

 敵大規模艦隊がこちらへと向かっているからな』


マックスの通信が切れると共に静けさが訪れた。

《タングテン》の低いエンジン音だけが残る。


(蒼さんも大変なんだなぁ )


かすれた男の声がため息と共に聞こえる。

久しぶりに聞く《タングテン》の声だ。


「全くです。

 《タングテン》」


《タングテン》にそう答えて、思い出したように蒼は尋ねた。


「あなたは《ネメシエル》がどうなったか知ってますか?」


誰も蒼には教えてくれなかった事実を、この艦なら教えてくれるかもしれない。


(まぁ、あれは凄まじかったからなぁー。

 忘れることなんて到底できないねー。

 記憶メモリーが削除されない限りな。

 かいつまんで話そうか?)


その言葉は情報から隔離されていた蒼にとって神にも等しいものだった。


「お願いできますか?」


(了解した)


 第五乾ドックに着くまでおおよそ五分。

《タングテン》はざっくりと《ウヅルキ》と《ネメシエル》の戦闘後を話したのだった。

ただその言葉だけを蒼は信じ、そして頷いて聞く。


「《ウヅルキ》が――」


蒼は話を聞いてとっさに信じることは出来なかった。

だが、自分がこうして無事な理由はそれ以外には納得できない。

まさか自分が命を救われると思わなかった。


「蒼さん。

 間もなく第五乾ドックにつく。

 降りる準備を」


 あの《ウヅルキ》が私を……。

湾外に突き刺さりそびえたっているであろう《ウヅルキ》の船体を蒼は思い浮かべていた。






      ※






 《タングテン》から下ろされてすぐに目の前にある建物から第五乾ドックに入った蒼だったが照明は灯されておらず暗いままだった。

隙間から微かに見える空を覆うようにしてこのドック丸々を隠すように装甲天井が展開されているため余計に光が遮られるのだろう。

先程敵を撃滅したときはこの装甲天井が開き、その隙間から《ネメシエル》が攻撃したらしい。

私がいない状況下でよくそんなことが出来ましたね。

おかげさまで助かりましたが……。


(蒼副長。

 暗いから足元には気を付けてな)


「…………」


 後ろの装甲扉が閉まると辺りは完全なまでの暗闇に包まれた。

物々しい雰囲気が辺りには立ち込めており、時々遠くで兵士たちが走り抜けていく音だけが響く。

蒼が来たことを認識した《ネメシエル》か、他の機械が蒼が歩く廊下の電気のスイッチを入れてくれた。

手すりに小さく付いているだけの小さな電灯に光が灯りその光だけを頼りに前へと進む。

少しだけ進むと目の前に一つの扉が現れた。

扉は、中々に美しい黒金属で蒼が近づくとドック内に響く鈍い金属音を立てて左右に開く。

黒金属の色は間違いなく《ウヅルキ》であり、蒼は複雑な気分を抑えることができなかった。

開いた扉の中にはエスカレーターのようなものがあり、それで艦橋の中央部であり艦の心臓部である中央演算室があった。

少し昇る。

エスカレーターに乗り込んだ蒼の後ろで装甲の扉は閉まりカチャリと完全にロックされた。

エスカレーターのようなものはそう長く続かなかった。


「《ネメシエル》?」


(ようこそ、蒼副長。

 新しい私へ)


突然、パチンと電気がついた。

蒼の目の前に広がっていたのはなんの変鉄もないいつもの《ネメシエル》と同じ艦橋内部の風景だった。

真ん中に大量の電子機器に囲まれた“レリエルシステム”の椅子と奥にはトイレやお風呂、ベッドルーム等が別室で用意されている。

なんのことはない《ネメシエル》と全く同じ配列だ。

壁にかかっている国旗や、細かい資材。

それに床に置いてあるゴミまでもが全て同じだった。


「……なにも変わってないじゃないですか」


 蒼は《ネメシエル》に言いながら椅子へと座る。

あ、強いて言うなら椅子の座り心地が少し向上した、ぐらいですかね。

蒼が椅子に座るのを待っていたようにマックスから通信が入った。


『よう、蒼。

 どうだ?』


どうだもなにも……。

いつも通りの私の艦じゃないですか。

アホらしいと言うかなんというか。


「これがプレゼントですか?」


『……あれ?

