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潤わしの瞳  作者: 椎野守
第二章
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中学一年生 夏休み

 引っ越す前の幼馴染みが、夏休みを利用して遊びに来てくれることになった。ちょうど一年前の夏休み以来の再会になる。


潤瞳(ひとみ)、元気にしてた?」

「メグー、ひさしぶり。遠かったでしょ」


 メグは幼稚園の頃からの親友だった。色々なことがあった小学校時代、どんなときもメグは私の味方だった。


「手紙で地図を送ってくれてたから、迷わずにたどり着けたよ」

「よかった。ねえ、上がって。二階が私の部屋なんだ」

「じゃあ、これ、お土産。お母さんから」

 メグは、持っていた紙袋を私に差し出す。

「あ、(あかね)ちゃんとこの水羊羹(みずようかん)!おかあさんこれ大好きだよ、ありがとう」

「んーと、おばさんは?」

「おかあさん?平日はパート行ってるから、昼間は私だけなんだ。夕方には帰ってくるよ」

「そっか、じゃあ、おじゃましまーす」


 一年ぶりの再会だったけれど、メグとは、昨日も一緒に遊んでいたみたいに、以前と変わらず話をすることができた。


 少し小麦色に焼けた健康的な体も、スポーティーなショートカットのヘアースタイルも、以前と変わらず、とても似合っていた。


 お互い、この一年の間にどんなことがあったのか、披露(ひろう)しあった。


 ()ほど私のことが心配だったのか、転校当初の私の様子を話しているときは、固唾(かたず)をのんで聞き入っていた。私の話が小学校から中学校へと移り変わるにつれて、メグの表情が次第に柔らかく、安堵(あんど)に満ちた表情へと変わっていくのがわかった。


 そういった表情で話を聞いてくれることが嬉しくて、中学校に入ってからの話は、思わず身振り手振りも加えながらの熱弁になっていた。


「そっか。安心した。なんか、心配して損したー」

「う、うん、なんかね、優しい人が多いっていうか、のんびりしてるっていうか、そういうのがほんと、凄く助かる」


 知らず知らずのうちに熱弁になっていたのが恥ずかしくて、私は両手で顔を(あお)ぐようにパタパタとしながら、落着きを取り戻そうとしていた。


 メグはそんな私の顔を、じっと見つめている。


「ふーん、そっかそっかぁ。それは良かった良かった」

「ほんとにね」

「……それで、好きになっちゃったんだ?」

 メグは、今度は横目で私の顔を(のぞ)き込むような感じで、そう尋ねてきた。

「んー、うん、好き。なんか可愛いし、温泉とかもあるし、この町」

「あー、はー、そうだね。いい町だよね、ハハー」

 メグはズルっと肩を落とした。

「なに?メグ、どうしたの?」


「ん、えーと、そっちじゃなくてそのー、前のそのー、ね、好きなんでしょ」

「ん?好き?何が?」

「だから、前の席の男の子!」

「は?、な、なに言ってんの?意味わかんない!」

「や、意味はわかるでしょ」

 めちゃくちゃ冷静なメグの返事がかえってきた。

「ちょーっちょっちょっちょ、ないない、ないから」

「そう?それにしては、熱心に話してたからさ。何かあるのかなーって」


 メグは疑り深い目を私に向けながら、半信半疑といった様子である。


 同級生の男の子に対して、好きとかそういったことは、まだよくわからなかった。前の席の男子生徒にしても、それほど親しいという感じでもない。不思議な関係といえば不思議だけど。


 その日、メグは私の家に泊まっていくことになっていた。メグも一緒に晩御飯を食べて、一緒にお風呂にも入った。私の部屋に布団を並べて、寝る時間が迫っている。部屋の電気を消して、それぞれ布団に横になった。


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