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「お邪魔しまーす」
そう言ってノックもしないで、瞳は天文部の部室のドアを開けた。
「お邪魔します」
雨は瞳のあとについて、部室の中に移動をする。
すると、その部屋の中には二人の男子生徒の姿があった。一人は雨もよく知っている同じクラスの生徒である森川雫くんで、もう一人は雨の知らない違うクラスの男子生徒(おそらく東山くん)だった。
「こんにちは、辻野さん。遠野さん」
にっこりと笑って、古い木製のテーブルの上で、なにかの書き物をしていた森川くんがそう言った。
「こんにちは」雨は言う。
だけど、瞳は軽く手をあげただけだった。
「えっと、遠野さんは凪とは初めて会うんだよね」雨を見て、森川くんが言う。
その声に反応して、大きな白い望遠鏡の横で、静かに本を読んでいた小柄な男子生徒が雨の前まで移動する。
「初めまして。東山凪です」
と東山くん(やっぱり東山くんだった)は言って、その手を雨に差し出した。
「初めまして。遠野雨です」
雨はそう言って、東山くんの手を握った。
東山くんは、すごく綺麗な顔をしていて、なんだかぱっと見ると女の子のようにも見える、男の子だった。(背丈も雨と同じくらいだった)
「じゃあ、顔見せも終わったところで、早速計画を立てますか」瞳が言う。
「うん。そうしよう」森川くんは言う。
それから二人は古い机を移動させて、簡易型の会議室のような空間を作ると、それぞれ北と西の位置にある椅子に座った。
雨は南にある椅子に座り、東山くんは東にある椅子に座った。
それから、天体観測のための話し合いが始まった。