第6話 レディオ体操
『レディオ体操はじめー』
ちゃんちゃららん、ちゃら、ちゃんちゃららん。
朝っぱらからガキ共と体操してる。
音響魔術で広場に流れる『レディオ体操』っての毎朝すんのがこの街の習慣らしい。
暇だったから参加してみたけど、意外に楽しい。
『両手を前に出してー、歩く鎧のポーズ』
『いち、にー、さん、しー』
「ごー、ろく、しち、はち」
『膝を上げてー、オークの息子をへし折る動きー』
『いち、にー、さん、しー』
「ごー、ろく、しち、はち」
『空中で三度回し蹴りして、巨人の顎を粉砕するモーションー』
『いち、にー、さん、しー』
「ごー、ろく、しち、はち」
――体操ってか、戦士のトレーニングじみてたな。
途中、数分ぐらい空中浮かんでたし。
良い汗かいたとこで曲は終わった。
けっこう疲れたのに、ガキ共はぜんっぜん元気だわ。
「オメーら、毎朝こんなんやってんのかー?」
「そだよ~! 参加するとスタンプ一回押してもらえるの~!」
「スタンプ貰うと何かあんのか?」
「五個集めると『こどもギルド』でお菓子とソフトドリンクもらえるの!」
「マッジかよ!? 通うぜ今日から!!」
ガキんちょと話してっと、前で踊ってたレディオ体操のお姉さんが手招きしてきた。
「はーい、みんなスタンプ貰いにおいで~!」
『はぁーい!』
流れに乗ってアタシもお姉さんの近くへ。
よく見ると服の下はバッキバキの腹筋してる、細身のスラッとしたお姉さんだった。
「アリアスちゃんは初めてだっけ?」
「うっす。レディオ体操ビギナーのアリアスちゃんだぞーぅ」
「そうなのね~。じゃ、腕出してちょうだいっ」
ゴゴゴゴゴゴゴ――
ちょっと待てい。お姉さん? ステイステイ……なんか馬鹿デっカい鈍器握ってんだけど。
金槌……どころじゃない。巨人用の戦鎚取り出してんだけど。
「なんそれ。アタシ潰されんの……?」
「スタンプよ~。ほら、触れるとスタンプが体に刻まれるの」
「肉体に直刻みすんの? こんな凶悪なモンをガキの身体に毎朝刻んでんの?」
「最初はみんな怖がるけど、すぐ慣れるわよ」
刻むって傷? 地面の穴か?
ニッコニコなとこ悪いけど、殺意しかない武器持ってるお姉さんに近寄れねーって。
「も~、アリアスちゃんまだぁ? わたし先に押してもらうよ~」
アタシを抜かしてガキんちょ達がスタンプ貰いに進み出した。
みんな嬉しそうに右腕差し出してる。
「はい、はい、はい、はい」
餅付き感覚でお姉さん戦鎚振ってる……人間のしていい膂力じゃねーよあれ。
てかさ……なんか、文字通り刻まれてんのよ。紋様、ガキ共の体に。
んで、ちょっとづつ活性化してんだよ、魔力。スタンプで強制的に。
あれ肉体強化用の術式なんだよ。魔族も使わないやべー魔術。
「終わったらみんな、『こどもギルド』に行っておいでね~」
『はぁーい!』
「たくさん体操してたくさん食べて、みんなも一流の冒険者になりましょうね~」
……これ訓練だろ。
冒険者のていでソルジャーか何か育ててんだろ。
よく考えたら人間の子どもが空中で回し蹴り三回してる時点でおかしかったわ。
魔族でもあんな動きできねーよ。
「それとみんなにお知らせがあります」
「お姉さん、用便願います」
「行ってらっしゃい。二分で戻って来なさい」
ほぼ刑務所じゃねーか。
「明日はギルドがおやすみなので、次回は明後日になります」
『はぁーい!』
「良い返事ですね、冒険者ナンバー四〇二番から四一七番」
名前もないのかよコイツら。
「魔王軍が滅んでも、まだまだ悪い魔族は残っています。アリアスちゃんみたいな優しい人ばっかりじゃないから、くれぐれも気を付けるようにね」
これでアタシ敵視されてないの奇跡か?
ここで一斉に攻撃される罠じゃないよな。
「最後にいつものご挨拶よ~」
――ダッ。
ガキ共が一斉に横一列に整列した。もう少年軍隊にしか見えねェ。
「我ら命が砕けても」
『怨敵殲滅の意志消えず』
「たとえこの身が滅びても」
『第二第三の継承者が賊徒を屠る也』
「はい、よくできました。じゃあ解散です!」
『お姉さんバイバーイ!』
解散するとガキ共は一目散に『こどもギルド』の店に走ってった。
……ちょっとドン引きして動けねんだけど。
「うっふふ、懐かしいわねぇ。私にもあんな時代があったものなのよ」
「ほぇー、お姉さんもレディオ体操出身?」
「勿論よ~。毎日欠かさずやってたわぁ」
そこらの修行と大差ねぇってこれ。
「――あの子達の内一人が次の私になる……さぁ、『レディオ体操のお姉さん』を継承するのは誰になるかしらぁ?」
……魔王、アタシらのせいでとんでもない化け物生み出してたかもしんねぇ。
人類、ちっと怖い。




