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第4話 職なしシスターと実家なし娘!

 人間村に来て少し経った。

 生まれてから魔王城生活だったしどうなるかと思ったけど、意外とすんなり慣れたわ。

 アタシ、環境適応最強生物じゃね?



「助かったわアリアスちゃん。はい、これお礼ね」

「おばちゃんあんがと〜」

「マンドラゴラのお惣菜は早めに食べてね~」



 料理とかできないから、飯は弁当屋で調達。

 この前のトサカ頭ズをぶっ飛ばしてから住民に気に入られて、あちこちでオマケ貰ったりしてる。


 定期的にアイツら来てブン殴らせてくんねーかな?



「そこの可愛い可愛いお嬢さん……だずげで」

「……んぉ?」



 道路の端っこに行き倒れの女がいた。

 ボロッボロの服を涙と鼻水で汚してら。



「酒と毛布を下さい……できたら交通費も下さい」



 厚かましいなコイツ。賊か?



「けど賊にしちゃ弱そーだなぁ。シバかれた後か?」

「賊じゃないもん! 僧侶だもぉん!! ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!!!」



 ◆



 近くのテキトーな空き樽に座らせて、アタシのマンドラゴラの惣菜を(渋々)分けてやった。

 泣きながら美味そうに食ってるから、今回だけはアリアス温情あげたる。


 よく見たらコイツってシスターじゃん。清貧超えて極貧すぎる身なりで分かんなかったわ。



「あ"ぁ"ー生き返るゥ。アリアスちゃんありがとぉ」

「おうよ。けど初対面のシスターがよくアタシに助け求めたな」

「余裕なかったし、魔族でも良い人かぐらい分かるよ~」



 その言葉通り、ビビったりする様子もなくてシスターは自然に話してきた。



「私、シスターのリリネア。ちょっと前までは勇者と仲間だったんだー」



 へぇ、あの塩顔と知り合いだったんか。



「でも旅の途中で捨てられちゃっだああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 ああ、察し。色々うるさいもんな。

 ん? てか勇者の仲間で女って……



「オメー、戦士と魔王城で下敷きになったんじゃねえの?」

「それ多分、公認の僧侶枠! 聖女様の方だよぉ」

「違うやつなのか。ま、聖女っぽさ皆無だもんな」

「ひっどい!!」

「で、お役御免になってフラフラしてんの? 家とか帰んねーの?」

「家じゃないけど、生まれ育った教会には帰ったんだよ!? けどさぁ!」



『神父さまぁ~戻ったよぅ~』

『酒臭っ!? お前、魔王討伐遠征はどうした! あと酒、それウチの禁忌!!』

『うるさいなぁオヤジぃ〜。こっちは命懸けの旅してんですよぅ〜ウィッ、ぅー』

『そんなオッサン臭いしゃっくりする子、ウチのシスターじゃありません!!』



「……って追い出されちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「ホントに聖職者だったのか?」



 生臭坊主ってコイツみたいなヤツのこと言うんだなー。



「でもま、親子喧嘩じゃあるあるだよなぁ」

「あなたも似たようなことあるの?」

「おん。親父にダンジョンぶち込まれてな」

「だだだ、ダンジョンに!? どういう教育方針してるの?!」

「ホントなー。食うもん少なくて困ったぞー?」

「た、食べ物の問題……?」

「モンスターの数は限りあるし、広いダンジョンだから遭遇率も悪くてさー」



 今でも思い出すなー。腹減っても魔物ってアタシから基本逃げるのばっかだから。

 とにかく腹が減って辛かったぜ。



「そん時に『もう炙れば良いや』と思って、地下ダンジョンに火ぃ放って魔物丸焼きにして食った」



 いやあ、様子見に来た時の親父傑作だったなー。



『我のとっておきダンジョンがぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』

『親父ぃ、食料庫にすんなら魔物増やしてくれよ。腹減って死ぬかと思った』

『勇者用のゴリゴリ即死級ダンジョンじゃボケぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!』

『ま、魔王様! 我が軍の領地四ヶ月分の税収と同じ損害額です。今年度赤字確定です!!』

『ダンジョン資産運用やめときゃよがっだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァクソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

