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スパルティア〜未来から来た鬼教官に世界の命運を背負わされました〜  作者: けやきっこ


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1/2

1話 その名はスパルティア

時は21✗✗年————とある研究施設にて。


その中央に据えられた起動装置を囲む、5体の異形。

「……覚悟はいいな」

頷くでもなく、全員が鋼の意思を示し合わせる。


「チーム・スパルタ。状況開始。」


時空をつなぐ装置が、いま、まばゆい光を放ちながら起動する。


「見つけるぞ…必ず」




時は現代へ————




敵チーム「そらッ」

バレーボールの授業。相手チームのサーブが放物線描く。その行先には、一人の眼鏡をかけた小柄な少年。

チームメート「行ったぞ聡汰!」

聡汰「芸のない…キミのサーブはもう”解いた”」

少年は眼鏡をクイと整える。

聡汰「軌道は鉛直下向きの重力を受ける放物線——すなわち、x(t)=v0cosθt,z(t)=v0sinθt−21gt2。これに空気抵抗とマグヌス力を考慮すれば……Q.E.D.(証明終了)。成功確率99.9%——」

難解な方程式を披露されれば、周囲の人間も「もしや」という気がしてくる。


聡汰「パーフェクトレシ〜〜ゔッッ」


————見事に顔面直撃。


彼の名誉のためにいえば、計算は完璧であった。ただうっかり、自身の運動神経を失念していただけで————

「これで8連続得点だ!」

「全部聡汰のレシーブミスで!」

「どんだけ運動神経悪いんだよアイツ!」

どっと笑いが起こる。


聡汰「フッ…初速度の見立てを誤ったか…次こそは…」

強がりの笑みを浮かべつつ、ゆらりと立ち上がる聡汰。

チームメイト「おい聡汰!いい加減にしろ」

しびれを切らしたチームメイトが声を掛ける。

チームメイト「これ以上点をとられるわけにはいかん!俺達でカバーするからもう下がってろ!」

聡汰「うッ……」

そんな中、体育館のトラス梁から一連の様子を俯瞰している黒い影がいた。

??「…………」



(屋上、昼休み)

聡汰「これだから体育は嫌いなんだ。」

ドカッと腰を下ろす聡汰。昼休みの屋上は彼のお気に入りの場所だ。

聡汰「まっ、いいけど、ボクには知能ってやつが備わってるからさ」

フフンと負け惜しみを垂れる聡汰。いつものように本を読み始める。

聡汰「人肥えたるが故に貴からず…運動神経なんてもので人の価値は測れないよ」

??「なるほど、たしかに頭でっかちだ」

聡汰「!誰が頭でっかち…」

上からの声にとっさに反応する聡汰。

聡汰「!?」


給水塔の上に、異形がいた。


背丈は50cmあるかないか。その小さな体躯には不釣り合いな、オフィサースーツとマントに身を包んでいる。肩のエポレットのデザインがやや大げさに映る。胸には複数の記章が光っている。

サングラスをかけているため確認できないが、その奥には鋭い光を感じさせる。


————「異形」は、なにもそうした体格や服装を指してのことではない。

また、それに尻尾や獣耳が生えていたのを指してのことでもない。


質感だ。それは明らかに、人間としての、有機物としての質感を持っていなかった。

言うならばそれは————ぬいぐるみのような生き物だった。


くるくると華麗に、シュタッと着地する異形。

聡汰の脳は、いまだ目の前の現実に理解が追いついていない。

異形は何やら可愛らしいサイズのメモ帳?を見つつ、聡太を品定めする。

??「立花…聡汰か」

聡汰「!」

ピンと何かの粒を指で弾き、パクリと口にする異形。次の瞬間にはそれをフーセンガムの要領でぷーっと膨らませ――

ある一つのボールの大きさに形を留めた。

聡太「!?」

異形は、パシン、パシンと何やら見覚えのある動作でボールを下に撃ちつけている。

聡汰(え…?なんだアレ…?てゆうかいま、口からボールを…?)

