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第5話 川釣りすっか!

 蟹が三匹、魚が十六匹、対海竜駆逐艦マグロドンが一隻。

 今日のアタシが釣り上げた獲物ども!



「いやぁー釣れるなここぉ〜」



 食いモンただで獲れるわ、暇も潰せるわでちょうどイイ釣りスポットだった。


 ……けど釣り針に野生のオッサンが引っかかったのは想定外だわ。



「……何してんのオッサン」

「釣られといて悪いけど、話は下ろしてからにしてくれる?」

「めんどい。続けろ」



 オッサンはボロシャツ姿で翼と黒い角あり。多分同じ魔族。

 プラプラ竿で揺らされてんのに、屋上で煙草吸ってる中間管理職みたいな顔で話し出してっし。



「ま、詰まるところは流浪者さね」

「職でも川に流れてたのか?」

「ちっと仕事でヘマこいてな。表を歩けねぇ事やってた手前、こうして山奥でひっそり生きてんのさ」

「なるほどな。ま、そういうことならこっち座れよ。魚食うか?」

「有難なお嬢ちゃん……ところでその戦艦はなに?」

「気にすんな。ただの戦利品だ」



 魔族のオッサンを降ろして、適当にブルーギル渡して座らせた。

 二人で魚の丸焼き食いながら雑談だ。



「今じゃ俗世の事も分かりゃしねぇ。こんな寂れた男にはお似合いな余生かもしんねぇけどな」

「へぇ……じゃあその腕に巻いてんのは?」

雷魔術式(スマート)腕時計(ウォッチ)

「ボロシャツの下に来てるTシャツは?」

「先週のダンジョンアイドルイベで買ったグッズ」

「十分俗じゃねーか。 獣より山降りてんだよ」



 オッサンいわく「夜に帰ってくればノーカン」らしい。

 親父のパンツのゴムぐらいゆるゆるだな。


 ……ん? ゆるゆる、中間管理職、仕事から逃げ――あ。



「……オッサン、ウチの脱走兵じゃね?」

「え?」



 くたびれてて分かんなかったけど、見覚えあるわ。

 コイツ、ウチの幹部会に昔出てたヤツだぞ。城に肖像画もあった魔族じゃんか。



「お前……夜逃げした前任の四天王だろ。『竜喰らい』のカリュオス。略してカリュおじ」

「えっ……あ、あぁ! お、お嬢!?」



 カリュおじもやっとアタシの事思い出したらしい。

 途端に涙浮かべてんよ。お互い完全に親戚と久々に会ったテンションだよ。



「こ、こんなに大きくなって……いや、それよりなんでこんなとこに」

「あー、魔王軍滅んだ。てか滅ぼしたんだわ、アタシが」

「……マ?」

「マ」



 カリュおじ、フリーズ。

 今の内にブルーギルもーらい……なんか泥臭ぇな。



「まあ、色々あったんだよ――」

「お嬢、やらかしたんすね」

「……」

「多分、寝起きの悪さですよね」

「……皆まで言うな」



 閑話休題。



「え、というか魔王軍滅んだならお嬢は今なにを?」

「勇者に寝返ったー! 人間の村に住んでんだー」

「魔族でも、住めるんすか?」

「一応アタシ、人類の英雄ぞ? 住民票もあったし」

「……もう山降りれんの俺?」

「いんじゃね? 山暮らしでも、街降りても」



 言うとカリュおじ、男泣きし始めちゃった。

 昔からこのオッサン、涙腺緩いんだよなー。



「うっ、ぐっ……」

「ま、辛かったよな」

「……違います。このブルーギルくっさくて」

「あ、ごめ。全部煙そっち行ってた」



 とは言うものの、煙消しても泣き止まなねえ。


 たく、しゃーねーな。



「ほら、これで涙拭けよ」

「うぅ、ありがとうございますお嬢……なんすかこのハンカチ?」

「邪龍の鱗。フッ、返さなくて良いぜ」

「まぶたァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 ザリッと粗い音が河川敷に響いた。

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