第7話 魔女食堂に地下はない(すっとぼけ)
飯の匂いに釣られて森入ったら、知らん家ん中入ってた。
木の中にある食堂みてーな家。
「魔女は薬の調合もするからねぇ。小料理屋を切り盛りする程度わけないのさ」
「ほぇ〜隠居生活かー」
「それがまさか、魔王んとこの娘が来るなんてねぇ。珍しい事もあるもんさね」
魔女の家だった。
年齢三桁魔女ババア(アンチエイジング)がやってる店だった。
カウンターの向こうで魔女が『古民家カフェの女主人』的な格好で料理作ってる。
変なモン出てくると思ったけど……普通にうめぇ!
シチュー、アリゴ、ハンバーグ、オークのスペアリブ、どいつもうめぇじゃんか!!
「さて、お眼鏡にかなったかな?」
「うめェ、もっと食わせろ。次ソースマシマシ」
「舌バカ娘がッ!!」
エプロン掛けの魔女店主は半ギレでピラフ作り出す。豪快に鍋を振り出した。
「てか魔女は討伐対象じゃねーの?」
「魔王軍には入ってないからさね。一応、これでも人類側なものでねぇ」
「200歳越えのババアでも人類判定?」
「舌ァ卸金で擦んぞクソアマ」
ピラフ出して一息つくと魔女は煙草に火ィつけた。
「『魔女会』はいつだって独立的な立場だからねぇ。ま、勇者の坊やに絆されて人間側についたけどさ」
「ほーん、あの塩顔に惚れたのか」
「ほっ!? なっ、何言うんだい! ま、まぁ? 優男な顔の割には気骨あって、嫌いじゃないが……」
「10分の1以下の年齢の人間に発情すんの事案だろー 」
「うっさいわ! 魔女ババアの恋はピュアなんだよ!!」
ちっと見てて痛々しい、って言葉は飯の味に免じて飲み込んでやったぜ。
「そもそもエルフや獣人の奴らだって人間側だろう? 見てくれの変わらん魔女だけ迫害ってのもおかしな話さね」
「けどエルフは森焼かれてっし、獣人は高確率で奴隷にされてんじゃーん」
「……この話一回辞めるか」
「ウチの軍にいたヤツらだって――」
『どこの森行っても燃やされます!』
『「エルフの森焼いたら補助金出るから」って理由で、ついに転居先も事前焼き討ちされました!!』
『獣人に人権をくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! オークみてぇな人間の貴族に買われまくってんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』
『女子供だけじゃねぇ! 「男でもそれはそれで」とか言いやがんだよ!! ねじ曲がりすぎたろアイツらの癖!!』
『もうアイツらが魔族だろ!!!!』
って、被害者の会が転がり込んできたっけな。
『魔王様、どうします……?』
『んー、とりあえず側近……ハーブティーでも出してあげて?』
『何の解決にもなってねぇんだよ魔王この野郎』
「……ってな感じ」
「もう人類が先滅びてろよ」
「仕方ねぇ。アタシらは生存競争に負けたんだよ」
「お前が滅ぼしたせいじゃ!」
悲報、森の魔女にもアタシのやらかし伝わってたみたい。
「ま、お互い色々あったけどさ。これからは人類の良き隣人同士、上手くやってこうじゃないの」
「うぃ……がふっ」
「ウチの常連のオッサンみたいな返事だな……」
景気の良いゲップと子気味良いグラスの乾杯で料理の美味さを伝えた。
「おいマスター、おかわり」
「ああ悪いけど、二杯目から注ぐのはセルフサービス。そこの樽から入れてくれ」
カウンター席から立とうとした途端、こぼしたジュースに足を取られる。
「んぁ、足滑った……」
右足、ズッポリ。床君に風穴開けちった。
「いやあああああ床ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「すまね、コケた」
「どんだけ重いんだよ小娘ェ!!」
「大ジョッキ400杯分」
「200キロ越えじゃねぇかァァァァァァァァ!!」
魔女が穴のサイズ見て、膝から崩れ落ちる。
「ああ、これ敷金戻ってこないぃ、ヨヨヨ……」
「賃貸かよ。ンな事ならしゃーない。壊したしアタシが弁償――」
その時、穴から床の下が見えた。
そいつは地下室。中は酒樽、明らかに醸造中の酒樽が異様な数置いてあった。
森ん中の店にしちゃ、ストックとは言えねぇ分だ。
あと十歳以下の男児の絵、特に裸絵がたんまり置かれてんだけど。
壁と床、樽にまで貼られてんぜ。
「おまえ、アレ酒樽じゃね?」
「ッ……!!」
「密造酒。それと完全に児ポ――」
ダァン!!
息荒らげた魔女が壁掛けの看板引っぺがして、強引に穴を塞いだ。
血走った目でアタシに訴えかける。
「アリアス、絶対……絶対このことは他言すんなよ!!」
「捕まるよ、マジで」
「……ウチの店、週二までならタダで食わせてやる」
「地下なんてなかったぜ」
今日の戦績! 魔女の弱み、握ったった!!