 お前まだ“レリエルシステム”に接続してないじゃないか。

 してからだな、話の続きは』


(そうだぞ、蒼副長。

 いつも結論ばかりを先に追い求めてはダメだ)


「はい……?」


 ……何で私、《ネメシエル》にお説教されてるんですかね。

不満が胸の奥から沸き出したがそこはぐっと、堪える。

堪えて、両腕の軍服の裾を捲った。

右腕の“ワープダイヤモンド”が鈍く光り、赤色の光を放つ。

蒼の感情が微妙に高まっているのだ。

何も変わっていないだろう、と思っていたとしても。

やはり、期待してしまうのは蒼の中に残された人の性と言うべきか。

“レリエルシステム”――。

艦と“核”を繋いでいる蒼の腕を受け入れるためにフレームと共に盛り上がってきた二つの穴へ蒼は一気に両腕を差し込んだ。


「っ……!」


 突如として、蒼の視界は一瞬真っ白に染まった。

だが、その白の世界は直ぐに晴れ代わりに様々な装置が作動し始める。

“レリエルシステム”との連携を認証、同期を承認完了したというメッセージログを右へ押しやると、突然蒼の目の前に展開していた窓を覆う装甲が上へと畳まれて行く。

目の前は真っ暗、そう思った刹那一斉に点灯した電気がドックの中を明るく照らした。

それと同時に蒼の頭のなかに新しい《ネメシエル》のデータが滝よりも強く流れ込んでくる。


『どうだ?』


「……素晴らしいです」


 蒼は窓から見える光景を。

そして頭の中に溢れんばかりに雪崩れ込んできた情報見て恍惚とせざるをえなかった。

巨大な砲塔と奇妙な模様。

さらに多数の兵装がぎっしりと並んだ姿はまさに圧巻。

今までの《ネメシエル》の数倍以上強そうで。

なによりも美しい。


『どうじゃ、素晴らしいじゃろ?』


マックスの代わりにその声は別の所からの通信によって補われた。

通信の顔表示部分に写っているのは整備班のオヤジだった。


「これ、オヤジさんが?」


 蒼はそういって自分の新しい《ネメシエル》を“レリエルシステム”を通して眺める。

艦橋、砲台の量。

今までの《ネメシエル》も十分に美しかった。

だがそれをはるかに上回る美しさだ。

船体のあちこちには姿勢を制御するためのスラスターが付いている。

機関も舷側に更に張り出すようになり、空を駆けるための翼も主翼の形が変わっていた。


『そうだ。

 なかなかにいかしているだろう?』


通信の中のオヤジはそうって髭を撫でる。

真っ白な髭、真っ白な髪は年齢を感じさせるがしゃべり方は老人よりもマックスに近いものがある。

蒼がしばらく自分の艦を眺め惚れ惚れしているのを嬉しそうに見ていたがマックスに急かされて慌てて説明をさせられる。


『よし、じゃあ。

 ごほん。

 説明、しておこうかね?

 《新ネメシエル》の力を』


 この後三十分以上にわたって説明されたことを大きくまとめるとこういうことになる。

従来の《ネメシエル》の二倍以上に巨大化した船体は防御力も計り知れないほど強化されている。

“イージス”の過負荷率、“強制消滅光装甲”の限界値の大幅引き上げ、それに装甲が十メートル以上もの分厚さに引き上げられていた。

それ以上に強化されているのは武装の数々だ。

《旧ネメシエル》に比べ《新ネメシエル》は、“光波共震砲”の総門数は半分以下に減少してしまっているものの、口径が“五一センチ六連装光波共震砲”から“三百六十センチ六連装光波共震砲”へと六倍以上に拡大されている。

その射程距離も大きく伸び、今までの五倍以上は軽いだろう。

ただし連射の速度は落ちているため一撃離脱の精神が生きてくるという。

撃たれるまで耐え、撃った後は撃たれない、というやつらしい。

武装の種類は総じて減少したものの、《旧ネメシエル》に比べ《新ネメシエル》ほとんどが拡大、発展版の武装を搭載していた。

その船体にも大量の変化が認められており、今まで存在していなかった予備艦橋が搭載された。

そのおかげで索敵範囲の大幅拡大、及び各種兵装の自動同期の効率が大幅に増えた上に各艦橋の自動射撃も行えるようになった。

他にも今まで射撃軸がかぶっていたことや、多数の不具合の修正。

各兵装の干渉を大幅に抑えたらしい。

また舷側武装の廃止によって水上でもある程度の速度で航行することが可能になったとか。

例の強制排熱コマンドも引き継がれているという。


『……えーと。

 それとやっぱり大きく変わったのは機関だな。

 今までの“ナクナニア光反動炉”達を垂並列に接続して。

 大幅に出力をアップした“ナクナニア光反動繋属炉”を二十基。

 同じように接続した“ナクナニア光波集結繋属炉”を……えっと?

