16・5-⑦ 私の天使の話したい事 (マァサ side)
本日もお邪魔致しますすすー(´・ω・`)
(上手くなりたいです…)
公爵様は エルヴァラ様に着替えてくる様に命じ
エルヴァラ様を待っている間
公爵夫人とエルディン様が 応接室に到着された。
エルディン様には 出合った時の気安さは無かった。
身体を固くしながら ご挨拶させていただいたが
バーシル公爵家皆様の
高貴な佇まいや雰囲気、所作には圧倒されてしまった。
もともと周りから毛嫌いされ
社交に疎い私達は
家格の違いだけで無く 交流の経験の少なさから
皆 緊張で小さく身体を震わせていた。
エルヴァラ様が応接室に来られてから
今回の騒動でお騒がせした事を
お父様と共に謝罪した後 お礼申し上げた。
馬車の事故の件では
エルヴァラ様や 公爵家の皆様方から頂いたご厚意に
感謝している旨をお伝えした。
公爵夫人は 元気になって良かったわ、と
優しく微笑んでくださった。
お父様は事の始まりとして
悪徳商会に騙され負債を負わされ
その負債の相殺に
商会の男が 自分の息子と私の婚姻を提案してきた事
後継者として 弟達ではなく商会の息子に
爵位の譲渡をするよう 提案してきた事を話した。
商会の男は 商会の息子に爵位を渡す事で
ペルー家が平民に落ちることは無く
貴族としての立場が守られる点を強調してきたそうだ。
弟達の説明では 双子である自分達のせいで
お父様が 周りから援助や助力を得ることが出来ず
悪徳商会に騙されたと思いこみ
家族を守るために 忌み子である自分達を消そうと
家出を選んだ事
お父様自身が 家族を失う恐怖から
私の姿を確認する為に
図々しくも公爵邸へ押し入ってしまった事
エルヴァラ様からのご厚意に甘え
公爵家の力で
スラム街にいた弟達を保護できた事などを
それぞれ丁寧に話し
事の顛末とそれに伴い
発生した褒賞について 話し合う所まで進めた。
弟達は 自分達の起こした行動の結果が
どんな事態を招いたかを改めて知り
涙目で青くなり ずっと固まっていた。
お父様も私も 起きた事やかけた迷惑が
大変な事だとは わかっているけれど
弟達の無事には変えられないと思っていた。
緊張しながら お父様が説明と謝罪とお礼を改めて告げると
「ご子息達が無事で 本当に良かったわ。」
と夫人が 弟達にも優しい言葉をかけてくださった。
弟達も 「ありがとうございます」や
「ご迷惑をおかけして 申し訳ありませんでした。」など
涙声になりながら お礼と謝罪を伝えていた。
弟達の必死な様子を
目元を緩め 微笑ましく見ていた公爵夫人は
「ねぇ、旦那様。 これも何かのご縁ですし
ペルー伯爵様と親交を持たれるのはどうかしら。」
とご提案された。
お父様含め私達は 考えもしない提案に驚き
そして色めき 息を飲んだ。
私たちにとって 夢の様な話だったのだ。
公爵様が暫く思案した後
「ペルー伯爵家は 中立派でしたね。
もし良ければ 私達の王侯派に入りませんか。」
と派閥変更の誘いをかけてこられた。
ペルー家は昔から 政治に関わらない立場のため
政争に巻き込まれないために中立派を貫いていた。
歴代当主の意志を継いできた為
お父様はどうされるのだろう、と心配になった。
お父様は青い顔を 苦しそうに歪めながら
佇まいを正し しっかりと話し始めた。
「もし私達が 負債を背負わず
伯爵家としての威厳を維持できていましたら
今回の公爵様の提案は
有り難くお受けしていたと思います。
私としましても 今回エルヴァラ嬢の健やかなお人柄に触れ
もしこのまま
皆様とご縁を頂けるなら、と 願ってしまいました。
ですが今回のことで
私は 自分の身の丈を知ることを学びました。
そして、爵位を売り 平民になろうと考えています。」
お父様は 公爵様の目をしっかり見ながら
噛み締める様に言葉を出し
私と弟の三人は 出された言葉に衝撃を受け
お父様の顔を凝視していた。
「もしこのまま貴族を続ける為に
娘の婚姻を受け入れ 爵位を譲った場合
当主となった商会の息子は
王侯派から他の派閥へ変える可能性もあります。
その時は 恩を仇で返してしまいます。
それにあの親子が
バーシル家との交流を悪用しないとも限らない。
思えば今回の騒動は
私が爵位に拘り
子供達に犠牲を強いた結果 起きた事だと思っております。
平民の間では
貴族ほど双子は忌み嫌われていないと聞きます。
娘にも 無理な婚姻を迫らなくて済みます。
私達には 今回の支払いとして
公爵様に渡せる金銭は 手元にはありません。
ですが爵位を売る前の
領地内 鉱山の利権の譲渡は可能です。
娘がお世話になりました分も合わせ
そちらを公爵様に お渡ししたいと思います。」
公爵様は眉間の皺を益々深くされ
考え込んでしまわれた。
今の話に 私も弟達も驚きを隠せなかった。
お父様が あれだけ嫌がっていた平民の生活を選ぶとは
思ってもいなかったからだ。
確かに
爵位を売る事で負債も返し切れるし
私の貴族としての価値が無くなれば
商会の息子との婚姻も無くなる。
弟達も 双子への忌避感の薄い平民の中で
のびのびと生きて行ける。
生活に関しては 既に給金が支払えない為に
侍女や下女はほとんど雇っておらず
水仕事や調理など お母様と私が生活を支えていた。
大きな邸を手放し 平民の家に住めば
掃除が楽になるだろう。
私達は
貴族であるよりも 平民として過ごした方が
生きやすい様に感じていた。
…エルヴァラ様に出逢っていなければ。
エルヴァラ様に出逢っていなければ
平民になる話は抵抗はなく
むしろ喜んで受け入れていたと思う。
でも 私は 私の天使に出逢った。
この人のそばにいる為なら
商会の息子との婚姻も受け入れてしまえる。
そう思っていた。
だから とても動揺してしまった。
エルヴァラ様は
王家に次いで 格式の高い公爵家の御令嬢である。
例え貴族であっても親しくなるには
他貴族から紹介していただく為の御縁と
そばに置いていただく為に相応しい家格
親しんでいただく為の運が必要となってくる。
平民になってしまえば 雲の上の存在の方に
声をかける事も出来なくなってしまう。
じんわりと涙が溜まる。
でも 私だけの問題では無い。
弟達の幸せを考えると
商会の息子に近づけたいとは思わない
理性と欲望の狭間で 感情がぐるぐると回っていた。
「…なるほど、わかりました。
鉱山の件など、すぐに返事を返せない内容もありますが
こちらもその様に検討致しましょう。
鉱山は一度 視察をさせていただけますか?
それと、よろしければ…
爵位の売買に関して
誠実な商会を紹介致しましょう。」
公爵様が 眉間に皺を強く寄せたまま顔を上げ
答えられた。
「ありがとうございます、ぜひよろしくお願い致します。」
お父様の声は 覚悟の決まった声だった。
私の感情では もう、どうしようもならない事に気付き
呆然としていると
大人の話を じっと聞いておられたエルヴァラ様が
声をあげられた。
「お父様
私には難しいお話が続いていましたので
いつ言葉にすれば良いかわからず 今になりましたが
皆様がお帰りになる前に
聞いてもらいたいお話が ありますの。」
読んでいただき 誠に!!
ありがとうございますすすペイン(´・ω・`)♡オーラ