合わせる顔がない
墓参り。
僕はいつだって両親から離れている。
だって、僕はタエちゃんなんて人知らないから。
「今年も来てるんだ」
離れた僕の隣に一人のお姉さんが居た。
「うん。今年も飽きずに来ているよ」
「そっか。そっか」
お姉さんはため息をついてこっそり物陰から僕の両親を見守る。
二人ともこの日が近くなるにつれて口数が少なくなるし元気もなくなる。
おまけにそれが墓参りが終わっても続くんだ。
しばらくの間。
「いい加減に会ってくればいいのに」
僕の言葉を聞いてお姉さんは首を振る。
「どんな顔をして会えばいいのさ」
「別に普通の顔をして会えばいいじゃん」
僕はこのお姉さんが誰か知らない。
「無理無理。合わせる顔ないんだもん」
「だからってずっと隠れているつもりなの?」
お姉さんは頷く。
僕は肩を竦めてため息をつくとお姉さんは笑う。
「あはは。二人にそっくり」
「まぁ、子供だしね」
「そうだよね。あっ、こっちに来る」
そう呟いた途端、お姉さんは慌てて姿を消した。
今年も両親は暗い顔をしてとぼとぼと肩を落として歩いてくる。
「ごめんね。待ったよね」
お母さんの言葉に僕は頷いた。
お姉さんのことを言うつもりはない。
「悪いな。毎年毎年。だけどな。タエちゃんはお前の名づけ親でもあるんだ」
お父さんの言葉はもう聞き飽きた。
だからこそ、お姉さんの事を二人に伝えるつもりはないんだ。
「本当。どうして……」
お母さんが何とか涙をこらえる。
お父さんが優しく背中を叩いた。
「どうして、自殺なんか――」
うんざりとした空気の中で僕達は車に向かう。
車のエンジンが動き出し、僕は一年に一度しか来ない場所からどんどんと遠くなっていく。
あのお姉さんが物陰からこちらを見ていたけれど、僕はそれを両親に伝えるつもりはなかった。
「また来年ね」
僕の声は車の中でも誰にも聞こえないだろう。
だけど、きっとそれでいいのだと思った。




