16・5-16 私の天使と威嚇 (マァサ side)
またまたお目汚し
失礼いたしますすすー(´・ω・`)ぺこり
「さぁ! 今日は皆んなで仲良く お泊まりよっ!」
満面笑みのエルヴァラ様が
皆んなの前で
両手をパタパタと小鳥のように 振り回していらっしゃっる
きっと嬉しさを 身体で表現されているのだろう。
楽しそうに
皆んなに声をかけられるお姿は 大変に可愛らしい。
このまま エルヴァラ様のおそばで過ごせる。
無事に会えた弟達
今も頑張っていらっしゃるお父様
ご無事だと確認できたお母様達と一緒に
このまま 公爵邸でお世話になる事を
今更ながらに夢のように感じ 幸福感に包まれる。
治療のため 数日間お世話になっている時も
私にとっては 夢のような時間だった。
宝物のように
天使との大切な想い出を胸の中に仕舞い
生きていく支えにしながら
憎々しいボンバ親子に 搾取される人生を
耐え続け生き抜こうと 覚悟を決めた時もあった。
エルヴァラ様に出逢って
今までなら考えられない様な出来事や 変化が
怒涛のように 私達に訪れた。
良い流れとして。
これから先 何が起こるかわからない中
エルヴァラ様のそばで過ごせる幸福感から
どんな事が起きても 前向きに乗り越えて行けると
私自身を信じる事が出来た。
私に 前に進む想いと夢と幸せを与えてくださる方。
エルヴァラ様のそばに ずっと居たい。
私の胸の中は その気持ちでいっぱいになる。
今日一日で ヨルドとナイドも
エルヴァラ様に魅了されている。
私達は 素敵な人と出逢えたのだ。
天使からの お泊まりのお誘いに
「はい! 凄く嬉しいです。」
「僕 お泊まりが初めてで楽しみです!」
と 喜色満面の笑顔で嬉しそうに答えている。
それを 温かい気持ちで見つめる。
「私もお友達とのお泊まりは 初めてなの!!
すっごく楽しみよーーー!
マァサはね 治療中だったから
早く治るように 一緒にお泊りは出来なかったの。
私が蹴ったりしたら大変だもの… 」
私を見て 少し恥ずかしそうなお顔をされてから
再び ぱっと笑顔に戻られる。
「あのね、お泊まりはね
一緒のお布団で 夜遅くまでお喋りをして
眠くなったら手を繋いで眠るのですって!
サラが 子供の頃のお泊まりの話をしてくれたの。
それを聞いてから凄く羨ましくて!
だから 夜がとってもとっても楽しみなのっ!!」
無邪気な笑顔の花が咲き
整ったお顔立ちの中の愛らしさが 際立つ。
話の内容から弟達は 手を繋いで寝る自分達を想像し
嬉しさからか恥ずかしさからか 全身を真っ赤にしている。
そこへ
愛らしいエルヴァラ様に ゆらりと近付く影がある。
「エヴァ? え? 何?
…お泊まりって聞こえたんだけど!」
高く整った鼻筋と
艶のある唇しか まともに見えないレイリル様が
慌てた声でエルヴァラ様に 詰め寄る。
その様子を見て ムッとする。
ちょっと!
私の天使に 狼藉を働いたら許さないわ。
腕力も魔力も敵わないから
違う舞台でネチネチと攻撃してやるわ。
…陰湿だけどそれくらいしか 敵いそうなものがないから…
まだ 完全に治癒していない痛みのある身体で
思わず エルヴァラ様とレイル様の間に入った。
「エルヴァラ様は 皆んなとのお泊まりを楽しみに
頑張って来られたのよ。
私や弟達だって その話を聞いて凄く心踊ったもの。
私達にとって初めての
お友達からのお泊まりのお誘いだけど
…何か問題でも?」
ツンとしたお澄まし顔で レイル様を威嚇する。
「え? えぇ…?」
前髪の隙間から少し見える 美しい瞳を白黒させながら
私と弟達とエルヴァラ様の顔を交互に見ている。
いや… 泊まりって…
どう見ても二人は男だろ…?
