16・5-15 私の天使と悪友 (マァサ side)
もし宜しければ 読んでいただけると嬉しいです
本日もお邪魔いたしますすー(´・ω・`)
「姉様 僕達のためにありがとう」
「僕達はもう大丈夫だよ。」
繋いだ手を 柔らかく握ってくるヨルドとナイド。
光が戻った眼を確認したエルヴァラ様は
ニコッと微笑んで下さる。
「そうだね、マァサ嬢のせいでは無いよ。」
エルディン様が声を掛けてくださった。
ミーナは 異様な姿を見せながらも
今まで知られていない神の祝福の 貴重な話をした。
それだけでなく
大国と関わりのある双子の取り引きや
首謀者であろう者達の 敵地へ乗り込んだ話もした。
そして彼らの顔も見ているのだ。
きっとミーナの立場は 危ういものだろう。
多くの情報を持っていたミーナ。
皆が息を詰めて話を聞いている中
私が 彼女の話を止めてしまったのは事実だ。
情報収集として あのまま話を続けさせるべきなのに
ボンバの白々しい嘘から成り立つ契約を信じ
私達家族を傷付けた身勝手なミーナに
少なからず苛立ちを感じたのは事実だ。
彼女がどう思っているのか知りたくなった。
騙されている事を考えた事は無かったのか。
それを突きつけた事で
まさか 彼女が全てに拒絶を示すとは考えていなかった。
…彼女は自分自身をどう思っていたのだろう。
契約書でボンバに騙され
絡め取られるように 爵位を奪われそうな私達から
弟達を攫う計画を立てている 自分自信を。
身内を盾にされ 人攫いに加担し
犯罪者達を信じようとしている 自分自信を。
「情報を聞き出している途中で邪魔をしてしまい
申し訳ありませんでした。」
騙され 攫われかけた弟達が
自分達の気持ちに整理を付けていても
傷付いた事は事実だ。
私は弟達の気持ちを一番に考えよう、そう思った。
姉としての 温かい気持ちを取り戻しながら
「私達は 聞きたい話は聞けました。
あとは お任せいたします。」
エルディン様に向き直る。
泣いて腫れた顔を
美少年に向けるのは 淑女として恥ずかしいけれど
今までの私を見られているのだから 今更である。
「あぁ、わかった。」
エルディン様は
全体を見るように 一歩引いていたリンデル様に声を掛け
周りの私兵達に 虚ろな眼のままのミーナを運ばせた。
「エルディン様 旦那様には既に連絡を入れております。
こちらにも連絡が届いておりまして
あの者の言葉通り 伯爵夫人は邸にいらっしゃいました。
後に公爵邸に移動していただく手筈をとっております。
同行する護衛も付けております。
旦那様方は 既に商会へ入られたようですが
一足遅かったようで
書類と共に ボンバの姿は消えていたそうです。
王都の門は閉めてありますので 旦那様方は
ボンバを追いかけて そちらに向かわれたと思います。
我々はこの後 どの様にいたしましょう。
旦那様達と合流いたしますか
それとも お邸に戻られますか。」
「そうだな… 」
チラリとエルヴァラさまを見 その後 私達へ視線を移す。
「一番気掛かりだった
伯爵夫人の無事が確認できたそうだ。
公爵邸へ移る用意をした後
護衛と共に私達の邸に来られるだろう。
ボンバの事は 政治的な問題も絡んでいるようだから
お父様達に任せようと思う。
私達は公爵邸に戻ろうと思うが それで良いか?」
一方的に問題に巻き込んでしまった
爵位の低い私達なのに
エルディン様は こちらの気持ちを優先してくださる。
彼の心根の優しさを感じ
善意のバーシル公爵家と呼ばれる所以を 感じ入りながら
頷く。
「エヴァも それで良いよな?」
「はい! ありがとう お兄様!!」
エルヴァラ様の 明るく元気な声がこの場の空気を変える。
「…それにしても勝手なものだな。
自分の身勝手な欲望のために
周りを巻き込み 傷付けて良いと思っている者達だ。
ボンバといい あの女といい
同じ穴のムジナ、というところか。」
そう言い捨てるエルディン様。
冷静で公平な考えの持ち主なのだろう。
彼はミーナの話に 心動かされる事は無かったようだ。
私の方が ミーナの気持ちを理解してしまい
彼女と同じように
目的の為なら手段を選ばない危うい人間だと
気付かされたように思う。
「あ! あのねマァサ。 レイルを紹介するわね。
オレージン公爵家のレイルよ。
私達の再従兄弟なのよ。」
エルヴァラ様が
そばに居た 黒髪の美少年を紹介して下さる。
「…レイル・オレージンです。」
「…はじめまして。
ペルー伯爵家の長女 マァサ・ペルーです。」
今までの姿を見られていた気恥ずかしさと
泣いた後の腫れた顔が恥ずかしくて
顔も身体も固いまま 淑女の礼をする。
彼は
挨拶する前に頭を振り 艶やかな黒い前髪を顔の前に集め
わざと目元を隠してから 挨拶をしてきた。
エルヴァラ様を助けた時に見せた
濡れたように艶めいた 長いまつ毛を伏せ
見るものを魅了する 虹色に光る瞳を逸らし
まるで 自分の存在を隠すように振る舞った。
彼の存在に 薄く靄が掛かったように感じた。
宝石以上に美しいと感じた瞳を
もう一度見る事が出来ず 残念だった。
挨拶の後
レイル様が エルディン様に小声で声をかける。
「おい…
いくら俺が守ると言っても 限度があるんだよ。
今回は抜けてこれたけど…
万が一 エヴァの元に向かえなかったらどうするんだよ。
考えただけでゾッとする。
エディの方で なんとか止めてくれよ!」
「おい、俺に詰めるなよっ。
俺だって必死に止めたさ、母さんだって止めたんだぞ!
それなのに いつもの…
人の話を聞かない 暴走モードのエヴァが出てきてさ。
その上 エヴァの勘の良さは異常だろ?
何かのスキルかって思うほどだよ。
その勘にリンデルが気付いちまって
自分が行くからエヴァを行かせてくれって。
…リンデルも人が悪いよなー。
絶対お前を当てにしてたんだぜ。
何か連絡が行っただろう?」
「 …あぁ、来た… 」
「だっろぉぉーー!
俺達を守る意識はあるんだろうけど
リンデルの優先順位の一番上は 結局ウチのオヤジだろ?
オヤジに 何か利があると嗅ぎつければ
エヴァと同じく無理を通すんだよ、リンデルは。
まったく!
フォローに回る俺達の事も考えて欲しいよなーー!」
エルディン様はブツブツと愚痴をこぼしていく。
レイル様の方はそれを聞きながら
…どうやったらもっと エヴァを護れるだろうか
と呟いている。
二人のそばにいるため 小声でも聞こえてしまう。
エルディン様の貴族らしくない態度は
出会った初日に知っている。
素を出すと 平民のように粗野な感じになるのだろうか。
エルディン様に負けない 高貴な美しさを持つレイル様も
口調は同じく砕けている。
二人とも 来ている服は上質で
身なりは整えられ 見目も肌艶も良く
一目で 高位貴族のご子息だと気付く。
しかし 二人が揃うといきなり雰囲気が崩れる。
聞こえた内容から 二人の親密さが感じられた。
はたから見ると 悪友と言った感じだろうか。
お読みいただき
ありがとうございますすすー(´・ω・`)♡