 ああ、主機として十機搭載してるんだ』


 蒼はオヤジの説明を長々と聞きながら、《ネメシエル》の各部分を念入りに見て行った。

まぁ、これだけの長い説明を簡単にまとめればこうなる。

《旧ネメシエル》の拡大発展バージョン。

つまり、そういうことだ。


『セウジョウの豊富な資源と、《ネメシエル》。

 そして、《ウヅルキ》の鋼材を再利用して仕上げたんだ。

 中枢部は《ネメシエル》の艦橋をそのまま移植してある。

 その他予備艦橋は《ウヅルキ》の艦橋をばらして搭載した。

 まあAIは《ネメシエル》のものだからそこらへんは心配するな。

 ふふ、どうだ、最高だろ?』


オヤジの言葉に蒼は頭の後ろがしびれたような感覚になった。

《ウヅルキ》と《ネメシエル》の……。


「《ウヅルキ》が……」


 蒼は少し黙り込む。

あの《ウヅルキ》が私の船に……。

聞いてはいたが、やはりおかしな感じがするものだ。

あの《ウヅルキ》が。

私の《ネメシエル》の一部となる。


『そうだ。

 船体の外板が黒いのはそういう――』


続けようとするオヤジの言葉をマックスが遮った。

少し焦ったような表情をしており、余裕を失った顔には若干の苛立ちが見える。


『あー、蒼。

 すまん、いいか?

 そろそろ出撃してくれないと色々と間に合わなくなる。

 出撃してもらってもいいか?』


「了解しました」


『続きは帰ってきてからだなー』


オヤジの残念そうな顔が通信の先に引っ込む前に


「オヤジさん。

 ありがとうございます、これで私また戦うことができます」


蒼はお礼を言った。

オヤジは小さく右手をひらひらと振ると通信を切る。


『蒼、聞こえるな。

 作戦の概要を説明するぞ』


 オヤジの通信枠があった部分を侵食して、マックスの作戦概要説明が始まった。

まず、このセウジョウ付近の地図が現れそれが縮小したかと思うと半径五百キロ近辺の情報が表示される。

その五百キロ近辺に赤い大量の点が表示されていた。

数、およそ五十。

それらがおよそ五つ、五十キロ程度の距離をおいて攻め入って来ていた。

物量で押す作戦に敵は出たらしい。

だが、逆にこの戦いに勝てばしばらく敵は大規模な艦隊を展開できなくなる、と言うことだ。

一つのまとまりに十~十五隻、それが五つで七十隻。

まるでため息が出るような数だ。


「これって……」


(ああ、敵艦隊だ。

 こちらへと攻め入ろうとしているのに間違いないだろう。

 《ネメシエル》は艦隊を率いて、この敵艦隊を攻撃。

 殲滅するんだ)


「…………」


『まぁ、この辺は副司令に説明してもらう。

 艦艇マニアだからな』


マックスはそういって副司令に出番を譲ってあげる。


『お久しぶり、蒼。

 この敵艦隊は全世界の艦をごちゃまぜに編成しているみたいね。

 あまり練度は高くないと思うわ。

 それにごちゃまぜの編成のお蔭で色々支障があるみたいね』


久しぶりの副司令の出番だった。

手を振り、もうアピールを繰り返す。


『んー、まぁヒクセスが一番多い事は間違いないわ。

 でも、そうね。

 もしかしたら新兵器もいるかもしれない。

 その場合でもあなたなら大丈夫!

 ちゃちゃっと沈めちゃってちょうだいな』


出来ますかね。

蒼は、敵艦隊周辺を拡大してみた。

一つの艦隊あたりに通常戦艦が合計で八。

残りは重巡や駆逐艦性質だ。

それらが輪を作る輪形陣を組んで押し寄せてくる。


「それで、こちらの戦力は……?」


『蒼には、《臨時超空制圧第一艦隊》を指揮してもらう』


『あっ、ちょっと、あなた!

