11 魔力知覚測定検査①
「よし、時間だね。それじゃあ魔法才能検査を始めようか」
ひまりと剣磨の会話がひと段落した頃、ちょうど検査開始時刻となり、佐藤が全員に声をかけた。
「皆、これから検査場所へ転移するけど、椅子ごと転移することは出来ないからね。立っておいた方がいいよ。そうしないと、尻餅をついてしまう」
どうやら周囲の机や椅子は一緒には転移しないらしい。
子供たちは一斉に椅子から立ち上がり、転移の準備を整える。
「うん、大丈夫そうだね? それじゃあ、転移するよ」
その一言で、周囲の空気が一気に引き締まった。
子供たちの頭の中は、ついに始まる適性検査への不安と緊張でいっぱいになっている。
ちなみに、ひまりの内心を占めているのは、転移に対するワクワクが十割だった。
目を輝かせながら、手にしたカードをじっと見つめている。
一方の剣磨は、先ほどまで浮かべていた不安げな表情が、ひまりとの会話のおかげですっかり消えていた。まっすぐ前を見据えるその瞳には、確かな覚悟が宿っている。
それぞれが不安や期待を胸に抱く中、佐藤は転移の魔法を起動させた。
「それじゃあ行くよ」
そう告げて、ボタンを押す。
――その瞬間。
子供たちの手にしたカードが、青白い光を放ち始めた。
その光に呼応するかのように、彼らの足元へ複雑な幾何学模様の魔法陣が浮かび上がる。緻密な線と記号が織り成す陣は、徐々に輝きを増し、やがて全身を包み込むほどの光量へと変わっていった。
視界が、白に染まる。
すべての色が塗り潰され、周囲の様子が分からなくなる。
だが、それはほんの一瞬の出来事だった。
包み込んでいた光はゆっくりと薄れていき、やがて視界が元に戻る。
しかし、そこに映っていたのは、先ほどまでいた待機場ではない。
ひまり達の眼前に広がっていたのは、緑豊かな自然だった。
子供達が立っている場所だけが木のない芝生が生い茂る開けたスペースとなっており、その空間を囲むように鬱蒼とした森林が広がっている。
「おー! さっきまで中にいたはずなのに、いきなりお外に出た! これが瞬間移動……!」
ひまりは目を輝かせながら、興奮した様子で声を上げた。
そして、それはひまりだけではない。
理屈では転移を理解していても、いざ実際に体験すると、そのあまりに現実離れした現象に人は驚かされるものなのだろう。
子供たちは皆、同じように驚きの表情を浮かべ、キョロキョロと周囲を見渡していた。
そんな子供たちに向かって、一緒に転移してきた佐藤が声をかける。
「よし、転移できたね。みんな、ちゃんといるかな?」
佐藤は全員が揃っているかを確認するためだろう。子供たちが集まっている一帯を、右から左へと流すように見渡した。
今回の試験には、三百十二人もの子供たちが参加している。
普通であれば、これほどの人数を一瞥しただけで全員の有無を把握するなど不可能だ。
だが――
「……うん。全員いるみたいだね」
どうやら佐藤は、その一瞥だけで全員いるかの有無を判断できた様である。
「よし。それじゃあ、この場所の説明をするよ」
そう言って佐藤は、今まさに皆が立っているこの森林について語り始める。
「今、みんながいるこの森林。ここがどこなのか気になっている人も多いと思うけど、この場所は――魔導総本院と国が共同で管理している“魔溜域”だ」
「えっ!?」
「魔溜域!?」
「ウソ!!」
佐藤の口から発せられた“魔溜域”という単語に、子供たちは大きく反応した。
先ほどまで物珍しそうに森を見渡していた子供たちの表情が、一瞬にして恐怖へと塗り替わる。
――ひまりを除いて。
この世界には、“魔素”と呼ばれるものが存在する。
それは魔力の源とも言うべき存在であり、魔導士はこの魔素を体内に取り込むことで、消費した魔力を回復させている。
魔素は目に見えない、一種の元素のようなもので、世界中に存在し、空気に乗って漂っている。
だが――通常は空気中に分散しているはずの魔素が、地形や気流、風向きといった地政学的要因によって、特定の場所に滞留してしまうことがある。
