何度も生まれ変わるお星様
ご無沙汰しております。久しぶりの短編です。
息抜きのつもりで書いてみました。楽しんでもらえると幸いです。
むかしむかしあるところに小さなお星様が一つありました。
そのお星様はあることに随分長いこと悩んでおりました。他の星とは違う特別なお星様なのです。
そのことに悩んでいるお星様は偶然出会った神様に悩みを打ち明けます。
「神様、神様、どうか私の話を聞いてもらえませんか?」
「もちろん良いよ。どうかしたのかい、小さなお星様」
「私にはある悩みがあるのです。そのことにずっと悩んでいるのです」
「悩みがあるのかい?」
「はい、私はお星様なのに死ねないのです。何度も蘇って生まれ変わるのです」
このお星様。普通なら流星になったり死んだりするのですが、何度も生まれ変わる不思議な命を持った星なのです。
「そうなんだね、君は特別なお星様なんだね」
神様の言葉に対し、お星様の声はどこか寂しげでした。
「私は生きたくないのです。死ねないのはもう嫌なのです。死にたいのです」
死にたい。その言葉に重みを感じた神様は言いました。
「生きようとは思わないのかい? 死んだら終わりだ。でも何度も蘇るということは、君の生死に意味があるように気がしてならないんだ」
「でも死にたいんです」
「理由を聞いてもいいかい? やっぱり何度も蘇ることが原因かな?」
神様の問いかけに、お星様は数秒黙ったのち重い口を開きました。
「……怖いんです」
「怖い? それは何度も生まれ変わることがってことかな?」
「それもあります。それよりも死ぬ恐怖が薄れていく自分が怖いんです」
お星様の泣いて啜る声が宇宙に空しく響きます。
「神様、私はどうすればいいのでしょうか。私はどうすればいいのか分からないのです」
神様はお星様に語り掛けるように話します。
「君は心が美しいんだね。君のような星はきっと美しい星になるよ」
神様の優しい声色に、お星様の涙がピタリと止まりました。
「そんなこと初めて言われました。私は美しい星になれるんでしょうか……」
「あぁ、なれるさ。僕がその手助けをしてあげよう」
そう言うなり、神様は不思議な力をお星様にかけてあげました。
「これで君は死なない。生き続ける星になる」
「生き、続ける? 死ぬのではなく?」
「君のような美しい星は死ぬのでなく生きてこそ輝く。大丈夫。君ならもう前を向いて歩けるよ」
神様がそう言った直後です。お星様の体がみるみるうちに大きくなり、見た目も変化していきます。限界まで大きくなったお星様は青く輝く美しい星へと生まれ変わりました。
「君の名前を地球と名付けよう。君にふさわしい名だ」
「神様、ありがとうございます。私もう一度生きてみようと思います」
そう告げるお星様はもう小さなお星様ではありません。人々の心を癒す美しい星となり、今日も輝き続けるでしょう。
おしまい
童話のような語り部に初挑戦してみました。いつもとは違う書き方でしたが、書いていて楽しかったです。
またお会いしましょう。