第1話 魔王令嬢は寝起きが最悪
アタシ、アリアス・ヴェルキリーには短所が3つある。
1つ、寝起きが史上最悪に悪いこと。
2つ、世界の支配する魔王が父親なこと。
3つ、勇者と魔王に叩き起されて、逆ギレして魔王軍を壊滅させたこと。
「……やっちったわ」
魔王城、壊滅。
配下、眷属、魔獣、参謀が趣味で作ってた花壇、完全粉砕しちったわ。
多分ウチの軍、勇者と最終決戦中だった。
つまり全軍が城に集まってたっつーこと。
「……滅ーんじゃった滅んじゃった」
わーいわい。
目ぇ覚めたら自分で自分ん家ぶっ潰しちゃったんだけど。
明日からどーするよこれ。
てか、さっきから剣持った塩顔が口開けてアタシんこと見てんだけど。
コイツ絶対勇者じゃんか。これ討伐されるわ。
「あー……命乞いの言葉は何文字分くれる?」
「さっきの見せられといて今更戦いたくないよ……」
ん、さっきの?
「ほら、魔王城を叩き壊した後に魔王と戦って……というか一方的に蹂躙してたじゃん」
「ごめ、寝ぼけてて覚えてねー」
「寝起きでやってたのあれ!? 聖剣でもかすり傷だった魔王がボッコボコにされてたよ!!」
あー、寝ぼけてたけど思い出したわ。
『あ、アリアス起きて! ウチ攻められてるから! てか手伝っ――フぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!??』
『ンだゴルァァァ起こしやがったのかクソ親父ィィィィィィィィィィィ!!』
『たんま! 勇者いるからそこ! 四天王しばかれたばっかだから!!』
『問答無用だラララララララララララァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』
おん、ラッシュ叩き込んでたわ。
じゃあ手ぇ汚れてんの、親父の返り血のせいか。親殺しじゃん、やらかした。
ひとまず、
「レーメン」
悪ィな親父、地獄で冷麺食っててくれ。
「で、どうするの勇者?」
「判断こっちに丸投げしないでよ! 魔王を粉微塵にした娘の扱いなんて困るって!」
「できんなら死にたくねー。飯と寝床くれ」
「まさかの最低限度な生活」
「あとたまにで良いから構え。遊ばせろ。崇めろ」
「交渉の順序守ろうか?」
二日酔いぐらい唸って勇者は悩んでた。
「ええっと、君に交戦意志が無いなら、もう魔王軍との戦いは終わるんだけど……」
お、生存いけそう?
「そもそも立場的に君いま、自分の種族裏切ってまで魔王倒した英雄だよ?」
「エーユー?」
「人類にとっては、世界救ってくれた大恩人なわけだから、歓迎されなくもない……かも?」
寝起きで死んでる脳みそブン回した。
結果、アンデッドの四億倍は新鮮な思考で導き出す。
「人間の領地って、良い飯と寝床ある?」
「僕の知る限りは、かなり良いのが」
「隠居生活、して良いか?」
「普通の生活ぐらいなら、いけると思う」
「人類王国、貰って良いか!?」
「ギア上げるな!!」
はい決まり。凱旋パレードれっつらごー。
「ちょちょ、アリアスさん!? マント掴んで何する気で?!」
「グズグズすんな! はよ行くんだよ!!」
「せめて歩かせて! 瓦礫の上で引きずらないで!!」
アリアス・ヴェルキリー、今日で人類に寝返るわ!!!!




