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第13話 脊髄直飲み感謝祭

「脊髄直飲み感謝祭フォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」



 そこのお前、今アタシが叫んだと思っただろ?


 違う。叫んでんのは勇者の方。



「このため、このために一年間頑張ってきたんだ!」

「脊髄直飲み……なんて?」

「脊髄直飲み感謝祭だよ?」

「ンなご存じ的なノリで言われても知らねーよそんな奇祭」



 街中に息荒げた蛮族が闊歩してる。けどコイツら全員人間なんだよ。

 普通に主婦もおじいもハト餌撒きおばちゃんも全員武装して徘徊してんの。

 魔族かよ。



「最初は魔物被害を抑えるため行事化したクエストなんだけどね」

「あー、住民全員で掃討クエストってことか」

「見せた方が分かりやすいね。こちらに手ごろな魔物がいるね」

「うわっ、なんか取り出した!」



 勇者はどこからか小ぶりのオーク(四足歩行)サイズの魔物を取り出した。

 魔物ってよりは、ちょっとデカめのネズミだけどな。


 勇者はそのままネズミの首元を口に近付け――え、待て。よだれ垂らして何してン……あ。


 ……アタシは何も見なかった。



「こうやって首筋に噛み付いて魔力と脊髄液を吸い出すんだ」

「言っちゃったーよー」

「これが堪らなく美味しいんだ。この街じゃ名物でね」

「もうオメーらが魔族だよ。アタシらでもそんな蛮族祭りしなかったわ」

「けど絶品だよ?」

「踊り食いってレベルじゃねーんだわ。お茶の間にそのまま流せない祭りは滅びろ」

「アリアスも食わず嫌いせずほら」

「親父殺しのアタシでも超えたくない一線なんだよ」



 その一線超えた連中が街ん中を走り回ってら。


 敢えて魔物おびき寄せてんのか、小動物から犬猫程度の大きさの魔物が街中にいる。

 パッと見はふれあい動物園。実際は釣り堀か狩場……ビュッフェに近いかもしんねー。



「※※※※※※だ! ※※※※※ァァァァァァ(自粛)」

「※※※※※※※※※※※(自粛)」

※※※※※※※※(ありがとう)※※※※※※※※(ござい)※※※※※※※(ます)(自粛)!!!!!!」



 はい、地獄絵図。

 アリアスちゃんご都合フィルターを通せば、人間たちが楽しそうに食い放題祭りしてる絵面に見え――てこない。ダメだわ。

 ガキから老人まで猟奇的な笑い方してる時点で厳しかった。


 飛び散った血や臓物啜ってるとことか、ゴブリンがマシに見えるレベルの狂気度合いなんだけど。



「勇者様もこちらに~! 活きの良い個体入ってますよー!」

「今行くよ! そしたらアリアス、また!」



 勇者a.k.a.ソウルイーターは聖剣持ったまま魔物ンとこに直進してった。

 マジでここの魔物、麻薬成分とか注入されてんじゃねーか?



「……親父、地獄まで届いてっか?」



 ピィィィィとかキュィィィィィって断末魔が響く人間集落ヒトムラの空見上げて、真反対の地の底に想いを馳せてみた。


 そんで思い出した。昔の話――



魔王おやじぃー。なんで人間と戦争してんだー?』

『とりあえず父親の髪の毛引き千切るの止めてから話そ?』

『ヤだ』

『ヤだか……』


 アタシが魔王おやじの髪が一本もなくなるまで引き抜こうとしてた頃だ。


『元々魔族が人間と戦ってたから、過ごしてる内になあなあで魔王軍作ってった感じかな』

魔王おやじはここら辺の出身じゃなかったんだっけか』

『遠いとこから来たんだよ。転生――じゃなくて、転居してきたんだ。僻地のほうから』

『僻地に魔族住める場所あったか? 魔王おやじ、ここ来るまで何してたん』

『埼玉県所沢市のうどん屋の息子』

『ほーん。よく分からん』


 知らんけど、多分そこそこ平和。


『別に世の中変えたいってわけじゃないし、人間側もヤバいやつ多いし』

『そーなんか?』

『ああ。パワハラ上司とか横領社長とかNTR好きチャラ男同僚とか』

『??』

『とにかく、魔族も人間もどっちともヤバいから流れに身を任せただけだよ』

『ふーん』

『まあ我は魔王らしく好き勝手生きて、勇者でも来たらそこそこ戦ってから首でも出すよ』

魔王おやじって素だとフツーのオッサンだよな。加齢臭たっぷりの』

『ま、娘の前でぐらい本音も漏らしたいよ……あとそんな臭い?』



 ……あん時言ってた魔王おやじの言葉、今思えば分かる気がする。

 この真っ赤になった街見てたらな。



「……そっちがマシに思える地獄、目の前で起きてんぜ」



 段々魔物の数も減ってきて、まだ食える余力のあるヤツは争奪戦始めてら。


 そんなヤツらから離れた場所で、アタシは干からびた魔物を一匹拾い上げる。

 炎魔法で灰になるまで焼いて、そのまま空に風で飛ばしてやった。



「供えモン代わりだ。受け取りな」



 灰が飛んでくとこ見てたら、魔王おやじのドン引き顔や叫んでるとこが、ちょっとばかし恋しくなった。


 ……飛んでった灰がちょっぴり、目に入っちまったぜ。



「――死因が供え物してる?」

「うっせ」



 魔物の生き血がぶ飲み勇者には適当な闇魔法ぶん投げといた。

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