16・5-⑥ 私の天使とリュイ (マァサ side)
再び お邪魔いたしますすすー(´・ω・`)ぺこり
浮浪児のリュイと 公爵令嬢のエルヴァラ様が
身分の差なく 笑い合う光景が不思議だった。
最初の
警戒心の強かった彼からは 想像できない笑顔だった。
年齢的には エルヴァラ様と同じか少し上くらいだろう。
だが身体は幼くても スラムで命懸けの日々を過ごした彼は
表情に凄みがあり 目付きは相手を射るものがあった。
それはもう 子供のものでは無かった。
伸びた前髪を整え清潔感を持たせれば
リュイは なかなかの美男子になる予感がした。
魔力の高い人は 容姿が整う割合が高いらしい。
彼はもしかして 魔力に恵まれているのかもしれない。
浮浪児のままなら 閉ざされていた道が
エルヴァラ様や 私達との出逢いで
何かを得るかもしれない。
そしてリュイも
私や弟達と同じ様に エルヴァラ様に救われるのだろう。
なぜか自然とそのように感じた。
エルヴァラ様との出逢いは
私にとって 神の奇跡と同じだった。
そして
どうしてもエルヴァラ様のおそばに居たいと思った。
でも、何も無い私が
どうやったら おそばに居られるのだろうか。
そう考えた時 両手が強く握られた。
驚き 手元を見ると
手を繋いでいる弟達が 二人を食い入る様に見ていた。
弟達の瞳には 嫉妬心の翳りが窺えた。
二人の瞳の先にいるのは
双子の自分達を 快く受け入れてくれたリュイなのか。
それとも 自分達の為に涙を流し笑顔を向けてくださった
エルヴァラ様なのか。
今まで友人も作れず 親しい人が家族しか居ない弟達の
成長していく瞬間に 触れた気がした。
馬車に戻る時 エルヴァラ様は 護衛騎士のルイに
リュイや子供達のお世話を頼んでいた。
リュイは ヨルドやナイドにも友人として接した。
嫉妬心で翳っていた二人の心も リュイの
「家族のもとに戻れて良かったな。」
という裏のない言葉と 心からの笑顔に絆され
友人の顔に戻っていた。
弟達は リュイに助けてもらったお礼を言い
肩を叩き手を握り合い また会う約束をしていた。
私達の馬車が見えなくなるまで リュイは手を振っていた。
エルヴァラ様も負けじと 窓から身を乗り出し
手を振っていらした。
危険な行為の為 内心は慌てながらお身体を支えていたが
その姿は無邪気で可愛らしく 弟達を探して下さった
凛々しいお姿のエルヴァラ様とは重ならず
とても不思議な気持ちで見ていた。
馬車はペルー伯爵家では無く
バーシル公爵家へ向かう事になった。
当事者として今回のお礼とお詫び
そして報告と
発生した金銭について話し合うことになった。
向かう馬車の中で
徐にエルヴァラ様が 弟達に話しかけた。
「ペルー伯爵家のご子息様方、改めてご挨拶致しますわ。
初めまして。 バーシル家の長女、エルヴァラです。
仲良くしてくださいね。」
ニコッと愛らしい笑顔を向けられ 二人は頬を染める。
「は、初めまして。
僕はペルー伯爵家の長男 ヨルダです。」
「初めまして。 ぼ、僕は次男のナイドです。」
二人はペコリと頭を下げる。
「ご挨拶ありがとうございます。
それで相談なのですが 私達 お友達になりましょう?」
「「はい?」」
二人の声は 裏返った。
私も驚いて 瞠目してしまう。
お父様も驚いている。
「私 マァサから 色々とお話を聞いて不思議だったの。
なぜ皆んな 貴方達と仲良くなさらないのかしらって。」
これを聞いて 弟二人は息を詰める。
理由は 自分達が『双子』だからだ。
「あのね、忌み子の御伽話は知っているのよ?