異形は予備動作を終え、スッとボールを前にかざす。

そこから先は、流れるようだった――



スパアアアアン



聡太「うわああああ」

高速サーブが放たれる。すんでのところで躱す聡太。

??「………!」

予想外といった反応の異形。ふしぎのボールは、吸い付くように主人の手に戻ってくる。

聡太「い、い、いきなりなにするんだお前…!?」

??「…………」

なにか腑に落ちていないのか、いぶかしげにこちらを見ている。

そしてまた、例の予備動作を始める。パシン、パシン。

聡太「おい!!話を……」

スパアアアアン

聡汰「だああああああ」

再度放たれる白い閃光。転がる聡太。


聡太「いつつ…な、なんなんだ、アイツ…!?」

事態が飲み込めず這いつくばる聡太。

??「……なぜ避ける?」

聡太「!」

ゴゴゴゴゴ――……

気づけば異形は、聡太の前で仁王立ちしている。

聡汰は圧に押され、ただ見上げることしかできない。


??「………!」

突如、何かに気づいたのか、背後の太陽を一瞥する。

??「………」

聡汰に向き直り、何やら思案している様子。

すると今度はゴソゴソと懐をあさり、スペアと思われるサングラスを取り出した。大事なものなのか、それをじっと見つめ、なにやら逡巡している。

??「……………チ」

スッとスペアを聡太に差し出す異形。



聡太「陽射し気にしとらんわ!!!」



??「!?…なんだ…?何が不満なのだ…!?」

聡太「ハア…ハア…お、お前…い、一体なんなんだ…!?キ、キメラか!?」

息を切らしながら、ようやく質問の機会を得る聡汰。


スパルティア「……我が名はスパルティア。弱きを正し、強きを授けるもの」


回答がいっそう謎を深めることもあるのだと、聡太はこのときはじめて知った。

スパルティア「先刻の授業たいいく、見ていたぞ」

聡太「!?」

スパルティア「吾輩も忙しいのだがな…あれほどの”活躍”を見せられては、放ってはおけまい…」

わなわなと震えているスパルティア。

スパルティア「立て聡汰!昼休みが終わるまでにあと100本はできる!!」

”臨戦態勢”に入るスパルティア。

聡太「待て待て待て待て。意味がわからないよ!結局お前何なんだよ!?」

スパルティア「…意味も正体も知る必要はない。為すべきことが同じなら…」

聡太「は!?なんだよ為すべきことって…」

スパルティア「強くなることだ!!!」

スパアアアアン

聡太「ぼふぁッ……!」

特訓再開。容赦ないサーブが聡太に直撃する。

スパルティア「休んでいる暇はないぞ!次だ!」

悶えている聡太。次の支度をするスパルティア。

聡太「………ッ(なんなんだコイツ…話が通じないぞ…逃げないと)」


バンッ!

生活指導担当「クォラアアア、誰だ屋上で騒いでいるやつはァ!!」

聡太「!」

轟音を聞きつけた生活指導担当の教師がやってきた。

聡太「(………助かった…!)大変だよ先生!あそこに不審者が…」


ガラーーーン


そこには何もいなかった。

聡太「!?あれ!?いない…!?」

ポンっと肩に手が置かれる。

生活指導担当「……安心しろ立花。不審者ならたった今、見つかった……(ゴゴゴゴゴ)」

聡太「え゛」

聡太にとっては散々な日であった。

聡太「ボクじゃないのにーーーー」



(放課後の教室)

キーンコーンカーンコーン♪

聡汰(まったく…なんて日だ。反省文まで書かされて…カキカキ)

クラスメートたちは各々、帰り支度を始めている。

聡汰(それにしても…アレは一体…)

聡汰は昼休みの不思議を思い返している。


そこへいかにも活発な少年が男社会の便たよりを届けに来た。

クラスメート「なあ2組のヤツらがまたフットサルしよって」

クラスメート「あ、今日開放日か[体育館の]」

クラスメート「いいけど人足んなくね?[今日カイト休みだべ?]」

クラスメート「あ〜そうだった」

威勢のいい声は、聡汰の耳にも当然届いている。


クラスメート「暇そうなやついねえの?」

クラスメート「聡汰は?[帰宅部っしょアイツ]」

ピクリと反応する聡汰。つい期待して聞き耳を立ててしまう。

クラスメート「バッカ、足手まといになるだけだろ」

ぐさっ。

クラスメート「キーパーならわんちゃん?」

クラスメート「たしかに」

クラスメート「スーパーセーブかましてくれっかもよ?顔面でw」

ぐさっ、ぐさっ、ぐさっ。


聡汰はヌラリとした動きで帰ろうとする。

クラスメート「あ、聡汰、このあとフットサルすんだけどお前も…」

聡汰「キミたちとちがってボク、暇じゃないから!!!シャーーー」

悪態をつきながら教室をあとにする。

クラスメートたちは流石にきまり悪そうにしている。




(放課後、夕焼けの土手)

