16・5-13 私の天使と神の祝福 (マァサ side)
稚拙ながら 皆様のお時間に
お邪魔いたしますすすー(´・ω・`)ぺこり
ミーナの頬と 私の手のひらが赤く色付いた。
「これ以上 私の弟達を苦しめないで。
私は貴女のやった事を許さないわ。」
弟達は まだ僅かに信頼を寄せていたのだろう。
偶然だった、事故だった、知らなかった、ごめんなさい。
それらの言葉を期待していたのではないか。
瞳を悲しみに歪ませ 涙を溜める弟達を見て
我慢が出来なかった。
私は 傍観者ではいられなかった。
「貴女が 弟達を必死に求める気持ちと
私が 弟達を大切に想う気持ちは同じだわ。
貴女が辛いように
私も弟達を傷付けられた今 とても悔しい。
奪われて辛い気持ちのわかる貴女が
なぜ 大切な弟達を奪おうとするの。
なぜ 貴女の弟達だけが守られようとするの。
私の弟達を傷付けた貴女を 私は許さないわ。」
私の声が 怒りと苦しさで上擦り 震えてしまう。
弟達の話を聞いた時から ずっと許せなかった。
だが極刑までは 与えようと思わない。
弟達は 今もここに居るから。
ただ一言 面と向かいミーナ自身に
気持ちを、悔しさを、ぶつけたかったのだ。
裏切られた者の怒りを。
叩いた手のひらが ジンジンと痛む。
初めて誰かに与えてしまった痛みに
相手がミーナであっても 私の胸も痛んだ。
私の啖呵に
うわぁぁぁーーーーー! と叫び
髪を振り乱し ミーナは泣き出した。
「私だって酷い事をしているって わかっているわ。
だけど、私が助けなければ 誰が弟達を助けると言うの?
私しか居ないじゃない!
国に助けを求めたって助けてはくれない。
だってあの子達は 大国に売られてしまったのだから。
この国だけじゃ無い
他の国だって大国を恐れて何も言わないわ。
他の国からも攫われた双子がいるはずなのに。
あの場所で聞いたもの、双子をもっと集めろって。
なのにずっと双子の人攫いは続いてるじゃない!
きっとこれからだって続くのよ!
それなのに誰も止めてくれないし、守ってくれない。
今だって ボンバが私を使って双子を狙ったじゃない!
理由なんて知らないわ!
私が大切なものを取り戻したくて
それで出来ることがあるなら
それに縋り付いて 可能性に賭けたって仕方ないでしょう?
だって私の家族はあの子達しか居ないもの。
あの子達は捕まってからずっと苦しんでいるもの。
だから、すぐに助けてあげなくちゃって… 」
ミーナの口は息つく間もなく 饒舌に動くが
上げた瞳の瞳孔は開きっぱなしで
流れる涙を気にする素振りもない。
前方の誰を見ることもない視線は
空中を彷徨い 定まらないままキョロキョロ動く。
その姿は 異様だった。
彼女の異様な雰囲気に呑まれる中 ミーナの話は続く。
「私のスキルで弟達を見つけたのよ。
だけど奴らに見つかって 殺されそうになって…
私は殺されても良いの。 …もう良いの。
だけど弟達の苦しむ姿を見て… 早く助けたくて。
私はもう一度 あの子達の笑った顔が見たいの。
だから 何でもするからって!
弟達を助けてくださいって、奴らに…頼んで… うぅ… 」
「君は何のスキルを持っているの?」
言葉が途切れ ミーナが俯くと
エルディン様が すかさず声をかける。
エルディン様の問いかけで
焦点の定まらなかったミーナの顔が
表情を取り戻していく。
始めは言葉を詰まらせたミーナだったが
ヨルドとナイドに視線を向けると
バツの悪そうな顔で
…追跡よ と、声を落としながら呟いた。
「…君は平民だよね。
スキルを授かるには 神の祝福という儀式を
教会から受けなければならないよね。
金銭的にも立場的にも難しいのでは?
