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第15話 勇者、ニートになる

 冒険者ギルドン●ー・ホーテから帰宅。

 手提げ袋には旬の薬草と大根たんまり。


 なのに家の前で、セミが鳴いてやがった。



「ミィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」

「勇者、お前何してんだ」

「ミィィィィィィィィィィィィあ、アリアスおかえり。ミィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」

「戻んな戻んな戻んな」



 よりにもよってアタシの玄関チャイム(パクってきた教会の鐘)にしがみついてやがった。

 一回引っぺがして頭突き一発。



「ご近所迷惑だろーが。ただでさえアタシのイビキが騒音問題なってんのによ」

「それは自業自得では……」

「で、なんの用があって鐘に引っ付いてやがった?」

「ストレス発散」

「お前がたまたま勇者になった狂人って事は最近分かってきたぜ」



 魔物の脊髄啜ってるやつに正気とか求めるモンじゃなかった。


 とりあえず家にあげて、適当に茶を出した。

 香り茶柱玉露マシマシのな。



「どうしたよ。お前らしくねー」

「あ、お気遣いども」

「キチゲ解放ならもっと他にやり方――」

「職を失ったんだよ」


「……おっとぉ?」



 長話用お茶菓子セット出す必要が出てきた。



「職失ったっておめー、勇者じゃなくなったのか?」

「厳密には称号だけ残って、勇者としての権限的なものを返還したって形かな」

「魔王軍もいなくなったからな。ひでー話だなそりゃ」

「仕方ないよ。これもある意味勇者の役目……あ、お茶菓子おいしっ」

「せんべぇなら幾らでもお代わりあるからな〜」



 落ち着いてきた勇者はぼんやり外見て話し出した。



「勇者は平和な時代に長居し過ぎると揉めるからね」

「そんなもんか?」

「僕が生殖機能失った話、前にしただろ?」

「ああ、先代がやらかしたんが理由だっけか」

「そう。死後は相続問題で揉めに揉めて、隣国ごと先代勇者の血は消滅したよ」

「うっわぁ」



 脊髄直飲み感謝祭の狂い方がマシに思えんな。

 人間やっぱドロドロしてんな。



「で、職なしのお前はこの先どうすんの?」

「それを悩み中。やれることはあるけど、今はちょっと休憩期間」

「やれる事ってのは?」

「冒険者やるでも良いし、力が必要な仕事でも何でも」

「結局再就職かを世知辛ぇな」

「とはいえ、褒賞も出た。しばらく遊んで暮らせるし、一生分の保障もね」

「具体的には?」

「税制優遇」

「全部生々しいなオイ」



 豪邸くれてやっても良いぐらいだが、塩梅的に税制優遇ってのは納得だな。


 ……つーか羨ましいな。一応英雄としてアタシも強請ったら貰えっかな?



「じゃあ再就職までの間、プラプラ暇を堪能するってとこか」

「まあね。けど住処ぐらいは確保しなきゃ――」

「そしたらよ、アタシんとこ住むか?」



 ガタッ。

 ちゃぶ台揺らして勇者が立ち上がった。



「……事案?」

「なんでだよ」

「つい先週に王子がロリコンとして逮捕されたの忘れたかい?」

「あったなーンなこと。アレは結局どうなったん?」

「流石に即釈放だよ。噂だとあの後に出会い系ダンジョンに通い始めたとか」

「ダンジョンで出会い求めんのは間違ってなかった……!」



 性癖ねじ曲がりチェリーボーイ、強くなったな!



「それよりここに住むかってどういうこと!?」

「部屋はちげーよ。隣だ隣。ちょうどお隣さんが引越したんだよ昨日」

「そんな都合良く越したんだ!?」

「とうとうアタシのイビキで鼓膜破れたらしい」

「騒音問題深刻じゃないか! 僕の耳も破壊する気か?!」



 ここまで来ると自分でも聞いてみてーなイビキ。



「てか、フツーによ。アタシって地味に天涯孤独なワケじゃん?」

「……」

「はいそこ、自業自得みてーな顔しなーい」

「……分かってるよ。どっちみち君がいなきゃ僕は死んでたし、君が父親を殺さなきゃこの日常もなかったわけだしね」



 実際、割と気ままに暮らせてっし、楽しくやれてる今が奇跡みてーな状況だよな。



「生活にゃ慣れたし、ここの連中も受け入れてくれたけどさ、やっぱ寂しーわけよ」

「……そうか」

「だからオメー、もうしばらくはアタシんとこ来いよ」

「……そこまで優しい理由は?」


「――友達だろーが」



 一瞬ハッとした顔になった後、塩顔はそっぽ向いちまった。



「……君に泣かされる日が来るとはね」

「そうか? じゃあ待ってろ。目に沁みる激臭スライム持ってるからよ」

「そういう意味じゃない! 感傷的な雰囲気ぶち壊しだよってくっさボエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!??」



 畳の上でのたうち回ってら。勇者、憐れ。



「てか今更だけど、お前の名前聞いたことなかったわ」

「名前?」

「おん。そろそろ教えろよ。ダチの名前ぐらい――」



「僕に名前はないよ?」



「……は?」


「強いて言うなら『冒険者ナンバーニ〇一番』かな? 聖剣引き抜いた時に『勇者』になったから、それまではずっとその呼ばれ方だったんだ」

「……オメー、レディオ体操やってたか?」

「うん。ここら辺の子どもは大体経験者だと思うよ?」

「……聞かなかったことにしてくれ」



 そんなこんなで、 ボロア・パート『デッドパレス』に新しい住民が加わったとさ。


 ちなみに勇者の事は勝手に『ソルト』って名前で呼ぶことにした。

 ずーっと印象強かったのが、塩顔だったからな。

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