自己紹介
私の生活
着信が10件。メールが5件。正直めんどくさい。
私は、ベッドから這うようにしておりた。
愛からの着信がある。
電話してみよぉか。
と、思いながら寝てしまった。
愛からの電話でまた目が覚めた。
「ねぇ、ちょっと相談あるんだけど来てくんない?」
愛はいつも一方的だ。
「いいよ。いまどこ?」
「ビクドン」
服を着替えると直ぐにビックリドンキーに向かった。
いつもの場所だ。
席につくなり、愛は彼氏の愚痴をこれとばかりにぶちまけた。
そんなに嫌なら別れたらいいのに。
4時になった。そろそろ行かないと。
バイトの時間だからと、愛と私はそれぞれの道を帰った。
私の仕事
化粧をして、いつものように仕事をこなす。
たまに、水商売なんて、っておもう。でも、止めようとまでは思わない。愛からの着信が来ている。
かけ直すなり、愛は、再び彼氏の愚痴をこぼし始めた。
愛の声が空気のように通り抜けていく。
家に帰ると、まずやることは化粧落とし。
あっちゃんからの着信に気づいた。
私の男
あっちゃんに会うと落ち着く。っというより1人でいるよりはまし。いつものように、2人で朝がくるのを待っていた。
あっちゃんが私の中に入っていく。別ににエッチが好きな訳でない。ただ、寂しかった。この男は、どうして私の隣にいるのだろう。
ふと思う時がある。朝になると、私はあっちゃんより先に起きて2人分の食事を作る。作るといっても、パンを焼いて、目玉焼きをのせるだけ。
それだけでよかった。一緒にいてくれるだけで。
私の家族
私は、友達の結婚式に参加するため、愛媛の実家に帰った。
家に帰るとお母さんは、身知らぬ猫を抱き抱えて私を迎えてくれた。
その猫どおしたの?私が聞くと、母さんは、買ったのよ。可愛かったから。とさらりと答えた。
私にはダメって言ったのに。
私は、子供の頃そう言われたのを思い出した。
久しぶりの一家団欒に私はぎこちなさを感じた。
ごく普通の家庭で普通に育ってきた私。
もし、私が水商売をやっていて、二股男と付き合ってますって言ったら怒るだろうか。それとも、がっかりするのだろうか。叱ってくれるだろうか。
鍋を囲んで、家族に嘘を交えた私の都会暮らしの話をした。お兄ちゃんが帰ってくるまでは。兄ちゃんは、将来薬剤師になると言って一年の浪人生活の末、大学生という位に昇格し、親への敬意を示した。
お兄ちゃんは、自分の器に肉や野菜をよそいながら、大学生活について私たちに講義を開いた。
鍋の中で椎茸が小さくなっている。
それをすくって、ネコのそばに置いてみた。が、椎茸は猫にも見放されたようだ。
猫は、母の隣で喉をグルグルと鳴らしていた。
私の友人
「最近どうしてる?」
声の主は、仲のよかったかおりちゃん。でも何故か生徒会で生徒会長をしていたことぐらいしか思い出せない。
結婚式はというと、まあまあ良かった。料理もいいし、同級生にも会えたし。
結婚したのは、中学の時、運動会でリレーの時バトンを落としてしまったまゆちゃん。私とは中学1の時からの仲だ。
まゆちゃんはきれいだった。中学の時よりずっと、肌が白く、声も高くなっていた。緊張のせいだろうか。
私の悩み
大阪に帰るなり私は、部屋の片付けを始めた。久しぶりに部屋を見渡すと、汚くみえた。というより、汚いと改めて実感した。
一週間、二週間と、毎日がローテーション感覚で過ぎてゆく。
ちょっとの変化も気づかないくらいのスピードで。
久しぶりにあっちゃんとけんかした。原因は、私の仕事。客とのメールにハートの絵文字が多かったのが気に入らなかったらしい。あっちゃんが怒鳴ってる。初めてだった。
夜の仕事やめろよ。あっちゃんは口癖のように言っていた。今日も、また。
ぢゃあ、愛と別れろよ。私はいつもそう思ってた。でもいわない。
言ったらおしまいだから。怒鳴り声の隙間から、かおりの「最近どうしてるの」という、声がきこえた気がした。
家に帰って、化粧を落としシャワーを浴びて寝た。