 私の説明まだ終わってな――』


 敵は、全部で五つの艦隊に分かれている。

それらを上から第一艦隊、第二艦隊と名前を付けてゆき《超極兵器級》、《超常兵器級》を旗艦に据えた《超空制圧艦隊》に相手をさせるというのが今回の流れだ。


『海軍がいたら海軍にも協力してもらいたかったんだがな。

 空軍はコグレから呼び寄せようにもセウジョウには滑走路が無い。

 コグレの地上部隊には、こっちにすでに来てもらって。

 そして陸から対艦砲を ぶっ放してもらう。

 それぐらいしかやることが無いと嘆いていたしな』


『対艦砲には“五一センチ六連装光波共震砲”を再利用しているわ。

 資源の有効活用ね。

 《ネメシエル》にはもう必要ないって聞いたから』


敵第一艦隊へは《アイティスニジエル》を旗艦とした《超空制圧第二艦隊》合計五隻に。

敵第二艦隊には《メレジア》が率いる《超空制圧第三艦隊》合計七隻に相手させる。

敵第四艦隊には《ルカリス級超常兵器級巨砲戦艦カエルス》の合計八隻に。

敵第五艦隊には《ルカリス級超常兵器級巨砲戦艦ルカリス》の合計八隻に。


『《ネメシエル》には、最も戦力が集中している敵第三艦隊を相手してもらいたい』


敵第三艦隊は敵のど真ん中に陣取っている艦隊を指している。

戦艦十隻、を中核として、通常艦艇を抱えた合計七十隻。


『敵に対する戦力差を元に艦隊を考えた結果、《ネメシエル》には悪いが……』


 それに立ち向かうのは《ネメシエル》。

そして、いつもの《ラングル級》の二隻だけだった。

外洋に出ることのできない小さな魚雷艇などは本部の守りにつくらしい。

セウジョウの壁の上にある対艦砲とコラボしてまぁ、厄介な要塞都市ぐらいにはなるだろう。


「仕方ないですね。

 つまり《超空制圧第一艦隊》は、いつも通りということですよね?」


『ああ、悪いな。

 だが、《ネメシエル》ならやってくれるだろうと思っている。

 なお、敵艦隊に増援の可能性は認められないと言っていいだろう。

 近辺軍港には敵艦一隻の影も認められないからな』


「……やれやれ。

 《アルズス》、それに《タングテン》、それに私。

 勝てますかね、この戦い」


『さぁな。

 何とも、と言ったところか』


「マックス……」


何とも不安で、頼りない司令官だ。

だが、そんなことも言ってられないのが現状でありやるしかないのが蒼達の立場だった。


『頼んだぞ、蒼』


『そうよ。

 あなたしか私達は頼りにする人がいないの』


仕方ないですね……。

蒼はマックス夫妻に呆れつつも任務を遂行するために行動するしかない。

あの司令官についていくと決めた以上どうしようもないのだ。


「じゃあ、《ネメシエル》。

 行きますか。

 私達は敵第三艦隊を殲滅しますよ。

 出航シークェンス開始してください」


(了解、出航シークェンスを開始する)


新生ネメシエル初の起動だ。

自然と蒼の声にも、《ネメシエル》の声にも気合がこもる。


(出航シークェンススタート。

 主機検査開始一から十まで。

 ――異常なし、グリーン。

 補機検査開始一から二十まで。

 ――異常なし、グリーン。

 補助機関始動開始、回転効率五百まで関数脈拍上昇。

 到達、回転効率ロック。

 主機作動開始、補助機関回転効率主機に接続開始――コンプリート。

 エネルギー流脈拍安定、一二〇を維持。

 武装機関一番から起動――コンプリート。

 主砲状態検査開始――安定を確認、オールグリーン。

 副砲状態検査開始――安定を確認、オールグリーン。

 全“三百六十センチ六連装光波共震砲”。

 及び“六十ミリガトリング光波共震三連装機銃”状態検査開始。  

 安定を確認オールグリーン。

 第一から第八艦橋まで思考ニューロン伝達検査開始。グリーン。

 “レリエルシステム”拘束解除、起動コマンド全力接続――安定。

 “第十二世代超大型艦専用中枢コントロールCPU”との接続。

 同期再起動開始。

 ――安全接続を確認、双方向同期完了。

 全兵装“レリエルシステム”と同調開始――オンライン。

 区域別遮断防壁装甲シャッター展開、第一種固定。

 “自動修復装置”起動、艦内に展開開始。 

 “自動追尾装置”起動、全兵装へ接続。

 “自動標的選択装置”起動、“パンソロジーレーダー”と同調。

 “軌道湾曲装置”起動開始艦外へ展開過負荷率ゼロ。

 “消滅光波発生装置”起動出力二パーセント。

 “パンソロジーレーダー”起動完了、グリーン。

 旋回確認、全兵装異常なし。

 出航シークェンス終了。

 《ネメシエル》通常モード起動終了。

 蒼副長、異常なし。

 行けるぞ)


