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第8話 始まりのアホカリプス

 朝日課のレディオ体操帰りと釣りの帰り。


 通りがかった畑ん中で、貴族の娘っ子が絶叫してた。



「プリンがねぇ! プリンがねぇですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



 服は泥だらけ、目は血眼。そんで声がやかましい。

 発狂する小娘はグリンと首向けて、アタシの方に這い寄って来た。



「そ、そこのお姉さまっ! 野生のプリンが生息してる場所どこかご存じ!?」

「落ち着け小娘。まずプリンは自然界にいねぇ」

「ほげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」



 小娘、膝から崩れ落ちる。



「天然のプリンは、絶滅したッ……!?」

「最初から自生してねーよ。人工物だわアホ」

「あ、養殖されてますの?」

「料理だよ。なんで生命前提なんだよ」



 コイツはアホだ。天然記念物に違いない。

 ってことでこの面白くてやかましい小娘、拾ってみた。事案とか関係ねー。


 近くの『こどもギルド』食堂でプリン買ってやった。

 勿論ツケはあの塩顔勇者で。



「んん~! やっぱりプリンはバチうめぇですわぁ~!!」

「そのなりで語彙に知性も品性もねぇんだな」

「こ、これが『お嬢様言葉』ではありませんの!?」

「あんまいねーぜ? マジお嬢様がお嬢様言葉っつーの」

「く、詳しいですわね……もしや貴女も高貴な身分でして?」

「あァーまあそうというか、そうだったっつーか……ま、元令嬢だよ」



 名目上は魔王の一人娘で魔王令嬢だもんな。アタシに世界一似合わん称号だけど。



 ちなみにアタシの場合は言葉遣い含めて、躾全般は親父が放棄した。

 言うこと聞かなかったし、気に入らなかったらとりあえず頭に齧りついてたもんなぁ~。

 側近の角と頭蓋骨に歯形つけまくったのも、今じゃ良い思い出だなぁ~。


 城に来たマナー講師も全員服ひん剥いた後にサンバ踊らせながらリリースしたっけ。



「つーかお前、貴族の娘だろ? こんなとこに一人で来て大丈夫かよ」

「そこのお屋敷で朝食を食べたところだったのですが、デザートのプリンがなくて……」

「それで抜け出して畑で探してたんか? 甘未にアグレッシブ過ぎだろ」

「けれどそろそろお屋敷に戻りませんと。お手洗い場に従者が来てしまうかもしれません」

「トイレ行くていで飛び出したのかよ」

「ちゃんと『デッケェお花摘んできますわ! ラフレシアですの!』って伝えたので時間は多少稼げましたが……」

「なんも隠せてねーよ。チョイスが全部最悪だわお前」

「ラフレシアよりトリカブトの方がよろしくて?」

「品種は関係ねぇ」



 コイツに上品っての叩き込むより、サキュバスの性欲枯らすのがまだ簡単だろ。

 国王たんの前で鼻ほじるアタシが言えた口じゃねーけど。



「ところでお姉さまはこれから何を?」

「山でなんか捕まえに行く。腹減ってっから」

「そちらのカゴのお魚も食べるんですの?」

「いや、コイツは餌用の魚。テキトーにさっき釣ってきた」

「変わったお魚……わたくしの領地では見ない品種ですわぁ」

「海の魚だしな。てか人間界じゃ出回ってンの聞いたことねーな」



 まず食用でもねーしな。



 たしか親父はー、『バラムツ』って呼んでたっけな?


 これ食べるとすげー腹壊すんだよなぁ。

 アタシは食べた事ねーけど、親父が下痢んなってた。



『ま、魔王様しっかりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』

『おトイレ行かせてェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!』

『魔王陛下がお手洗いをご所望だ! この際バスタブでも良い! 早くゥ!!』



 毒見で親父の飯に混入させといて良かったぜ。

 ニアミスだったな~。



「ではお姉さまは、ご自分のお食事よりもわたくしの為に!?」

「気にすんなよ。ガキに飯奢るぐらい魔族でもやる」

「ありがとうございます……この御恩、忘れませんわ!」



 立ち上がった小娘は屋敷に帰ってく前に、ひらっと回ってお辞儀する。



「いつかわたくしの領地に来る機会がありましたら、是非ご馳走でおもてなしさせてくださいまし!」

「お~そりゃ楽しみだなー。気が向いたら遊びに行くぜェ~」

「それまでにわたくしも、お姉さまのような素敵な淑女になってみせますわ!」



「――このジュリエッタ・アホカリプス、必ずや最高の令嬢にっ!!」


 なんとなく破滅しそうな一族だな。


「ま、頑張んなぁー」



 手を振りながらプリン奢ってやった小娘、ジュリエッタは帰ってった。

 途中何回かズッコケて「いってぇですわ!?」って叫んでる声がまだ木霊で聞こえる。



「……アレが当主とかにでもなったら、そこの領地終わるだろーなー」



 あの頭のヤバさ、分かる。なんか将来デッカいことしでかすタイプだ。


 けど悪いヤツじゃねーしな。

 そん時はゲラゲラ笑い切った後に、助けてやらんこともない。

 ま、アタシが今日のこと覚えてたらの話だけど。



「つーかバラムツって人間社会じゃ知られてなかったんだなー」



 誰か腹下さない食い方発見するかもしんねーし、どっか近くで話広めといてやるかー。

 そしたらあの小娘にバラムツ料理でも振舞ってもらえるかもしれねーしな。


 アリアスちゃん、大天才じゃね?



 ※ ※ ※



 ――これが後に、「パンが無ければバラムツを食べれば良いじゃない」と善意で領地を震撼させた大事件。


『バラムツお嬢様騒動』のきっかけとなったのは、また別のお話……

こちらに出てきた『バラムツお嬢様』ことジュリエッタ・アホカリプスは、過去に書いた短編作

「バラムツお嬢様~パンが無ければバラムツを食べれば良いじゃない、と善意100パーセントで頭の弱いお嬢様が申しています~」

の主人公になります。


興味があったら、是非こちらもチェックしてみて下さい♪


▼作品はこちら

https://kakuyomu.jp/works/16818093091115322060/episodes/16818093091115354627

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