16・5-19 私の天使と毒薬 (マァサ side)
またまた懲りずに
お邪魔いたしますすすー(´・ω・`)
「伯爵夫人の服用されている薬を調べたところ
薬では無く 毒薬だったとの報告が来た。」
公爵様の報告は 私達の明るい雰囲気を一瞬で凍らせた。
背筋に冷たいものが走る。
公爵夫人の横で 朗らかに笑んでいたお母様は青ざめ
私達は思わず駆け寄る。
お父様は正面に跪き 顔色を窺いながら手を取り
「今の体調は どうだい?」と気遣う。
報告の内容にショックを受けたお母様は
狼狽えながら えぇ…大丈夫よ…と小さく返していた。
隣の公爵夫人も気遣わしげに 背中をさすって下さる。
公爵様のお話では お母様がこちらに到着した際
体調改善のために医師から処方され 飲んでいた薬を
公爵家の侍医に預け
確認するよう指示を出して下さっていた。
…お母様の薬を処方している医師とは
お母様が嫁いできた頃からの付き合いだと聞いており
周りからの評判は 良かった。
体調を崩した時 医師から処方された薬で
私達は何度も快復してきた。
お母様の不調以外は。
私達家族5人の顔は真っ青だった。
長い付き合いの中で 信じていた人達の一人だったから。
ミーナを疑った事はあっても
処方された薬を疑ってはいなかった。
公爵様は 専門の話は専門家から聞くべきだろうと
待機させていた専属侍医を呼び 説明を求めて下さった。
毒は 徐々に心臓を弱らせ 命を奪うものだった。
毒の作用は
服用を続けると一週間で 結果が出るように作られていた。
そこで私達家族は はたと動きが止まる。
いったい いつから…
医師はちょうど一週間前に診察に来て 薬を置いていった。
そして
お母様の薬は 残り一包だった。 最後だったのだ。
だけど その前の薬は… それも本当に薬だったのか?
お母様は 青い顔で身体を小さく震わせている。
侍医は憐れむ視線を向けながら 続ける。
「こちらは最後の一包だとお聞きしました。
夫人の心中 お察しいたします。
しかし 申し訳ありません。
この先 ご不快な物言いになる事をご容赦ください。
こちらは残り一包なので
続けて服用していたと推測いたします。
ですが 不思議な事に
夫人の身体が死を思わせる状態では無いのです。
これを飲み続けていたなら 今 起き上がる事は出来ません
そして この毒には中毒性があり
弱っていても 最後まで摂取する様に作られています。
その症状につきましても 夫人に中毒症状は見られません。
なぜでしょうか…
またこれを処方した者の腕は良く
精製した知識は 私のような薬師のスキル持ちか
もしくは多くの知識を蓄えた者か
各公爵家に仕える程の侍医 または王宮の侍医か
…もしくは スキルを隠している者の仕業か。
いずれにせよ 立場も能力もある人間だと思われます。」
ここまで聞いて 応接室の皆は 青ざめ言葉を失っている。
伯爵家をここまで周到に狙う者がおり
それはかなりの立場を持つ者だろうと 推測された。
「伯爵夫人 お聞きしたいのですが
毒が効かない要因に 何か心当たりは無いでしょうか。」
お母様は
あまりの恐怖に涙を溢しながら言葉を探している。
公爵夫人に隣を空けていただいたお父様は
横から優しくお母様を抱きしめ
私はお母様の手を包み
弟達は背中や肩を摩りながら お母様に寄り添った。
お母様は声を震わせながら
「わかりません。
あまりの事に 私はなんと答えたら良いか…。」
「お辛い時に申し訳ありません。
何かお心当たりでもあればと思い 確認いたしました。
毒に打ち勝つ何かを口にされていたり
無毒化される術をかけられていたり…
それとも飲む際に
他の薬と入れ替えていた者がいたのでしょうか。」
「それは… 薬を替える事は出来ません。
私が管理しており そのまま服用していたので。
そうですね…
薬を飲む時 ミーナが必ず付き添っていました。
その時には 必ずこの薬湯も飲んでくださいと…
いつものあの子らしくない 強い口調で言われていました。
ミーナの話では 医師にそのように言われたので、としか
言いませんでしたけど…
あの子とは仲が良かったので
薬湯を勧められるまま 口にして…
…あぁ そうね ミーナは私達を裏切っていたのよね… 」
お母様は顔を覆い泣き出してしまい
お父様がまた優しく抱きしめる。
私達も裏切りを思い出し 複雑な気持ちで俯いていると
あぁ… その薬湯が怪しいですね
と侍医は思案顔で話を進めてきた。
ミーナという娘が 何かを知っているかもしれないですね。
の侍医の言葉に
静かに様子を見ていた公爵様が
それなら本人に確認してみよう
と毒について ミーナを尋問するよう
また 薬を渡した医師の捕縛を命じていた。
その時の私達は 自我を手放し
生きた屍のようなミーナの姿を 思い出していた。
報告は粗方終わったようで 毒やミーナについての報告は
明日改めて、という流れになった。
大人達が部屋を後にする中
エルヴァラ様が 声高らかにお声をかけてきた。
「皆んな! 気になる事はあってもお泊まり決行よっ!」
少し離れたところから
「エヴァァー… よくこんな空気の中で言えるなぁーー… 」
エルディン様の呆れた声が聞こえてきた。
あの後
エルヴァラ様のお泊まり会は スムーズには進まなかった。
公爵夫人 & 侍女のサラさん vs エルヴァラ様
言い合いが始まったからだ。
本日も お読みいただき
ありがとうございますすすピーカー(´・ω・`)♡高音質