「了解です、《ネメシエル》。

 護りましょう、私達の力で」


蒼がそう決めた途端、マックスからの通信がまた飛び込んできた。

全く、今から決めようしているときに。


『頼む、蒼。

 この戦争に負けるわけにはいかないんだ。

 だから――』


 蒼はマックスに軽くウインクする。

きょとんとしたマックスだったが小さく頷くと親指を立ててこちらへと向けてきた。

今度は蒼が小さく頷く番だった。


「《ネメシエル》、行きますよ!

 全兵装解放、エンゲージ!」






     ※






 蒼が、エンゲージを宣告する。

ドックに水が入ってくる音が蒼の鼓膜を刺激し始めた。

水が入ってくると同時に《ネメシエル》の重い船体が浮き上がる。

久しぶりの感覚に蒼は気分が晴れ渡る。

やっぱり、私はこの《ネメシエル》に乗ってこそ、だと。

鈍く、大地を揺らすような音が響きゆっくりと始動し始めた“ナクナニア光波集結繋属炉”や、“ナクナニア光反動繋属炉”から送り出されたエネルギーによって黒い船体に走る奇妙な模様に命が宿り始める。

赤と青の光がドック内を照らすとアイドリングの出力だけで、ドック全体が。

いや、セウジョウ全体が揺れた。

《ネメシエル》を固定しているウォーターアームが外れると同時に、第五乾ドックの密閉空間が解放された。

厚さ五メートルもある装甲扉が上下左右に開き、天井の装甲も少し開く。

そしてドック内に避難を促すための警報が鳴り響く。

赤い光がくるくる回り、《ネメシエル》の船体を鈍く光らせる。


「機関出力上げ、五パーセント」


 蒼の目の前にビーコンが現れそれに従うようにして《ネメシエル》の機関出力を調整する。

《ネメシエル》の船体はゆっくりと加速し始め、すぐに十ノット程度にまで加速する。

全長四キロの巨大乾ドックから全長三キロを超える超巨大戦艦がゆっくりと現れた。

ビルよりも巨大で、島ひとつが動いているような圧倒的な威圧感。

《ネメシエル》の禍々しいオーラがセウジョウ全体を覆ったようだった。

赤色の光を鈍く光らせながら《陽天楼》は、静かに外海へと出てゆく。

そしてセウジョウから遠ざかったところで機関の回転数を最大に上げた。

波を巻き上げ、《ネメシエル》の背後が白い霧に覆われる。

スピードはぐんぐん上がり、やがて億を超える質量が空へと舞いあがってゆく。


「頼んだぞ、《陽天楼》」


マックスは、《ネメシエル》出航の際に零れたコーヒーを雑巾で拭きながら願った。


「でも、地面を揺らすのだけは勘弁願いたいわぁ」


副司令は雑巾を持ちながらマックスの体についたコーヒーを払った。






     ※






『《ネメシエル》、まっていまシタ……』


 《タングテン》、そして《アルズス》を引き連れ目標空域につくと《超常兵器級》の空母である《メレジア》から通信が入ってきた。

蒼が病室からくるときにすれ違ったよく分からない姉弟らしい。

蒼は小さく頭を下げると初めての相手に短く挨拶を済ませた。


「危なくなったら、すぐに私を呼んでください。

 私が守ってみせますから」


『了解、頼りにしてイマス』


通信が切れ、代わりに《アルズス》と《タングテン》のステータスが表示される。


(蒼副長、敵艦隊の戦略海域到達を確認した。

 射程までおよそ五百秒)


「了解、《ネメシエル》。

 春秋、フェンリアさん、私の後ろに隠れていてください」


『了解っす。

 援護は任せてくださいっすよ』


『任せて』


(お兄ちゃん、《アルズス》頑張れるかなぁ?)


『大丈夫っすよ。

 《アルズス》ならやれるっす』


僚艦二隻の声、一つ足りない声に少し寂しさを感じたがそんなこと気にしていられない。


【……ルシアの野郎ども。

 勝てると思ってるのかね】


【さぁな。

 だけど、なんでまた俺達はベルカと戦ってるんだ?】


【仕方ない。

 テロリストに乗っ取られた国の解放は俺達の使命だからな】


(敵艦通信網へ割り込み成功。

 このまま、繋いでおくぞ)


『敵もどうして戦っているのか分かっていない感じなんすかね……』


『分からない。

 だけどこちらを攻撃してくることだけは確か。

 撃沈する』


 敵も、本当の理由を分かっていない……。

ということですね。

《ウヅルキ》たちは知っているらしいですが……。

敵の中にも多数の派閥が存在している、ということですかね。


(敵射程距離に到達!)


