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潤わしの瞳  作者: 椎野守
第二章
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小学六年生 夏

 夏休み最終日の夜、私は登校初日の服装をどれにするか、おかあさんと相談しながら決めあぐねていた。


 以前通っていた小学校は、男女とも指定の制服があったので、学校に着ていく服装で悩むという経験が無かった。


 おかあさんは、前の学校の制服を着ていけばいいと言っていたが、それは嫌だった。他の生徒は皆私服なのに、私だけ制服というのは(わる)目立(めだ)ちしそうな気がしていたし、そもそもその制服が好きでは無かった。


 色々迷ったあげく、薄いグレーのワンピースを着て行くことにした。大人(おとな)しめの印象で、それなりに気に()っているものである。


「明日、大丈夫かな?」

「大丈夫よ、自分らしく素直にしていれば、みんな仲良くしてくれる」


 おかあさんの言葉を信じていないわけでは無かったけれど、やはり少し不安だった。


 でも、おかあさんの言葉はうれしかった。

 


 翌日から私は、新しい小学校に、転校生として通学を開始した。


 担任の先生と一緒に教室へ入り、黒板の前に立って自己紹介をする。テレビで何度も見たことがあるようなシーンの、登場人物になっているようで緊張した。


 転校生というのはとても目立つ存在だ。何をするにも注目を集めてしまう。表情、仕草、言葉遣いでどんな性格なのか、品定(しなさだ)めをされている気分だ。


 私は、(つと)めて明るく快活(かいかつ)に振る舞うようにしていた。生まれ持った外見的な要素から、私のことを誤解されるのだけは嫌だった。新しい生活がスタートしたのだから、何も悪い印象を与える必要はない。良い印象の方が、いいに決まっている。自分に言い聞かせて、少し背伸びをした。


 土地柄(とちがら)なのか、新しいクラスメート達は温厚でのんびりとした性格の人が多く、私を(こころよ)(むか)え入れてくれた。私の心配は、杞憂(きゆう)に終わった。


 ここなら、この町でなら、楽しい学校生活を送れるかもしれない。そう思うと、心が軽くなった。


 小学校を卒業する頃には、クラスメートはもちろん、他のクラスにも友達と呼べる人ができていた。


 父の転勤をきっかけに、私の学校生活は大きく変わった。


 とても、良い方向に。


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