聡汰は川沿いの土手で寝そべりながら本を読んでいる。これも彼の日課だった。

聡汰「ハァ……」

何かとエネルギーを消費する1日だった。


ため息を付く聡汰の足元へ、野球ボールが転がってくる。

聡汰「!」

少年たち「すいませーん、取ってくださーい」

元気いっぱいの依頼についボールを手に取ってしまう聡汰。

聡汰「……」

何かを思い出している聡汰。


「どこ投げてんだよ」「どうして何回言ってもできないんだ」————……


聡汰は近くのちょうどよい場所にボールを置き、きまり悪そうに立ち去る。

子どもたちは「?」という顔をしている。


トボトボと歩いている聡汰。

??「それでいいのか」

聡汰「!」

いつの間にか、聡汰の背負っていたスクールバッグの上に、スパルティアが腰掛けていた。

聡汰「わああぁ!!」

聡汰はとっさにスクールバッグを放り投げる。スパルティアは華麗に宙を舞い、スクールバッグの上に着地する。

聡汰「…お前…昼間の…!」

ジリと後ずさる聡汰。

スパルティア「………」

スパルティアは足場にしたバッグをジーッと見ている。


チーー


思春期のプライベートなどお構いなしに、スパルティアはバッグを開封する。

聡汰「ばっ…おい、やめろ!」

そしておもむろに中身ひみつを覗き込む。


スパルティア「………」


なにかを発見した様子のスパルティア。


聡汰「お、おい!いい加減に…」

ピンと例のガムを口に入れるスパルティア。クチャクチャクチャクチャ。


スパルティア「やはりお前には…我輩が必要だ……」


またしてもプーッと”想像”をふくらませるスパルティア。今度のそれはボールではない、より複雑で、有機的な————

神々しい一騎のペガサスを成した。

またがるスパルティアの姿はいかにも様になっている。

聡汰「ッ〜〜〜〜」

シュッ!

畳み掛けるようにスパルティアは聡汰をお縄にかける。

聡汰「!?な、何を!?」

スパルティア「ゆけ、レオニダス」

聡汰「うわああああああああああ」

天駆けるレオニダス、拉致られる聡汰。


裏山の中腹あたりに着陸する。

聡汰「な、な、何が起きたんだ…こ、ここは…?」

ペガサス酔いをしている聡汰。クラクラしている。

スパルティア「立て、聡汰……」

聡汰「!?」

スパルティア「続きを始めるぞ」

スパルティアの前のめりには、もはや驚かなかった。驚いたのは、山中の生い茂る木々の中に、まるでその一区画だけえぐられたかのようにバレーボールコートが用意されていたことだ。

聡汰「〜〜〜っ!なんだよ、これ…!?」

スパルティア「急造だからな…もう少しこだわりたかったが…」

反対側のコートへ移動するスパルティア。

「お前を叩き直すには十分だ」

聡太「!?お前…何がしたいんだよ!?なんでボクにこんなことさせるんだ…!?」


ポーン。


スパルティア「強くすると言った!!」

スパアアアアン!!

聡太「うわあああああ」

襲撃が再開される。

聡太「ヤバいよコイツ…逃げなきゃ…!」

とっさに逃げようとする聡太。しかし…

聡太「!?」

気づけばコートは、数多の”獣”に囲まれていた。そしてそれらがこの山の、否、地上の獣ではないことは一目瞭然だった。

いずれも”もののけ”と呼ぶにふさわしい、不自然に凶暴なナリをしている。

ただし、見えない結界が張り巡らされているのか、コートを侵略してくる気配はない。

まるで彼らは、”観客”のようだった。


スパルティア「逃げる…?勘違いするなよ、聡太。」


いつの間にかネットポールの上に立ち、聡太を見下ろしているスパルティア。


ぷうーー ぷうーー ぷうーー ぷうーー ぷうーー ぷうーー


その口からは、まるで海底の熱水噴出孔のように、先の”もののけ”が産み出されていた。

今日の理不尽ふしぎの要因は、つくづくこの生き物にあるらしかった。


スパルティア「いまここは、お前にとって最も安全な場所なのだ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。


スパルティアは、自己矛盾にまみれた圧を放っている。

スパルティア「構えろ!!!」

聡太「……!!(ビクッ)」

思わず身構える聡太。ポールから降りてくるスパルティア。

聡太(…なんだよこの状況…まるで悪夢じゃないか)


スパアアアアン!!!