それが、魔溜域だ。
その土地の環境によって自然と生態系が異なるように、局所的に魔素が溜まったその場所は、元来の自然や生態系を大きく変質させてしまう。
常識では考えられない地形や気候。
本来なら存在し得ない鉱石や植物、そして生物。
それらの生態系は、点在する魔溜域ごとに異なる変化を遂げている。
だが、共通して言えることが一つだけあった。
――そこは、人間が気軽に足を踏み入れていい場所ではない、ということだ。
この神楽ノ国にも、魔溜域は数多く存在している。
そしてそれらはすべて、魔導総本院と国によって厳重に管理されており、特定の場合を除いて、一般人が立ち入ることはできない区域となっている。
そして、そういった実情を子供たちは基礎知識としてすでに教えられている。
だからこそ、“魔溜域”という単語に恐怖を覚えたのは、至極当然の反応だった。
しかし、そんな子供たちに向かって、佐藤は苦笑いを浮かべながら言った。
「ごめんごめん。こっちを先に言えばよかったね。今、魔溜域って言ったけど、ここは危険度レベル2の魔溜域なんだ。だから危険はないよ」
危険度レベルとは、文字通りその魔溜域がどれほど危険かを示す指標である。
魔溜域は、その危険性に応じて六段階に分類されていた。
*危険度レベル1
魔素濃度が基準値よりやや高いものの、それに伴う地形学的・生物学的変化は確認されない(もしくは極めて軽微な)区域。
魔導士に害が及ぶ可能性は、限りなく低い。
・魔力濃度:一般人の場合、軽度の魔力酔いを起こす可能性はあるが、魔導士であれば問題はない。
*危険度レベル2
魔素濃度が基準値より高く、それに伴う地形学的・生物学的変化は見られるものの、魔導士に害が及ぶ可能性は限りなく低い区域。
・魔力濃度:一般人では軽度、場合によっては中度の魔力酔いを起こしやすいが、魔導士であれば問題はない。
*危険度レベル3
魔素濃度が基準値よりかなり高く、それに伴う地形学的・生物学的変動が確認されている区域。
魔導士であっても、害が及ぶ可能性がある。
・魔力濃度:一般人は中度から重度の魔力酔いに陥り、人によっては命の危険がある。魔導士であっても、耐性の弱い者は軽度の魔力酔いを引き起こす。
*危険度レベル4
魔素濃度が基準値を大幅に超えており、それに伴う地形学的・生物学的変動が顕著な区域。
魔導士であっても害が及ぶ可能性が高く、状況次第では命を落とす危険がある。
・魔力濃度:一般人は重度の魔力酔いに陥り、命を落とす可能性が高い。魔導士でも、十分な耐性を持たない者は軽度から中度の魔力酔いを起こす。
*危険度レベル5
魔素濃度が基準値を遥かに超えており、それに伴う地形学的・生物学的変動も激しい区域。
魔導士であっても、命を落とす可能性が高い。
・魔力濃度:一般人は重度の魔力酔いにより、ほぼ確実に命を落とす。魔導士でも耐性がなければ中度から重度の魔力酔いに陥り、人によっては命を落とすこともある。
*危険度レベル6
魔素濃度が測定不能なほど異常であり、それに伴う地形学的・生物学的変動も極限に達している区域。
魔導士であっても、生存はほぼ不可能とされる。
・魔力濃度:一般人は確実に命を落とし、魔導士であってもほぼ命を落とす。
この指標を見れば、危険レベル2は魔素の影響を受けた区域ではあるものの、魔導士であれば魔力酔いを起こすこともなく、まず危険はないと分かる。
子供達は佐藤の言葉を聞き、安堵の表情を浮かべた。
「この魔溜域――この場所で、君たちには魔力知覚測定検査を受けてもらうよ」
「ここで検査するのかー。どんな検査をするんだろう?」
「だね。てっきりそれっぽい設備が整った施設に移動すると思ったら、森だもんね」
ひまりと剣磨はそう言葉を交わす。
他の子供達も同様に、ここで何をするのかと不思議そうな表情を浮かべていた。
佐藤はそんな皆の疑問に答えるように、この場所での試験方法について説明を始める。
「ここでする検査の方法だけど……端的に言えば、森林散策だ」
……森林散策?