『だから言ったでしょう! クリアされた時に価値暴落するって!!』



「アレはかなしー事件だったなー」

「よく分かんないけど、無事で良かったね……」


「あれ、アリアス?」



 さっき噂してたせいか、ちょうど一般通過勇者が通りから歩いて来た。

 なんか返り血浴びてるし、討伐の帰りか何かだな。



「奇遇だね、ちょうどお昼かな?」

「お、勇者ぁー。首洗ってたかー?」

「なんで首取りにくる感じなのさ……って」



 塩顔勇者がリリネアに顔向けたら、ギョッとした目ぇして固まった。そんでスゲー嫌そうな顔になった。

 リリネアも「ヒュッ……」って変な息して顔真っ青になってら。



「お前、リリネア? なんでこんなとこに」

「ゆ、勇者くん久しぶりぃ~。前の女のリリネアちゃんだよ~」

「お前の男だった覚えはない。失せろ」

「辛辣ゥ!?」



 またリリネア泣き出したわ。こりゃほぼ反射で涙腺決壊してるだけだな。

 つーか塩顔、いつもより当たり強いな。こんな事言うやつだったか?



「アリアス、そいつから離れた方が良い」

「ハァ? 酒臭いだけで別になんとも……」

「彼女、節操なく女食いまくって教会追放された色狂いシスターだぞ」

「……んァ?」

「どうしようもない酒カスで、聖女以上の色狂い。そうやって傷心装って宿屋まで女の子を連れ込む常習犯なんだよ」



 ……コイツの周りは脳と下半身が直列回路の連中ばっかか?



「バラされちゃあ、しょうがないよねぇ」



 横で肩をヒクつかせて、リリネアが笑い始めた。



「はひっ、はひひ、魔族のお嬢さんはどんな可愛いとこ見せてくれるかなぁ……ひひ」

「ゴブリンより貞操観念終わってんぞオメェ」

「いィィィィィただきまァァァァァァァァァ!!」



 飛び掛かってきやがった。粛清決定。



「魔族びーむ」



 アタシの目から超高熱レーザー照射。当たったリリネアは服も残さず灰になった。

 生臭シスター、灰燼に帰す。


 断末魔なのか興奮なのか、気色の悪い「ンおっほォォォォォォォォ」って叫びだけが残ってる。



「また一つ世界は平和になった……」

「お前が言うな?」



 親父ブッ飛ばした時より人類に貢献した気がする。けどマズイことになった。



「正当防衛だけど、これ大丈夫かぁ? 魔族が人間殺しちゃったって問題なりそーだけどぅ」

「え? ああ、心配する必要ないぞ。そいつ――」



 ……待て、なんか灰がモゾモゾ動き出した。

 ねばねばの粘液も染み出してきてっし、マグマみたいにボコボコ沸き立って増殖してんだけど。こわっ。



「消し炭程度だと自動で復活してくるから」

「んっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ女の子熱線やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! 麦粒単位までされたの初めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「リリネア、回復系は人類随一のエキスパートだから、ほぼ殺すこと出来ない存在なんだよ。控えめに言って災害」

「……きめぇ」



 色ボケシスター、クーリングオフ。

 多分回復とか関係なく、地獄にいる親父達に拒否られた可能性あると思う。



「女の子とイチャコラするために覚えた治癒魔法、ここで全力投下してセクハラだぁぁぁぁい――」

「じゃ、バイバーイ」



 問答無用。生臭シスターはアタシの回し蹴りで空の彼方へブッ飛ばした。

 この前のトサカ達より遠くに飛ぶ威力で。あんなのに帰ってきてほしくない。


 世界の果てだか空の向こうだかに飛んでくリリネア眺めて、アタシと塩顔は一息ついた。



「勇者、アレ魔族よりタチ悪くね?」

「うん、あれは魔物だ。次は容赦いらないよ」



 親父……やっぱちょっと人類間引く必要あったかもしんねぇ。

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