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遠野  作者: 雨世界
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 愛は雨と同じように東中学校の制服を着て、その手に卒業証書の入った筒を持っていた。

「みんなで写真を撮るんだって。一緒に行こう」

 桜の花びらの舞う風の中で、愛が雨に手を伸ばして、にっこりと笑ってそう言った。

「うん。すぐ行く。でも、もう少しだけ待って」

 雨は言う。 

 雨が待ってと愛に言ったのは、涙を拭う時間が欲しかったからだった。

「……わかった。じゃあ、あっちで待ってるから、なるべく早く来るんだよ」

 すぐに雨の気持ちを察してくれて、愛は雨にそう言った。

「ありがとう。愛」

 雨は言う。

 すると愛はまた笑い、それから雨にピースサインをして、みんなのところに戻っていった。

 遠くから瞳と、それから森川くんと東山くんが雨に小さく手を振っているのが見えた。

 雨はみんなに手を振り返してから、もう一度だけ桜を見た。

 雨はハンカチを取り出して目元を拭った。

 桜の花びら。よく見ると淡い白色をした桜と、透き通るような青空と、枝の間から見える眩しい太陽の光は、木漏れ日になってきらきらと光っている。

 そのどれもすべてが美しかった。

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