なんで男が… 俺以外の男が…
青ざめながら独り言のように呟いてから
「なぁ エヴァ!
俺も泊まる! 俺も泊まるからな!!
良いだろ? 皆んなでお泊まりだから良いよなっ!なっ?」
すぐに顔を上げて エルヴァラ様に懇願し始める。
「もちろんよっ!
レイルが来てくれなかったら
私は 怪我していたかもしれないもの。
レイルはいつも守ってくれるから 私の勇者だわ。
いつもありがとう レイル!」
私の騎士はルイが居るから レイルは勇者様よ
と 嬉しそうにレイル様に顔を向けるエルヴァラ様。
あぁ、羨ましい…
心の底に隠した嫉妬が 頭を擡げる。
私もエルヴァラ様を護れる立場になりたい。
這い上がる負の感情を隠し
何も無い顔で お二人のやり取りに視線を向ける。
勇者と言われ 今日の出来事にお礼を言われたレイル様は
見える部分の顔を赤らめながら
エルヴァラ様のお身体に触れないくらいの距離で
ピッタリと張り付く。
「エヴァ いつ男の知り合いが出来たんだよ。」
「今日ね お友達になったのよ!」
「え、友達なら 俺がいれば… 」
「だって レイルはお兄様でしょ?」
「な、なんで兄なんだ!」
「だって前に ずっと一緒に居るって言ってたでしょ?
それってお兄様と一緒じゃない?
それにレイルは いつも一緒に居てくれるでしょう?
お邸にもよくお泊まりしているし
それって家族と一緒でしょ?
そしたら… お兄様になるわよね?
…え、まさか レイルは お姉様になりたかったの?」
「な、なんでだよっ!
…頑張った結果が兄… その上 全く意識されていない…
くそーーー! だから嫌だったんだよ、年上はーー!」
最後は声を張り上げた後
涙目になりながら視線を弟達へ向け 威嚇し始める。
弟達も負けじと 強気な視線をレイル様に送り
エルヴァラ様のそばまで進むと
それぞれが手を握り
驚いているエルヴァラ様へ 無邪気な笑顔を向ける。
あれは レイル様に向けた牽制ね。
ヨルドもナイドもやるわね。
エルヴァラ様はよくわかっていないようで
「皆んなが知り合いになれて嬉しいわ!」
と 二人の手をブンブン振りながら
ニコニコ笑ってらっしゃる。
レイル様は
楽しそうに振られる三人の手を見て 固まってしまった。
男達の争いに参加する気はない。
私は違う方法で エルヴァラ様のおそばに行こう。
エルヴァラ様のそばを賭けた 私達の戦いは
まだ始まったばかりだった。
馬車に乗り込む時も 誰が隣に座るかの争いは
熾烈を極めた。
エルヴァラ様も
若干笑顔が引き攣っておられた。
もちろん隣は 同じ女性の私がしっかり確保。
護衛に運ばれていたので
威圧感で手に入れたのかもしれない。
残りの席は
一席を醜く奪い合う男達に 軽く溜息を吐きながら
三人の隙をついて すっと座ったリンデル様のもの。
これで平和ですね、の言葉と共に。
冷ややかな笑顔を 三人に向けながら。
三人の顔と言ったら…
思い出すだけで いつでも吹き出せてしまうような
唖然とした 面白い顔の三人だった。
… ふっ …
少し離れたところから
呆れたような視線を向けていたエルディン様は
天使のお兄様と言う 大変羨ましいお立場なので
私達の誰からも 威嚇もされず 牽制もされずで
よほどつまらなかったのか お一人寂しく
窓の外を眺めながら 黄昏ていらっしゃった。
『 皆んな平和に 』 馬車に揺られ 公爵邸へ向かった。
本日もお読みいただきまして
ありがとうございますすクランブルエッグ(´・ω・`)♡うまうま