12 魔力知覚測定検査②
佐藤が検査を開始してから、十分が経った。
すでに二番目の組は森の中へと入っており、剣磨とひまりは森の入り口前で待機していた。
「……よし、時間だね。それじゃあ三番目の組の子たちは、森へ入っていいよ」
佐藤の口から、森への入場許可が下りる。
「いよいよだね。それじゃあ、ひまりさん。行こっか」
「ん。楽しみです」
ひまりと剣磨は、ほかの八人の子供たちと共に森の入り口をくぐり、そのまま中へと足を踏み入れた。
入り口を抜けた先の森の中には、人が歩くための道がきちんと整備されていた。
歩きやすいようにアスファルトで舗装された道。そして道の左右には、森林との境界を区切るように木の柵がしっかりと張られている。
生い茂る緑の木々はそよ風に揺れ、枝葉の隙間からは太陽の光がわずかに差し込んでいた。
ここが“魔溜域”だということを忘れれば、散歩コースとして最適な場所だろう。
「この中を道に沿って歩いていくのか。なんか自然が豊かで、すごく癒やされるね。検査ってことを忘れて、普通に森林浴したくなるよ」
「私は毎日こんな景色見てるから、すごく馴染みある景観です」
「あ、そっか。ひまりさんは都心から離れた、森の奥の村から来てたんだったね」
「ん。個人的には、もっと色々マシンのある施設っぽい場所で検査したかった」
「ハハ」
少しだけ不服そうなひまりの様子に、剣磨は苦笑する。
実はこれは、現在検査を受けている子供たちは知らないことなのだが、三十年ほど前までは、ひまりの言うような機器設備の整った施設で検査が行われていたのだ。
魔力知覚検査とは、魔力知覚の“深さ”と“広さ”を調べる検査である。
その二つを測定する方法など、現代の魔導技術を駆使した施設であれば、いくらでも実施できる。
ではなぜ現在、このような自然豊かな魔溜域で検査が行われているのか。
理由は一つ。
従来の施設では、とある問題が発生していたからである。
その問題とは――子供たちの精神状態の不安定化だった。
そもそも、子供たちはこの検査に人生を懸けてきている。
そのため、不安や緊張は検査が始まる前から非常に大きい。
そんな子供たちが、見たこともない機器が並び、いかにも「検査です」と言わんばかりの重々しい施設で試験を受けたらどうなるか。
精神的な負荷が限界まで高まり、泣き出す子。過呼吸を起こす子。
そうした子供たちが、決して少なくない数で現れてしまったのである。
これは、病気を抱えた人が病院で検査を受ける際、医療機器の並ぶエリアに通されたときに不安を感じるのと、よく似た現象だ。
そもそも、魔法というものは人によって大小の差はあれど、その時の精神状態に大きく影響される。
例えば、魔力知覚の才能が同等の二人の魔導士がいたとする。
一方が精神的に安定しており、もう一方が極度に不安定な状態だった場合、その二人が魔力知覚の広さを測定すると、知覚範囲にはおよそ十〜十五メートルほどの差が生まれてしまう。
それほどまでに、精神状態と魔法は直結しているのだ。
だというのに、精神的に不安定な状態で魔法適性検査を受けさせてしまえば、その子供たちの本来の才能を正しく測ることはできない。
そこで三十年前。
国と魔導院は魔法適正検査測定制度法第八条の改正を行い、魔法適性検査の方法を大幅に変更したのである。
子供たちの不安をできるだけ和らげ、正常な精神状態で検査を受けてもらうための環境整備。
子供たちが最初に通された、オシャレなカフェのような待機スペースもその一環である。
そして肝心の検査については、多くの議論の末、野外実地検査方式が採用されることとなった。
それは、多くの人がイメージするような専用機器を用いた施設型の検査ではなく、屋外環境を利用し、開放感のある空間で行う検査方式である。
そしてこの検査方式が成功だった。
この方式の導入により、従来と比べて精神的不安定な状態に陥る子供の数は、実に九割も減少したのだ。
もっとも、その代わりに新たな検査場の確保や新方式の導入、子供たちの安全管理、不正防止策など、面倒な事務作業が検査運営に携わる者たちへとのしかかることになったのだが――。
新たな魔導士を発掘するという目的に比べれば、それらは些細な苦労と言えるだろう。
……と、余談ではあるが。