まぁいいです。

私達はマックスの刃。

そしてベルカという国の持つ武器。


【敵艦隊中央に超巨大戦艦を捕捉――なんだこいつは!】


【なんだ、どうした!?】


【今まで見たことが無いぞこんな艦――!】


【だが、機関声音、それに艦固有ニューロは、えーっと。

 うん、間違いなく《鋼死蝶》のものだぞ?

 見間違えじゃないのか?】


【大きさも三キロ、いやそれ以上――】


【はぁ!?

 そんな艦世界中のどこを探しても存在しないぞ!?】


兵器が事の次第を考えても仕方ないですよね。

蒼は自分の中に沸いた様々な考えを打ち消す。


「了解、《ネメシエル》。

 《アルズス》、《タングテン》!

 攻撃開始です!」


そう命令を下した。

《ネメシエル》の甲板、艦底にある“三百六十センチ六連装光波共震砲”の砲門が敵へと向くと微調整のために上下に動く。


(ターゲットロックオン)


「発射!」


 砲門へエネルギーが伝えられ空間変異を小規模で起こすほどのエネルギーが砲身内に蓄えられる。

そのエネルギーを撃ち出すために奥から発射ベクトルが駆けのぼるとエネルギーは圧縮、お互いにこすれ合い金属を軽く溶かすほどの超高温になる。

その過程でオレンジ色に発光すると、唯一の出口である砲門から敵へと吐き出した。

超高温で砲身が焼けつくのを防ぐため砲身の一部が少し開き、真っ赤に焼けた金属が覗く。開いた隙間から陽炎が沸く。


【敵の攻撃!?】


【バカな!?

 まだ《鋼死蝶》の射程内じゃ――】


【回避急げ!】


 敵艦隊の足並みが崩れ、そこに《ネメシエル》から飛翔した“三百六十センチ六連装光波共震砲”の光が襲来する。

敵戦艦は多数の駆逐艦を盾にしながら、回頭で避ける。


【撃ち方はじめ!

 敵艦隊を殲滅しろ!】


【敵不明艦の情報を出来るだけ取れ!

 本部へと転送するんだ、急げ!】


《ネメシエル》の初っ端の攻撃を喰らってバリアを食いちぎられ、船体を失って爆発、炎上し轟沈してゆく駆逐艦を蹴散らし敵の主力である戦艦十隻が前へと押し出されてきた。


「《ネメシエル》の武装を試すにはちょうどいい機会ですね。

 “垂直光波穿通孔”用意!」


 《ネメシエル》の“三百六十センチ六連装光波共震砲”。

なかなか使い勝手がよくなりましたね。

“垂直光波追跡孔”は《ネメシエル》の新兵装だ。

甲板や艦橋付近に設置された垂直発射基からホーミング性能のある貫通力の強いレーザーを発射する。


(了解。

 “垂直光波穿通孔”用意)


発射機の装甲が左右へと開き、中から砲身が付きだしてくる。

その先端が開き、回転を始め、プラズマをため込む。


「発射!」


百を超える青色のレーザーが空へとばらまかれる。

雲を蹴散らし、目標へと向かって追跡を始めたレーザーは寸分たがわず相手戦艦へと突き刺さった。


【緊急“伝導電磁防御壁”展開!】


【っくそ、何なんだあの戦艦は!?】


だが、攻撃は敵のバリアによって弾かれてしまう。

その威力から見るに、駆逐艦や地上ターゲットなどの雑魚掃討用らしい。


【反撃開始!

 あの戦艦であろうとも時代遅れのベルカの代物だ! 