子供達がさらに訝しむのも無理はない。魔力知覚測定検査で森林散策など、まったくの想定外だったからだ。
「ま、そんな反応になるよね。でも聞き間違いじゃないよ。皆にはこの森を歩いてもらう。あそこに5つの道があるのは分かるかな?」
佐藤が指差した先へ、子供達は視線を向ける。
そこには彼の言う通り、この開けたスペースから森の中へと通じる5つの道が並列にあった。
「この開けたスペースは、この森のちょうど中心に位置している。あの5つの道は森の中をそれぞれ別ルートで巡る様になっていて、最終的にここへ戻ってくるようになっているんだ。ほら、あそこが出口だよ」
佐藤がそう言って指し示した場所には、確かに同じく5つの森へと繋がる道があった。
「皆には、入り口側の道から森の中へ入って、道なりに歩いてもらう。そしてその中で、ある事をしてもらう」
佐藤はそこで、手にしていたボタンを押した。
すると、皆のカードからホログラムが展開される。
表示された画面は縦線で二分されていた。左側にはひらがなの文字表。右側には森の地図が映し出されている。地図の中心には木のないスペースが描かれており、そこが今自分達のいる場所であることを示していた。
「君たちが森の中に入ってしてもらう事は二つ。目の届く範囲にいる動物探しと、目の届かない範囲にいる動物探しだ」
「? なぞなぞ?」
「いや、それはないだろうけど……これだけじゃまだ何のことか分からないな」
ひまり、そして剣磨をはじめ、多くの子供達が佐藤の言葉の意味を測りかねていた。
「この森は危険レベル2だって、さっき言ったよね? つまり魔導士にとって危険はない。でも魔力の影響を受けている場所だということだ。そして、ここには魔力の影響を受けた特殊な動物達――“魔法生物”がいる」
佐藤は自分達を囲む森へと視線を向けた。
「この森は“魔隠の森”って呼ばれている場所でね。ここにいる動物達は、魔力感知の能力がないと、魔力を感知するどころか姿を見ることすら出来ないんだ」
――!
その言葉を聞いた瞬間、子供達は慌てた様子で周囲をキョロキョロと見渡した。
自分に見えていないだけで、すぐ近くにいるのではないか――そう思ったのだ。
そんな子供達を見て、佐藤は笑う。
「ハハ、大丈夫。まだこの場所にはいないよ。動物たちは、この検査のために生息エリアをある程度区分けされている。あの森への道に入ったら、ちらほら姿を見せるようになるよ」
それを聞き、子供たちはほっと息をついた。
少なくとも、現時点で自分に魔力知覚の才がないと断定されたわけではないらしい。
「で、その魔力知覚の才能があると見える動物たちなんだけど――同じ“見える”でも人によって差があるんだ。少しだけ才能があれば見える動物。並程度あれば見える動物。そして、高い才能がなければ見えない生物。魔力知覚の深さによって、見える動物の種類が変わるんだ。皆、手元のホログラムの左半分が文字表になっているよね?」
佐藤はそこで、皆が気にしていたホログラムへと話題を移した。
「森に入って動物を見つけたら、その動物の名前と、特徴を何でもいいから記入して、文字表の左下にある“確定”ボタンを押してほしい。この森にいる動物は魔法生物とはいえ、ぱっと見で何の動物か分かる見た目をしている。種類で悩むことはないはずだよ。ここまでで質問は?」
「えっと、特徴っていうのは?あと、数種類の動物がいるって事ですけど、そもそも動物が僕たちの前に出てこないってこともあるんじゃ?」
一人の男の子が手を挙げて尋ねる。
「いい質問だね。特徴というのは、さっきも言った通り、見た目でどんな動物かは分かるんだけど、やっぱり魔法生物らしく、角があったり、色彩が普通と違ったり、少しだけ変わった特徴がある。それを書いてほしいんだ。」
佐藤は軽く肩をすくめた。