そういった裏事情があってこその、現在の“森林散策”なのである。
ひまりと剣磨はそんな事情など知る由もなく、不思議な検査方式だと思いながらも、森の中を歩いていた。
ひまりと剣磨は友達という関係ではあるが、この検査において助言や補助は不正の対象になってしまう。
そのため会話は最初のみにとどめ、それぞれが一人の受検者として、目に見える範囲と見えない範囲の動物探しを行っていた。
もし才能があった時、助けたいという気持ちはお互いにある。
だが、だからといって不正をするのは良識的に良くないし、それを相手が望まないということも、短い付き合いながら互いに理解していた。
だからこそ森に入る前に、お互い自分のことのみに集中しようと決めていたのである。
そうした事前の取り決めがあったため、ひまりは現在、動物探しに意識を集中――正確には純粋に楽しんでいた。
しかし、
(ん――。今の所動物さんいない……。遠くの動物さんの魔力?っていうのも分からないし……私、才能ないのかも)
ひまりは現在、まったく魔法生物を見ることも感知することもできていなかった。
ただ森林で囲まれた道を歩いているだけとなっており、魔法生物を見るのを楽しみにしていたひまりは、少しだけがっかりする。
(変わった動物さん見てみたいのに……。ケンマはどうだろう?沢山見えているんだったら羨ましい、、、)
自身が動物探しに集中していたというのもあるが、あえて剣磨のほうは見ないようにしていたひまり。
現在、剣磨はどうなのかと、少しだけ気になっていた。
その剣磨はというと――
(……どうしよう。何も感じないし、見えない)
ひまりと同じく、ただの森林散歩状態であった。
ただ、
(これって僕、魔力知覚の才能がないってことなのかな? ……まぁ、無いのはどうしようもないか。切り替えていこう)
不思議と、剣磨の心の中に焦りは無かった。
――いや、不思議ではない。
これは間違いなく、ひまりのお陰である。
剣磨の中にあった「必ず検査に合格しないといけない」という、ある種の強迫観念。
それが、ひまりの言葉によって完全に無くなるとまではいかないが、大きく和らいでいたのである。
(無いなら無いで、次の検査に掛けて……今は森林浴を楽しもう。まぁ、まだ望みはあるからしっかり探しはするけど、)
そのため剣磨は現状を受け入れ、自身が住んでいる都心には無い、この豊かな自然を楽しむことにした。
――と、そんな感じで。
二人とも魔力知覚というものが、うんともすんとも言わないまま。
ただただ自然の中を歩き続け、巡回路の終盤といえる辺りまで来た、その時。
(あ、)
そこで、ひまりは見た。
柵を隔てた森の中。
直ぐ近くの岩の上にいる、一匹の動物を。
その動物は小さく、人の足元ほどの大きさしかない。
長い耳が特徴的で、誰もが知っている、あの動物。
(ウサさんだ)
そう。
ひまりの視線の先には、ウサギがいたのである。
ひまりは咄嗟に、周りの受検者を見る。
剣磨を含む他の九人は、首を右へ左へと動かし、森を隈なく見渡している。
しかし、どうやら誰もそのウサギには気づいていないようだった。
(周り、誰も気づいてない……)
ひまりは周囲が見えていないことを確認すると、改めてそのウサギへ視線を向ける。
そのウサギは、確かに誰が見てもウサギと答えるだろう姿をしている。
しかし、変わったウサギかと問われれば、こちらもまた万人が「変わっている」と答えるであろう姿でもあった。
というのも、そのウサギは、よく皆が想像する雪のような純白のウサギとは違っていた。
青く淡く光る毛並みを持ち、さらに後ろに伸びる長い耳とは別に、同じく青白く発光するシカの角のようなものが頭部から前向きに生えているのだ。
さらに、その青白く光る毛並みからは、小さな粒子のようなものが散布されており――
その姿形も相まって、どこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。
そんな変わったウサギもまた、サファイアのような青い双瞳で、ひまりの方をじっと見つめている。
(ファンタジーゲームに出てきそうなウサさん……。これが魔法生物……。あれ? でもおかしい)
ここで、ひまりは一つの疑問を感じた。