私の趣味
それでも、夜になると仕事に行き、
ただ働いた。
寂しかった。
でも、1人になるのはことのほか、容易く毎日が充実していた。
愛といえば、相変わらず、私を呼び出してはあつしの愚痴を私に語った。
私はそれをただ黙々と聞いた。愚痴だけではない。のろけ話やちょっとした口癖まで。
あつしと会わなくなって1ヶ月がたった。
私が何気にテレビをみていると、あつしの車でよく聴いkillerqueenたが流れていた。映像を見るのは初めてだった。誰が歌っているかは、分からないが、私を見つめている。そう、おもった。ゾクッとするような瞳に、私は吸い込まれていった。
私は、仕事を辞めた。
っというか、行かなくなった。化粧もせず、おしゃれもせず、毎日1人で時間がたつのを待った。部屋でkillerqueenをよく聴いた。決して、誰かが慰めてくれるわけでも、励ましてくれる訳でもない。ただ、その瞳は、私をみている。そぅ、思った。
寂しかった。でも、1人になるのはことのほか、容易く毎日が充実していた。
愛といえば、相変わらず、私を呼び出してはあつしの愚痴を私に語った。
私はそれをただ黙々と聞いた。愚痴だけではない。のろけ話やちょっとした口癖まで。
あつしと会わなくなって1ヶ月がたった。
私が何気にテレビをみていると、あつしの車でよく聴いた、killerqueenが流れていた。映像を見るのは初めてだった。歌っている男は薄っぺらい箱の中から、私を見つめている。そう、思った。ゾクッとするような瞳に、私は吸い込まれていった。
私は、その日を境に仕事を辞めた。っというか、単に行かなくなった。1人ぼっちの楽園に、生活は染まっていった。化粧もせず、おしゃれもせず、killerqueenを何度も聴いた。決して、慰めてくれるわけでも、励ましてくれる訳でもない。ただ、その瞳と、流れるような曲調にひかれた。
私の気持ち
何日か経ってあつしからの着信が鳴った。彼は私に、会いたいらしい。
久しぶりに化粧をしようと、鏡を見ると、そこには22歳で自分をなくした、どうしようもない女がいた。
あつしの車は相変わらず、タバコとバックミラーに吊るしてある変な匂いのでる紙の匂いがした。
あつしは、車の中でタバコを吸いながら待っていた。
「寄りを戻したい」
と、いってきた。
私には、そんなこと、どうでもよかった。あつしが何かを話している。でも、上手く聞き取れない。まるで金魚の口でも読んでいるかのように思えた。
あつしの口の動きが止まると車から音楽だけが聞こえてきた。静かで優しい音だった。
私は、素直に思っていたことを彼に話した。夜、働くのを辞めたこと。あつしのことが好きだということ。でも、あつしとは、もう、関係を終わらせたいということ。
私の決意
私は、その日以来あつしに会っていない。何の資格も経験もない私なので、働くところは、とらあえず夜のコンビニだった。「夜の」
というのは、単純に夜の方が楽な気がしたからだ。相変わらず面倒くさがりで、不器用な私だがまあ、よしとすることにした。
退屈な毎日が続いたある日、母から一本の電話が入った。
私の中の私
電話の内容は、結婚式で一緒だったかおりちゃんが亡くなったということだった。頭がよく、生徒会長だったかおりちゃん。
何の用意もせず実家に帰ると、母に怒られた。葬儀は初めてで足が痛かった。悲しいというよりは、信じられなかったのだ。どうしてみんな泣いているのかわからないくらいだった。
葬儀の後、まゆちゃんと、中学のアルバムを見ることにした。あの頃は、楽しかった。勉強はあまりできなかったが、とにかく、楽しかった。私にとっては、あの頃が頂点だったのかもしれない。何枚かくだらない写真をみていると、ある一枚の写真に目が止まった。運動会の写真だった。リレーでバトンを落としてしまった女の子の写真。そぅ。あの日バトンを落として泣いていたのは、かおりちゃんだったのだ。