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第9話 魔王令嬢のお部屋事情

「アリアスー、いるかーい」



 部屋で爪を瓶に詰めてた途中、勇者が玄関ノックしてきやがった。

 土曜の朝っぱらから慌ただしーな。



「おう勇者。おめぇノックじゃなくてチャイム鳴らせよ」

「チャイムって君、軒下にぶら下げた教会の鐘っぽいやつ?」

「に決まってんだろ」

「近所迷惑過ぎるし、どう鳴らすのよ」

「拳」

「……お邪魔します」



 こいつツッコミ諦めやがった。



「つーか何で急に来たんだよ。女の一人暮らし部屋にズカズカとよー」

「ごめんて。国王から『ちゃんと生活できてるか視察して来い』ってさ」

「まあしゃーねーよな。アタシって魔族だし、監視対象ってことか」

「……視察ついでに、匂いの付いた物も献上させろってさ」

「違った。性欲に忠実なだけだった」



 国王のおじたんを狂わせちまったか。アタシも罪な女だぜ……


 それはそれとして、性癖歪んだ国王を更迭する法はこの国未実装か?



「じゃあ入らせてもら――なんか君の部屋、異国情緒に溢れてるね……?」

「そか? フツーの部屋じゃね?」



『デッドパレス』二階、四六四九(ヨロシク)

 六畳一間、台所と風呂トイレ付。


 築八十年、最寄りギルドまで十分。北向き。

 家賃は銀貨二十五枚(アタシはオーク肉支払い)


 割と広さも住み心地もちょうどイイんだな、これが。



「まずこの床材なに? 木材ではなさそうな……」

「畳」

「タタミ?」

「そ、畳。藁で作った床」

「は、初めて聞くね……これも魔王軍の文化的建築?」

「知らねぇのかぁ? てかテメー靴脱げよ。土足厳禁だぞ」



 魔族社会じゃ伝統的な『ボロア・パート』建築なんだけどな。



「窓のとこにある扉は?」

「障子」

「ショウジ? の白いのは何?」

「和紙」

「あっちの部屋の仕切りみたいなのは?」

「ふすま」

「な、なにも分かんない……」



 マジで勇者のヤツ、初めて見たって反応だな。

 こいつ親父と戦うまであちこち旅してる筈なんだが、そんなこれ珍しいのか?



「本当にどこの文化圏発祥のお部屋なのさ」

「知らね。親父の部屋がこれだったから、近づけてみた」

「魔王の部屋?」

「ん。地元だとこれがフツーなんだと」

「地元どこよ?」

「所沢」



 聞いても勇者はピンとこない顔してた。

 ま、アタシも所沢って地名しか知らないけーど。



「ま、テキトーに座れや。茶でも出してやんよ」

「あ、ああ。お気遣いありがとう」

「座る時注意な。アタシの下着そこら辺に落ちてっから」

「ちゃんと片づけなさいっ!」

「ん? そこゴキ・スライムいるから叩いといて」

「ちゃんと掃除してるの君ぃ!?」



 ◆



「魔王が、元奴隷!?」



 茶出した流れで親父の話したらやけに食いついて来たな。

 ま、殺し合いしてたヤツの過去ぐらい気になるか。



「なんか朝から日ぃ跨いで夜遅くまで仕事させられてたとか」

「それ人間としてどうなの?」

「働き過ぎて死ぬやつ多かったってー 」

「ウチの国も奴隷制あるけど、そんなコトしたら雇い主が一発牢屋行きだよ……」

「だからなんかな。親父なんか四天王や側近にゃよくキレてたぜ?」



 幹部会とか親父キレまくってたな。



『テメェら現場のこと何も分かってねぇな脳筋共ォ! 侵略も領地整備も工数が割りに合ってないでしょうが!』

『も、申し訳ありません魔王様! すぐに現場指揮の将校達に改善と制裁を――』

『魔王の炎魔法オラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』

『ぎィィィィィィィィィィィ!?』

『中間管理職に圧かけんじゃねェ!! 一番苦労してンのそこなんだよ!!!!』

『で、ですが監督責任が……』

『お前らは武力昇進してっから現場分かってねぇだけだろゴルァ!! 物理パワハラぶるァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!』

『ご、ごべ、なざ……』

『中間管理職全員に有給半月取らせろ! その間てめぇらが現場指揮な!!』

『ぎょ、御意ぃ』

『ま、まおうざま……人手不足のどごろは?』

『オークが孕ませた人間の子供(ヒトガキ)で補充しろォ!!』



「――って感じで、ウチの親父も案外下からの人望厚かったんだぜ」

「ちょいちょい、最後最後」

「魔王軍だし、ご愛嬌」

「済まされるか外道」

「滅んだんだし時効で良いだろ時効で」

「だから君が滅ぼした元凶なんだよ」



 てへぺろ。



「って感じかな。後はオメーの知る魔王軍と変わんねーよ」

「そっか。意外な話が聞けて面白かったよ。ありがとう」

「おうよ」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……ところで、暇じゃない?」

「おん、暇だな」



 いま気付いた。

 コイツと親父関係のコト以外で話題ねーわ。気まずっ。



「なにかする? ポーカーとか、ドラゴンレースとか」

「ギャンブルばっかじゃねぇか」

「旅の楽しみがそれぐらいしかなくって……」

「色狂いパーティで一人だけ性欲死んでたら、カジノ遊びぐらいしか楽しみねーか」

「……図星って痛い」

「そしたら暇な時にする遊び方がある。おまえ、風魔法使える?」

「一応低級のは……」



 勇者に指示して、アタシの顔に風魔法を吹かさせた。

 強さは大体、竜の寝息程度。前髪が浮くぐらいの強さ。


 風に正面から当たってこう言うんだ。



「ワレワレハ、チキュウジンダ」



 ビヨビヨした声で親父直伝のギャグをぶっ放した。



「何その詠唱?」

「知らん。夏に親父がよくやってた」

「……」


「「ワレワレハ、チキュウジンダ」」



 とりあえず暇過ぎたから、日が暮れるまで二人でやってた。


 ちなみに勇者は風当たり過ぎて次の日に熱出したらしい。

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