(魔法生物が見えているってことは、このウサさんから魔力を感じるはずなのに……。なぜか魔力は感じない)
そう。
ひまりには、他の人たちには見えていないこのウサギが確かに見えている。にもかかわらず、そのウサギから魔力は感じ取れなかったのだ。
(もしかして、この見える距離でも魔力を感じられないくらい、“魔力感知の広さ”の才能がないってこと? それはかなりショック案件)
確証はない。だが、それ以外に思い当たる理由も浮かばない。
ひまりは心の中で、ガーンとショックを受けた。
しかし、
(まぁ、いいや。とりあえず見えていることですし、ホログラム画面に入力しておきましょう)
一瞬で立ち直ったひまりは、ホログラム画面にウサギの情報を入力していく。
魔法生物:ウサさんを発見
特徴:青白く光ってる。頭からシカさんっぽいツノが生えてる。なんか神秘的。
備考:10メートルないくらいの距離だけど魔力は感じない。魔力感知範囲の才能はないみたいです。トホホです。
(ん。これでよし)
そこまで書き終えると、ひまりは確定ボタンを押した。
(……ケンマにも教えたいけど、教えられないし。ここは心を鬼にして我慢。知らぬが仏さん精神でいきましょう)
もし教えれば、剣磨は「自分には見えていなかった」と知って落ち込むかもしれない。
そう思ったひまりは、この件については自分からは話さないことに決めた。
当の剣磨はというと、自分の動物探しに集中しており、ひまりがホログラムを操作していたことにも気づいていない。
つまり、この件が話題に上ること自体がなければ、それで済む話でもある。
(ん。とりあえず魔法生物の発見はできた、と……。よかったよかった)
魔法生物を見つけることができて、ひまりは軽く胸を撫で下ろした。
しかし、安心している暇はない。ウサギが見えていない他の子供たちは、散策を続けながらどんどん先へ進んでいく。
(ぬ。急がないと置いてかれる……)
「ウサさん。じゃあね」
ひまりはそう別れを告げ、ウサギに軽く手を振ってその場を後にした。
そして、残されたウサギはというと――
(…………)
遠ざかっていくひまりの後ろ姿を、いつまでもじっと見つめ続けていた。
その後、巡回路はすでに終盤だったこともあり、ひまりは他にも生物がいないか探してみたものの、魔法生物を新たに見つけることはできなかった。
そして、そのまま元いた開けたスペースへと戻ってくる。
道を歩いた時間は、約二十分ほどであった。
「やあ。お帰り。知覚検査、お疲れさん」
戻ってくると、そんな声がかけられた。
ひまりたちが声の方向へ視線を向けると、そこには佐藤が立っており、笑顔で子供達を出迎える。
「君たちは三番手の組みだよね? まだ後順の子たちが検査中だから、君たちはここで適当にくつろいでいてくれ。一応ビニールシートはあるから、よかったら使って」
佐藤がそう言いながら指差した先には、折りたたまれたビニールシートが積まれていた。
必要な人は自由に使ってください、という事であろう。
ひまりたちより先に検査を受けていた子供たちは、そのビニールシートを芝生に敷き、姿勢を崩してスマホをいじりながらくつろいでいた。
「ひまりさん。僕たちもシート取って休もう」
剣磨がそう声をかける。
しかし、
「……私、シートはいい」
ひまりはそう言って、首を横に振った。
「え?」
キョトンとする剣磨を置いて、ひまりはまだ誰も陣取っていない場所へテクテクと歩いていく。
そして、
「えい」
そのまま芝生の上に身を預けるようにして、仰向けに寝転がった。
「! ひまりさん?」
思いもしなかったひまりの行動に、剣磨は驚く。
ひまりは芝生に寝転がると、気持ちよさそうに目を閉じた。
「せっかくのフサフサな芝生なのに、その上にシートを敷くのは私的には無粋。お天気もいいんだから、ここはダイレクト芝生インが一番」
そう言って、芝生についての持論を披露するひまり。
それを聞き、最初こそ驚いていた剣磨だったが、やがて納得したように頷いた。
「……なるほど。考えもしなかったけど、確かに言われてみると、芝生の上に直接寝転がるのって気持ちよさそう……。よし」
剣磨は決意したような表情を浮かべると、シートを取らずにひまりの隣へ歩いていく。そして、ひまりに倣うように芝生へと体を預けた。
フサッ!
