第2話 寝床くれぇ〜い
魔王軍壊滅、二日目。
魔王の愛娘アリアス・ヴェルキリー、見事人類側に寝返ったぞーぅ。
最初はどうなる事かと思ったけど、なんか人間達に受け入れてもらえそうな空気になって万々歳。
ま、アタシって外見もかなり良いし? 赤い角と瞳、銀髪ってこと以外は人間とそんな変わんないから警戒されないっしょ。
それに魔法の鏡(脅迫済)からも絶世の美少女のお墨付き。下手すりゃ魔王軍以上に愛されたりー……
……なんて、思った時期もありましたとさ。
「経緯はともかく、彼女は人類側にとって英雄です!」
「なんで連れ帰っちゃったの! お前さんで止められんフィジカル魔族ウチの国に置けるわけないじゃん!!」
「で、ですが対話もできて友好的ですし……」
「魔王ボッコボコにして城ごと粉々にする娘よ!? 目の前にいんのも怖いんですけど!!」
なーんか国王、ビビり散らかしてる。
さっきから腰抜けて何回も玉座からずり落ちてるわ。
周りの衛兵も失禁してるし……そんなアタシ怖いか?
「つーか帰ってきたの君だけ!? 魔王城に派遣した軍はどしたの!」
「それはご安心下さい! ちゃんと避難させましたから」
「じゃあ君のパーティは? 君以外にあと三人いたよね!?」
「彼らは、残念ながら……」
あれ、もしかして死んじゃったか? アタシ巻き込んで殺しちまった?
「聖女と戦士は頓死しました。てか魔王城の瓦礫に放置してきました」
「なんでよ!? 大切な仲間じゃないの??」
「アイツら二人、デキてたんですよ。旅の途中もイチャついてたから鬱陶しくて」
「勇者ー? うんうん、ワシ武力より清廉さ重視で君選んだ筈だけど、勇者ー?」
「てか二人とも、旅の先々で王族貴族に手を出してたので、外交問題的にも死んでおいた方が得かと……」
「許す。二人は名誉の戦死だった」
酷ぇ歴史改ざんを見た。
「だけど魔法使いは? あれは割とマトモだった気がするんだけど」
「魔族と人の間に生まれたロリッ娘たちとランデブーしやがりました。ロリハーレムです」
「どうにかして処せない?」
「魔族とのハーフに人権法は適用外です。パーティ抜けも罰する法がないので完全に詰みです。てかアイツそれ狙ってます」
「一番小賢しくて嫌いだわ」
本気でコイツらウチの軍潰しに来たのか? 今んとこ痴情のもつれしかないじゃんかよ。
「勇者、やはりお主だけが清い心を持っておる。欲に惑わされぬ屈強な精神……」
「こちとら惑わされないってより、もうないんですよ国王様」
「……そうじゃった」
「聖剣引き抜いて勇者になる代償に、こっちは生殖機能と諸々奪われてんですよ……」
「そうだよね。うん、ごめん忘れてた」
「あの代償、要ります?」
「先代勇者がやらかしてね。勇者の子孫って争いの火種になるから、事前に生殖能力消そうっていう神様判断」
「ちょっと先代の墓におしっこぶっかけてきます」
「倫理観終わっとるな人間ども」
「「お前が言うな!!!!」」
異議なーし。
「って、忘れるところでした。とにかく、アリアスの住処を決めない事には――」
話し合いに戻ろうとした時、城の壁が突き破られた。
城壁をぶち抜いて突っ込んできたのはドラゴン。
全長は成人の男六人分の飛竜型で、知能のない野生種。興奮気味で城に侵入してきた。
「ななな、なんでドラゴン!? お、王城には退魔結界張ってんのに! ちょ、衛兵ー!!」
「こ、国王様! 先ほど城の風呂を魔術で入れており、ブレーカーが落ちたようです」
「水魔法で魔力食い過ぎてたァァァァァァァァァァァ!!」
「だからあの古代風大浴場ちょっと小さくしろって言ってたんすよ国王ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
城内、阿鼻叫喚。
衛兵も使い物になりそうもないし、勇者は国王逃がすので手一杯。
倒せても、こりゃブレスで何人かは焼かれそうな展開。
仕方ねー。アリアスちゃんが力貸してやらぁ。
「どいてな〜」
「あ、アリアス!?」
「こっち見んなよ~」
って言ってんのに、勇者も国王も不安そうな視線を外さねぇ。
ドラゴンもこっちガン見してるわ。
「レディが鼻ほじってる時は余所見すんのがマナーだるォ?」
指を鼻の穴に突っ込んで、ほじった鼻クソをピンッ――と弾いた。
そいつはドラゴンの眉間に着弾。からの大爆発だ。
視界が真っ白になるレベルの閃光。視力が戻った時には、頭部が吹き飛んだ竜が丸焦げで転がってた。
「は、はなはなはなはな、鼻くそで倒したの?」
「殴ったらお城吹っ飛んじゃうだろー?」
「……そうだったね。魔王にワンパン入れた時点で君の城も吹っ飛んだもんね」
と、お手並み披露したところでクルリンパ。
スカート振って国王にお辞儀。全力で有益アピールっ。
「国王たーん。こんな感じで邪魔なモンスター倒すから、この国にお家ちょうだぁ〜い♡」
交渉成立。国王たんは首を縦に振ってくれた。
震えながら無言でずーっとシェイクしてる。
「……待って、なんか匂わない?」
落ち着いてきた頃に勇者が異臭に気付いた。
「あ、アタシのハナクソってスライムだからそのせいだわ」
「えぇ……」
「攻撃力ないけど嘔吐ガス発生させるタイプー。人間特攻成分」
「換気ィィィィィィィィィィ!! 窓全開で風魔法ブッパなせェェェェェェェェェェェェェ!!!!」
衛兵、宮廷魔術師が全員投入。
皆えずきながら魔方陣展開し出した。
「国王様は避難してください!!」
「慌てるな勇者、これしきのロロロロロロロロロ」
「ああああああ国王!? 誰か医者呼べええぇぇぇぇ!!」
「い、いや、美少女の激臭で逝けるなら本望ぉ―― 」
「吸い込むな変態ジジイぃぃぃぃ!! けど口呼吸は続けろォォォォォォォォォォォォ!!!!」
最終的にはドラゴンなんか霞むぐらい皆ゲロってた。
「人間、笑える」
きったねーけど、人間世界での暮らし一日目は悪くねー滑り出しだな!