聡太「ッウ……!!」

攻撃が開始される。

スパルティア「さあ、強くなるぞ。聡太…」



(数刻が経過)



スパルティア「どうした聡太!もうギブアップか!?」

聡汰「ハア…どうして…ハア…ボクが…こんなこと…」

聡汰は肩で息をしながら這いつくばっている。

スパルティア「………」

聡汰「ただ…授業で…失敗しただけで…」

スパルティア「嘘をつくな」

聡汰の前にバラバラと本が降ってくる。

聡汰「!」

顔を上げると、いつの間にかスパルティアが目の前に立っている。

スパルティア「これはなんだ?」


『スポーツの方程式』

     『物理学者が教える球技』

           『運動神経の科学』————


落とされた本は、先ほどまで聡汰のスクールバッグに入っていたもの。

それらが何度も読み返されたであろうことは、本の()()()具合から明らかだった。ところせましと貼られている付箋は、目印というより苦労の痕跡だった。

聡汰の恥部であり本心が、そこにはあった。


聡汰「……そ、それは…成績のた…」

スパルティア「もう一度言うぞ」

聡汰「!」

スパルティア「()()()嘘を付くな」

聡汰「……ッ」


スパルティア「強くなりたいのだろう」

聡太「……無理だよ…」

スパルティア「なぜだ」

聡汰「センスがないんだよ!!わかるだろ!?もう何百回やったと思ってる!?」

つい怒りが込み上げる聡汰。

スパルティア「……ああ…そうだな。」

聡汰の横を通り過ぎるスパルティア。


グイ(聡汰を後ろから引っ張る)


スパルティア「あと何万回やる?」

聡汰「………ッ!?」




特訓を再開する二人。

「腕が下がっているぞ!!」

「重心が高い!!」

「ボールから目を離すな!!」

それでもまだ、一向に成果は出ない。



這いつくばっている聡汰。体力は限界に近づいている。

スパルティアが目の前に立ったのが、ヌッと現れた影でわかる。

聡汰「もう…いいよ。これ以上は…」

スパルティア「………」

聡汰「お前だって…無理だと思ってるだろ…」

聡汰の苦い思い出————「どうして何回言ってもできないんだ」————……

聡汰は、”あの目”が忘れられない。

聡汰「惨めなんだよ…」

スパルティア「………」

聡汰「頼むから…帰れよ…!」

スパルティア「………」


聡汰「帰れってば!!」

バシッ


たまらず手で追い払おうとした聡汰。

誤ってスパルティアのサングラスをふっとばしてしまう。


聡汰「!?」


そこにはひとりの少年を信じて待つ、寡黙で力強い目があった。


スパルティア「続けるぞ」

サングラスを広い、粛々と定位置に戻るスパルティア。

聡汰(…なんで、そんな…)

苦しいような、眩しいような、そんな表情を聡汰はしている。


聡汰「………ッ」

聡汰は立ち上がる。


特訓再開。

何度も、何度も、何度も、繰り返す。

そしてとうとう——

聡汰「あァああああぁあぁあ」




パンッ




きれいなレシーブが決まる。

聡汰「で、できた…」

脱力して膝から崩れ落ちる聡汰。

聡汰「できた……ッ!!!」

これまでに感じたことのない、何かアツいものが込み上げてくる。


スパルティア「よくやった、聡汰」

歩み寄るスパルティア。

聡汰「!」

スパルティア「だが…これからだ」

そう言って空を見上げるスパルティア。

キイイイイイイイイイイ。空気を裂く音が聞こえる。

聡汰「!?」

スパルティア「時間通りだな」

危機を察知する聡汰。空を見上げると——



スパルティア「隕石だ」



燃える隕石が二人の場所めがけて降ってくる。

聡汰「は…?」

スパルティア「己を磨き続けろ、聡汰」

シュパッと飛び立ち、裸一貫で隕石に向かっていくスパルティア。

スパルティア「そうすれば…」


ドッパーーーーーーーーーーン!!!!


レシーブの要領で隕石を宇宙そらへ返すスパルティア。

災厄は瞬く間に、煌めく誰かの流星ゆめとなった。


スパルティア「大事なものを守れる」

聡汰「…………(パクパク)」


(名はスパルティア。彼と出会って————ボクの人生は無茶苦茶になった。)


〜2話へ続く〜

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― 新着の感想 ―
「想像を膨らませる」という言葉をそのまま能力としてつかえるようなスパルティアの設定がとてもワクワクしました。親しみのあるボールからペガサスまでこの一話でも幅があって、これからの能力活用の広がりが楽しみ…
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