背中から倒れ込んだ剣磨の体を、芝生が優しく受け止める。
「わっ! ひまりさんの言った通りだ。確かに芝生に寝転がるのっていいね。太陽の日差しもあって、すごく気持ちいい」
「ふふん。そうでしょう。この良さをすぐ分かるとは、ケンマもなかなかやりおる」
二人は隣り合って寝転がり、芝生の柔らかなクッションと、暖かく降り注ぐ太陽の光を全身で楽しむのであった。
そして、そんな二人から少し離れた場所にいた佐藤。
彼は自身の持つカード端末を操作し、ひまりたちの魔力知覚検査の結果を軽く確認していた。
本来、この確認作業は検査会場のサーバー室にあるコンピューターが自動的に行うものだ。
検査データを解析し、才能の有無やその才能の高さを判断して評価をつける――その一連の工程は、すべてシステムが担当している。
しかし佐藤は念のためという形で、検査を受けた子供たちの結果をホログラム画面に表示させ、ざっと流し見していた。
ゆっくりと、されど画面を止める事なくスクロールしていく。
しかしその途中――剣磨の結果が表示されたところで、スクロールしていた指を止めた。
剣磨の検査結果欄には、彼が遭遇した動物の発見記録と地図上のピンの記録が共に表示されているがその結果は両方ゼロであった。
つまり、魔力知覚の才能が確認できなかったことを示している。
(天式くんは、魔力知覚の才はなかったか。……まぁ仕方ないか。次の検査に期待だね)
佐藤は受検者を贔屓することはない。
しかし、検査前の一件もあり、剣磨には少しばかり目をかけていた。
だからこそ、彼に魔力知覚の才能がなかったことを、素直に残念に思う。
だが、魔法才能検査の項目はこれで終わりではない。
まだ二つ残っている。
そのどれかで「才能あり」と判定されれば、魔導士への道は開かれる。
佐藤は、残りの検査に期待することにした。
(さて、彼の次は――おっと、彼女か)
剣磨の結果に目を通し終え、再び流し見作業に戻ろうとしたところで、次に表示された名前を見て、佐藤はまた指を止めた。
そこに表示されていたのは、ひまりの検査結果だった。
実は佐藤。
ひまりのことを、剣磨とはまた別の意味で目にかけていた。
(下野さんの検査結果は、一応しっかり目を通しておかないと。えっと――ん?)
画面を確認した佐藤は、わずかに眉をひそめた。
(ウサさん……? ウサギのことだろうけど、おかしいな。この森にはウサギなんていないはずなんだけど)
佐藤は魔法試験官として、当然この森の生態系を把握している。
だからこそ、ひまりが入力した「ウサギ」という情報に違和感を覚えたのだ。
(もしかして、一か八かで嘘の情報を入力した? いや、でも……)
特徴欄に書かれている内容は、この森にいる魔法生物特有の青白い発光という点と一致している。
ただし、ツノがあるという情報は聞いたことがないが。
(どういうことだ……)
佐藤は、ひまりが指示されていないにもかかわらず書き込んでいる「備考」欄にも目を通した。
そこに書かれていた内容は、さらに謎を深めるものだった。
(……魔力を感じなかった?)