 簡単に落ちるはずだ!】


敵戦艦の砲門がこちらを向いたかと思うと、大量のレーザーが向かってきた。


「“イージス”展開。

 許可二パーセント」


 以前の《ネメシエル》のと同じ感覚で蒼はそう告げる。

敵戦艦級のレーザーがおよそ五十、向かってきている。

以前の《ネメシエル》なら二パーセント程度を使用してこれらを弾き返していた。


(了解。

 敵レーザー着弾まで五秒――今)


だがこの《ネメシエル》は違う。

一パーセントにも満たない過負荷率で弾いてみせた。

その結果に蒼は背筋を撫でられたようにぞくぞくする。

自分が強くなったことに興奮するのは兵器として当然の事。


【駄目だ、弾かれる!】


【なんってやつだよあれは!】


これなら、勝てる。

蒼はそう確信し、艦を前へ押しやり攻撃を加え続ける。

圧倒的な力の差は、数など問題にしない。

戦艦の半数を艦隊減らし、敵艦隊はそれでもなお攻撃を続ける。

海へと落ちて行く無残な残骸は、海の中へと没し漁礁と化すのだ。


『俺達もいくっすよ!

 攻撃開始っす!

 なにも《超空制圧第一艦隊》は、蒼先輩だけじゃないんすよ!』


(だよ!!

 《アルズス》もいるんだよ!!)


『攻撃開始』


(フェンリア、あまり前に出過ぎると死ぬぞ)


【っくそ!

 相手の頭を取れ!

 T字で、敵を狩るんだ!】


敵艦隊は背後から炎を吹き上げながらスピードを上げ、こちらの艦隊の先を取る。


【撃て!】


そしてその攻撃は決して成果を上げなかったわけではなかった。

《ラングル級》の、過負荷率をマックスにするぐらいには有効だったのだ。


『っつう!』


「春秋、大丈夫ですか?」


過負荷率により、“イージス”の展開が出来なくなった春秋の操る《アルズス》の船体に爆発の華が咲く。


『大丈夫、っすよ!

 こんなところで沈むわけにはいかないっす!』


「《ネメシエル》!」


(分かっている!)


“三百六十センチ六連装光波共震砲”が水平に敵艦隊を薙ぎ払うように発射されレーザーの刃が敵戦艦を切り裂く。


【“伝導電磁防御壁”がきかない!

 あの戦艦の口径は三百以上あるぞ!】


【逃げろ!

 勝てるわけない逃げるんだ!】


戦艦全てを開幕一時間以内に落とされた敵艦隊はようやく気が付いて慌てて撤退を始める。


「《タングテン》追跡しますよ!」


『フェンリアさん、俺が回り込むっすから真正面からお願いするっすよ!』


『了解』


《アルズス》は“イージス”を失ってしまっていたから蒼としては《ネメシエル》の側にいろ、と言う意味で名前を呼ばなかったというのに。

早とちりした春秋は《タングテン》と一緒に行ってしまった。

《アルズス》、《タングテン》が《ネメシエル》の前に出てたその時。


(蒼副長!

 前方に巨大なエネルギー反応!

 これは――)


レーダーに大きな反応が現れた。

数は一つ。

蒼は喉の奥から絞り出すように春秋の名前を呼んでいた。


「春秋戻って――」


慌てて告げた蒼の目の前で《アルズス》の船体をオレンジ色の光が貫いていた。

船体の半分以上を抉り取った光はそのまま虚空へと消えてゆく。

目に残る強烈なオレンジ色、それと《アルズス》の船体に残った傷跡からそれは“光波共震砲”だと分かった。


「春秋!」


蒼は、叫ぶように春秋の名前を呼んでいた。


『え、痛……。

蒼先輩……何が……』


(《ネメシエル》さん何が――)


《アルズス》は、次の瞬間爆発的。

バラバラになった船体は黒煙を吐きながら海へと落ちてゆく。

あっけなさ過ぎる《アルズス》の最期だ。

海へと突き刺さるように沈んだ船体はその姿を水面下へと消してゆく。

完全に絶句した二隻の間の通信間に


【はーん?

 なかなかの威力だなこいつは】


耳の奥をゾクッと舐めるような声が響く。

低い声は、醜い。

男なのか女なのかわからない声の主。


(蒼副長発信源の特定に成功した。

 発信源は――)


「嘘……」


《ネメシエル》は嘘をつかない。

だが、蒼は嘘だと思いたかった。

発信源は、敵の手に落ちた《超極兵器級》。

《アイティスニジエル》の同型艦であり一番艦。

《超極兵器級超空城塞戦艦ルフトハナムリエル》だった。

《ネメシエル》に通信が入ってきて、その“核”の顔が写る。


あい姉様!」


蒼の知っている顔だった。

空月・L・藍。

朱の姉であり蒼の姉でもある。

空月姉妹の中で三番目の姉妹。

それが藍だ。

だが、藍は蒼の呼びかけに答えない。

目は虚ろで、朱と同じ顔なのに藍色の目は濁っている。


『藍姉!?