それでも不思議でしょう? 二人は何もしていないわ?
何もしていない人に嫌がらせをするって
とても おかしいでしょう?」
周りの常識がおかしくて
ご自分の常識が正しいと 信じている言葉だった。
そしてその言葉と常識に縋りつきたい人生を
私達は送ってきていた。
お父様も私も 言葉を失い涙ぐんでいた。
弟達は 再び嗚咽を漏らし
「「僕たちも 友達になりたい、です。」」
涙をこぼしながら 訴えていた。
「良かった!」
嬉しそうに手を叩き 明るく無邪気に笑うエルヴァラ様。
「お友達だから ヨルドとナイドって呼ぶわね。
ヨルドとナイドは リュイともお友達でしょう?
マァサも含めて 皆んなとお友達になれたわ。
うふふふ。 私 とっても嬉しいの!」
胸元で嬉しそうに パチパチと手を叩きながら
にこにこと 愛らしいお顔でお話ししてくださる。
その笑顔を向けられ 頬を染め喜んでいた二人だが
リュイの名前を聞いて 複雑そうな表情も見せていた。
「ねぇ、ヨルド、ナイド!
貴方達 家を出てからどうしたの?
私達 ずいぶん探したのよ。
高台には行かなかったの?」
私も気になっていた。
二人はバツの悪そうな顔をし合いながら 話し始めた。
このままじゃ 自分達のせいで
家族がどんどん不幸になってしまうと思い
本当に自死の覚悟を持って 高台に向かったという。
それを聞いて お父様と私は ゾッと身体をこわばらせ
それぞれがキツく 二人を抱きしめた。
二人はそのまま話し続けた。
高台に向かう途中
男達に尾けられていることに気付き 走って逃げた事。
人通りの多い方へ逃げようとしたところ 捕まってしまい
縄で縛られ袋に詰められる途中
リュイ達が男達と戦ってくれ 助けてくれた事。
彼らは 本当に
弟達の命の恩人だったのだと 改めて知った。
お父様が青ざめながら
攻撃魔術で逃げられなかったのか尋ねると
相手は魔術防御の魔道具を 身に付けており
攻撃魔術は全て打ち消されていた、と教えてくれた。
しかし 物理攻撃は防げない為
リュイ達のスリングショットや投擲の攻撃が当たり
隙ができたところで 人攫い達から
スラム街の中へ リュイ達が逃がしてくれたようだった。
それを聞いたエルヴァラ様が
「魔術防御の魔道具って
そんなに簡単に手に入る物だったかしら。」と呟いていた。
そこで 公爵邸に到着した。
ゴクリと生唾を飲み込むお父様の気持ちが
痛いほどよく分かる。
ルイと呼ばれる護衛騎士は
リュイ達の面倒を見る為 ここに居らず
ルイとは違う護衛騎士に抱えられながら
皆んなと一緒に応接室に通された。
そこでは執事のリンデル様と
公爵様がお待ちになっていた。
…
お父様が 弟達の件で公爵家に来られる少し前
エルヴァラ様が リンデル様について話して下さった。
リンデル様は 伯爵家のご三男で
公爵様とは ご学友の関係だったらしい。
働き場所を探していたところ 公爵様に誘われたらしい。
リンデル様は 知性的なスラッとした顔立ちで
冷静沈着な執事、という雰囲気の方だ。
公爵様は 魔力の高い方特有の整ったお顔立ちで
美丈夫という言葉が浮かぶ。
そして眉間の深いしわで
近寄り難い雰囲気を醸し出している。
お二人の姿を目にして 私たちの緊張は高まる。
「…ところでエルヴァラのドレスは
なぜ汚れているんだい?」
「これは 子供達を抱きしめたからですわ。」
「…そうか。」
公爵様は エルヴァラ様のお姿を見て
なんとも言えないお顔をされた。
本日も ありがとうございますすすー(´・ω・`)♡
…長文が 通常になりそうで心配です…(汗)