この森の生物は、その特性上、魔力を知覚されて初めて姿が見える。
魔力を感じないのに姿だけが見える――そんなことはあり得ないはずだ。
何か、通常では考えられないイレギュラーが起きている。
佐藤は可能性を一つずつ整理していく。
(ざっと他の子の結果を見た感じ、ウサギは彼女にしか見えていない。人によって見える・見えないが変わるのは、この森の生態の特性に近い生物だ。だけど、この森の生態系は、検査場にすると決まった時に徹底的に調査されている。ウサギの魔法生物が確認されたことは一度もない)
となると――。
(今の時点で可能性としてあるのは、やはり単純に彼女が虚偽の報告をしていること。入力ポイントが最終地点付近だし、何も感知できず焦って最後にヤマを張った……子供の心理も含めて、それが一番現実的だ)
しかし、そこで否定の思考が入る。
(……でも、嘘をつく子が、わざわざ「魔力は感じなかった」と記入するか? それに、この森の生物特有の青白い発光を当てているのも気になる。偶然で片付けるには、ノイズすぎる。それに――これが彼女の結果である事。そこも引っかかる)
佐藤はわずかに目を細めた。
(……これは、「現実的に考えたら〜」という既存の概念で考えるべきではないな。ウサギは実際にいた――その前提で考えるべきだ。……今わかっている情報は――彼女は、一番魔力の大きい、比較的才能がなくても見える生物すら見えていない。にもかかわらず、現時点で他の誰も見えていないそのウサギは見えていた。そして、そのウサギからは魔力を感じ取れなかったと)
情報を表面的に整理しながら、佐藤はあり得る可能性を探っていく。
(第三者が幻覚系の魔法で彼女に干渉した可能性……。いや、それはないな。ここには二十四時間体制の防犯セキュリティが張られている。外部の人間はまず侵入できないし、魔法を使えばすぐに探知される。何より僕自身が、魔法の使用による魔力の揺らぎを見逃すはずがない)
佐藤は第三者による妨害の可能性を考えたが、すぐにそれを切り捨てる。
(次に考えられるのは――彼女自身には魔力感知の才能がない。その上でウサギが見えた理由は、ウサギの方から何らかの方法で、彼女の前にだけ姿を見せた可能性か。……だが、その仮定にもいくつか無理筋があるな)
長い思考が、佐藤の脳内を駆け巡る。
だが、現実の時間では、まだわずか十数秒ほどしか経っていない。
優秀な頭脳を持つ彼は、短い時間の中でも多くの思考を巡らせることができるのだ。
佐藤は悩む。
おそらく、このまま審査システムにひまりの検査結果を流せば、虚偽報告と判断されるだろう。
システムは、あくまで事前に入力されたデータを基準に判定する仕組みだ。
イレギュラーな結果は、すべて弾かれる。
(……難しいな)
佐藤は小さく息を吐く。
(ウサギを除けば、彼女に魔力知覚の才はない。だが――ウサギが見えた理由が、ウサギ側からの干渉なのか。それとも彼女自身にある何か特異な要素なのか。もし彼女側の特異性だとしたら、それは魔力知覚に結びつくものなのか……)
魔力知覚の合否を判断するには、あまりにも情報が足りない。
そのうえで導き出せる、現状の結論は――
(特異な感知能力を持つ可能性はある。だが、魔導院の評価基準に照らし合わせれば、感知能力は無し――というのが現状の妥当な評価かな)
佐藤はそう判断した。
目に見える範囲と、目に見えない範囲の動物を探す――一見すると、ただのミニゲームのような検査。
しかし、その裏には、次代の魔導士を発掘し、正確な適性データを取得するための数々の工夫が施されている。
これまでに蓄積された膨大な知覚検査データから導き出された評価基準。
その基準と整合するよう緻密に設計された巡回ルートと、動物の配置エリア。
さらに、検査を陰で支える最新のテクノロジー技術と魔導工学技術。
表面からは、ただの自然の森にしか見えないこの場所には、そうした数多の仕組みが密かに組み込まれているのだ。
ここで重要なのは、この検査が魔力知覚の才能の有無、そして才能の高さを正確に測ることができる最新鋭の検査であるという点だ。
つまり、仮に何かしらの特異性があったとしても――一般的な魔力知覚の才能自体は、ほぼゼロに等しいというのはまず間違いないということである。
(まだ虚偽の可能性もなくはない。一応、このことは彼女自身に後で確認するか)
佐藤はひまりの方へ視線を向ける。
ひまりは現在、日向ぼっこ中であった。
その隣には剣磨がいる。
他の受検者が近くにいる状況で、検査結果に関わる話をするのは、個人情報の秘密保持の観点からあまり望ましくない。
(もし確認して嘘ではないと分かったら、虚偽報告として処理されないようにしないといけないな)
これは試験ではなく検査だ。
魔導士としての適性を調べることを目的としたもの。
故に不正や虚偽をしたところで失格になるわけではない。
しかし、保護者に不正をしたことを報告する義務はあり、また、不正の程度によっては法的措置が発生する場合もある。(主に保護者への五万円以下の罰金)
ひまりが不正をした可能性は低いと佐藤は思っている。
だからこそ、検査システムに処理される前に念のため確認しておいて良かったと、佐藤は軽く安堵するのであった。
最後までお読み下さりありがとうございました!