教会が平民に儀式を行うは かなり珍しい事だからね。
それに ただの教会ではなくて
聖魔力が溢れ出る場所でないと
正しく祝福されないとも聞いた。
…君はどうやって授かったんだ?」
嘘は許さない、とでも言うように
ミーナに顔を近付けて エルディン様は眼を覗き込む。
ふぃっと逸らせながらも
ミーナは覚悟を決めた顔で 話し出す。
「…発端は魔の森よ。
… 私の村は 国の外れにあったのよ。
魔の森のすぐ近くの村よ。
何年か前に 魔の森でスタンピードが起きて
私達の村は そのスタンピードに呑み込まれたの。」
「あぁ、その話は聞いたことがあるよ。
村が幾つも呑み込まれたと聞いた。
そうか… 君はその村の生き残りだったのか。」
エルディン様は痛ましそうに顔を歪ませる。
ミーナは
そんな安い同情はするな、と言うふうに淡々と話を続ける。
「私と弟達は偶然その日
叔母の村のお祭りに遊びに行っていたの。
子供達だけの 初の外出だった。
あの時、お父さんお母さんも… 一緒に、来ていたら… 」
ミーナは俯き唇を噛みしめ 暫くしてから話し始める。
「生き残った私は スタンピードが討伐された後に
両親の思い出を探しに 村に戻ったの。
…そこで見た光景は酷かった。
どこに何があったのか分からない程
村の痕跡は跡形も無かった。
砕けた瓦礫や破片が散らばる中
何でも良いから 形に残るものが欲しくて探し回ったら
いつもなら行かない森の中へ迷い込んでしまった。
夜も暮れて 戻れなくなった私は
ここまでの命なんだと覚悟を決めたわ。
だけど偶然 近くで洞窟を見つけて
魔物の巣穴でない事を祈りながら入ったら
洞窟の奥が光っていたのよ。
…そこは温かくて 居るだけで疲れが癒えて
…とても不思議な光景で 素敵な場所だったわ。
その時 叔母に祭りで買ってもらった水晶のペンダントが
温かく光ったから 不思議に思って握ったら
知らない言葉が頭の中に浮かんできたのよ。
でもなぜか理解はできて …追跡、て言葉だった。
最初はそれが スキルだとは知らなかった。
次の日無事に村に戻れた後 用があって弟を探していたら
そこに向かう為の道順が頭に流れてきて…
そこからは 自分の力で色々な挑戦を繰り返して
スキルを理解をしていったのよ。」
ミーナは一度 話を切った。
私達は聞いた事もない話に引き込まれ 聞き入っていた。
「その後 私達が住み始めた村で
人攫いの話を聞くようになったあの日
…弟達の姿が消えたの。
私は自分のスキルを使って追いかけたわ。
でも私が出来たのは追いかける事ぐらいだった。
何の準備もない非力な娘が 悪党の巣窟に入っても
戦う腕力もなければ 助け出す手段もない。
それでも弟達を自由にしてやりたくて
自分が代わりに捕まるから
逃がしてほしいと交渉したのよ。」
ミーナは落としていた視線を 上にあげた。
虚ろにひらくその眼には 今は誰も映らない。
ミーナは力無く 愉悦に歪ませた顔をする。
「そしたら アイツらなんて言ったと思う?」
ハッと笑って 地面に爪を立て力を込める。
「双子じゃなければ意味が無いんだって。」
そう言って 地面に視線を落とす。
下げた瞼からボトボトと涙が落ちてくる。
「二人を助けたいのに
そのまま何も出来ずに殺されるのが悔しくて
泣いて喚いて力の限り暴れていたら
ボンバが前に出てきて
『 双子の売買にはお得意さんがいて
もともと高値で取引されるから 平民の子を返すなら
代わりに 貴族で魔力持ちの双子が必要だなぁ 』…て。
欲しい貴族の双子がいるから
手伝うなら平民の双子を返すと 約束してくれたのよ。
…ボンバとは契約書類も作成したわ。」
「…ねぇ ミーナ。 ボンバの話、信用できると思う?」
今日も読んでいただきまして
誠にありがとうございますプラトゥーン(´・ω・`)♡ゲーム苦手