 どないしたんや!?

 なんで春秋を……』


朱から驚きの通信の横やりが入る。

先程の声は一体……。


【いやー、姉妹の感動の再開か。

 どうやら邪魔してしまったなぁ?】


藍の顔の隣にもうひとつ顔が並んだ。

ぱっと見るに男のように見える。

だが、見方を変えれば女にも見えなくもない。

不愉快すぎる声は、乾いた笑いを絞り出すと消える。


『あんた、藍姉に何したんや!?

 しばくで!?』


【ほう、お前が朱だな?

 そして、このちっこいのが蒼か。

 なーに簡単だ。

 制御と抑制、だよ】


『藍姉!』


「フェンリアさん、下がってください。

 押されている艦隊の所へ急行し、増援として加わってください。

 ここは私が何とかしますか」


フェンリア操る《タングテン》が、遠ざかって行くが、《ルフトハナムリエル》はそれに追加の攻撃をしない。

完全にターゲットを蒼だけに縛っている。


【しかしまぁ、《超極兵器級》って言うのも悪くない。

 力が無限に沸くようだな】


『くっ、蒼!

 担当空域を変更や!

 あたいがそいつをしばき倒したんねん!』


ゲスい敵の挑発に朱は苛立ちと怒りを覚えているようだ。

蒼も少しは動揺したものの今はなんとか立ち直り現実を受け入れていた。


「朱姉様も目の前の敵に集中してください!

 同型艦同士が戦っても共倒れになるだけです」


『くっ……蒼、ここ終わらせてすぐいくわ。

 待っとれよ』


来るまでには終わってるかもですよ。

朱からの通信が切れ、その下に広がっていた《アルズス》の通信枠が見えた。

春秋の敵もとらなきゃですね。


【まさか《鋼死蝶》がここにいることは予想外だったが……まぁいい。

 沈めて――】


『死ぬかと思ったっすよ!』


「春秋……?」


不愉快すぎる声をかき消して代わりにいつも聞いている声が聞こえた。


(脱出ポットが起動していたらしい。

 よかった)


通信の先に見える春秋の顔は煤まみれで真っ黒だったがそれでも元気にピンピンしていた。


『よくないっすよ!

《アルズス》がやられたんすから!』


ギリギリで“レリエルシステム”を切断し、ショック死を逃れたようだ。

《アルズス》はよっぽど春秋のことが好きだったのだろう。

“レリエルシステム”と接続している最中に、艦が轟沈した場合“核”も死ぬ。

だが、艦が沈む前に“レリエルシステム”との接続を解除していたら“核”は死なない。

後遺症が強く残り産業廃棄物になる可能性もあることから通常はしない選択を《アルズス》はしたのだ。

春秋に、生きてほしかったのだ。


『《アルズス》はあとで弔うとして……。

 蒼先輩、ひとまず最上甲板に着艦させてくださいっす。

 敵地においてけぼりはきついっすから』


「全く。

 仕方ないですね」


蒼としては速攻でセウジョウに帰ってほしかったが。

その途中で敵に攻撃されては元も子もない。

それなら《ネメシエル》の近くにいた方が安全だろう。

春秋のポットを《ルフトハナムリエル》は狙おうともしない。

そのまま《ネメシエル》への着艦を見守っている。

こちらの体勢が整うまで待つ、と言うことか。

真正面からの殴り合いを望んでいるようだ。

春秋のポットが甲板に着艦し、ワイヤーが近くの機材に巻きついてしっかりと固定される。

蒼は“リフト甲板”を飛ばそうとしたが頭の中に思いついた一つの考えでそれを押しとどめた。

のんびりと浮かぶ《ルフトハナムリエル》を眺める。

何とかなりそうですね。

春秋のポットが固定されたのを確かめたのか、敵は


【さぁ始めようぜ!

 醜い殺し合いをよぉ!】


そういって襲い掛かってきた。


「……《ネメシエル》良いこと思い付きました」


向かってくる《ルフトハナムリエル》を見て蒼はニヤリと笑った。






               This story continues.

挿絵(By みてみん)



新生ネメシエルです。

詳しいことはまた、別途設けて説明したいなって思います。

まぁ少しだけ待ってくださいまし!!


と言うわけで。

いやー。

やっと出ました、《超極兵器級》。

このタイミングで出ました。

後二隻あるんですけどね。

さてさてと。


ではでは、ありがとうございました!

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