「まぁ、不正防止対策だね。確率は低いけど、見えない子が適当に動物の名前を書いて当てる可能性もゼロじゃない。だから、その動物特有の特徴まで含めて答えてもらう、というわけさ。……そして、二つ目の質問だけと、」
佐藤は子供が質問してきたもう一つの動物と出会えない可能性について語る。
「これに関しては大丈夫だよ。さっき動物達の生息エリアは区分けしているっていったよね?これは君達が全ての動物達に一回は出会う様に配置してるって意味でもあるんだ。だからもし才能が高いなら全ての動物達を見ることが可能だから、そこは安心して欲しい。それに“見える”=その動物からは魔力を感じれるって事だから、魔法生物が自分の近くにいたらわかる筈だよ」
佐藤は一度言葉を切り、続ける。
「今説明したのが、見える範囲の動物探しだ。そして、もう一つ。見えない範囲の動物探し。これがホログラムの右側の画面に関わってくる」
佐藤は、次の説明へと移った。
「今ホログラムに映し出されているその地図。見て分かる通り、これはこの森の地図だ。このホログラムの地図は、スマホの地図アプリみたいに、指で触った箇所にピンを打つことができるんだ。試しに触ってみて」
子供たちは言われた通り、地図に指を触れる。
すると、指で触れた場所にマーキングのピンが設置された。
「皆、ちゃんと触れてピンができたかな? そのピンは消すよ」
佐藤は、自身が持っているカード端末――親機から操作し、皆のカード端末――子機に表示されていたピンを消した。
「皆には、これを森に入った後、魔力を感じた場所……つまり、目に見えない範囲にいる魔力生物がいる位置に打ってほしいんだ」
そう、やや抽象的な説明をする佐藤。
それに対して、九割強ほどの子供たちは訝しげな表情を浮かべた。
魔法が主流の世界とはいえ、厳格な法整備と、国と魔導院による魔法の完全統制によって、魔力を放つ生物や物が身の回りに存在することは、そもそも少ない神楽ノ国。
それゆえに、魔力を感じるという経験自体がない子供たちにとって、視界には見えない場所の魔力を感じ取り、その位置にピンを打つという行為は、うまくイメージできないのである。
ちなみに、残りの一割弱は、身近に魔導士がいたり、魔力を外に放出する魔道具を所有していたりと、魔力感知の経験がある子供たちだった。
その子供たちの訝しみを感じ取った佐藤は、苦笑いを浮かべる。
「皆が言いたいことは分かるよ。でも、こればかりは実際に経験しないと実感として掴めない感覚だからね。一応、魔力感知が使える僕の感覚で説明すると、意外とピンポイントで“この辺りに魔力を感じる”って分かるものなんだ。魔力感知の才能があるなら、感知した場所をピンで打つのは何も難しいことじゃないよ。……さて」
佐藤は子供たちを見渡し、一呼吸置く。
「今説明したのが、魔力知覚検査の概要だよ。目に見える範囲の生物で魔力知覚の“深さ”を。目に見えない範囲の生物で魔力知覚の“広さ”を検査する。――ここまでで、何か質問はあるかな?」
子供たちは誰も手を挙げない。
それを確認して、佐藤は小さく頷いた。
「うん。大丈夫そうだね。それじゃあ今からパパっと、森へ入る組分けと順番を決めておくよ」
佐藤はそう言うと、自身のカードを操作した。
すると、子供たちのカードに「~番」、そして「~番ルート」と、二種類の番号が表示された。
「皆のカードに表示された、最後が“番”で終わる数字。これは検査を受ける順番を表している。そして、もう一つの、最後が“ルート”で終わる数字は、君たちが入る森へのルートだよ。僕たちから見て一番手前の入り口が一番で、そこから奥にいくごとに二番ルート、三番ルートと続いている。今、カードに“一番”って表示されている子は、森へ最初に入るってことだから、同じくカードに表示されている自分のルート番号の入り口前に、もう集まっておいてほしい」
その言葉を受け、幾人かの子供たちが森の入り口前へと移動する。
集まった人数は五十人。
どうやら、一つの道につき十人ずつ、同時に入っていく仕組みのようである。
「うん。最初の組は集まったね。それじゃあ最後に、一つ忠告を言っておくよ」
佐藤はそこで、少しだけ声の調子を引き締めた。
「この検査中は、常に君たちのことを監視している。万が一、森の中でトラブルが起きたとき、すぐに駆けつけられるようにするためなのはもちろんだけど、一番の目的は、他の子のカードを覗くような不正を見逃さないためだ。――皆んなのカードから出ているホログラムは少し特殊でね」
子供たちの視線が、一斉に手元のカードへ向く。
「そのホログラムは、スマホの覗き見防止フィルターみたいに、真正面から見ない限り画面が真っ黒に見える仕様になっている。もし、あからさまに真正面から他の子の画面を覗いていたら、不正をしたと見なすから、そこは気をつけて」
佐藤はそう言って、子供たちに釘を刺した。
「僕からは以上だ。それじゃあ、いろいろと説明が長くなったけど――今から検査を始める」
佐藤は、森の入り口に集まった最初に検査を受ける子供たちへ視線を向けた。
「今、入り口前に集まった子たちは森へ入っていいよ。そして次の二番手の子たちは、一番手の子たちが行ったら入り口前に集合して」
こうして、魔力知覚検査が始まった。
「ひまりさんは何番目?」
佐藤による魔力知覚検査の説明が終わり、検査がスタートしたところで、剣磨がひまりに尋ねる。
「私は三番目の二番ルートです。ケンマは?」
「僕もだよ! よかったー。ひまりさんと一緒で」
ひまりと同じ順番で、さらに同じルートだと分かり、剣磨は安堵する。
「ケンマ、私と一緒がよかったの? もしかして寂しがり屋さん?」
「ち、違うよ! 寂しいとかじゃなくて、やっぱこういうのって知ってる人と一緒の方がいいじゃん! ひまりさんはそう思わないの?」
剣磨は、ひまりの言葉を受けて慌てて釈明する。
そんな剣磨に、ひまりはジト目(もともと半目ではあるのだが、)を向けた。
「……ちょっとしたジョークなのに。そんなマジにならなくても」
「! そ、そうなんだ……。って、いやいや。ひまりさん基本無表情だから、本気なのか冗談なのか分からないよ」
ひまりが冗談で言っていたと分かり、剣磨は恥ずかしくなる。だが、本気かどうか分かりにくいひまりにも多少の責任はあるはずだと思い直し、そう言い返した。
「むぅ。分かりませんでしたか。どうやらまだケンマには、ひまりのジョークは早かったようで」
「時間が経てば分かるようになるの? 普通に難しいよ」
「では、ジョーク無しで言うと……私もケンマと一緒で嬉しい。これはホント」
「!!」
ひまりからの直球の言葉が、真正面からぶつけられた。
「そ、そっか。ひまりさんも嬉しいんだ」
「うん」
ひまりの飾らないシンプルな言葉に、剣磨は嬉しいやら恥ずかしいやらで、少し挙動不審になる。
「? ケンマ、なんか少し顔赤くない?」
「えっ。そ、そうかな?」
「うん。もし熱があったら大変。今ここに体温計はないし――。確かアニメだと、こういう時はおでことおでこを重ね合わせたら熱があるか分かるとか――」
「いや、大丈夫だから!! 全然元気だから!! 気にしないで!」
「そう? ならいいけど」
恐ろしい確認方法を口にするひまりに、剣磨は全力で拒否する。
もしそんなことをしてしまったら、心拍も血圧も爆上がりして、本当に体調を崩しかねない。
「そ、それよりも、僕たちの番まで少し間あるだろうし、それまで適当にお話ししておこうよ」
「ん。そうしましょう」
こうして剣磨とひまりは、自分たちの番になるまで、たわいもない話をして待つのであった。
最後までお読みくださりありがとうございました!




