16・5-③ 私の天使と双子 (マァサ side)
あいも変わらず
お邪魔させていただきますすすー(´・ω・`)
「どうしましょう!!
ペルー伯爵様のご子息達が 消えたのですか!」
場の空気が固まり お父様の嗚咽が響く中
エルヴァラ様は 突如立ち上がり 声を上げられた。
私は お父様の涙を流している姿に言葉を失っていた。
「リンデル! 人を探す時は どうしたら良いのかしら!」
「はい、お嬢様。
人を探す場合は まず
その方々の行きそうな場所を 探してみる事です。
王都から出さない方法でしたら 王都の門番に
双子の少年を見たら 確保してもらいましょう。
人攫いの可能性も考え
門を通る荷物のチェックは 入念にした方が良いでしょう。
多少の金銭を握らせると よく働いてくれます。
見つけた場合の褒賞を提示すると
もっとよく働くでしょう。
門兵だけで心許ない時は
公爵家の私兵も使ったらよろしいでしょう。
ただ 私兵を出す際は 旦那様の了承が必要となってきます
本日は 執務室にいらっしゃいます。
また、人を探す時は 人海戦術もございます。
私兵を使うだけではなく
闇ギルドや冒険者ギルドにも 人探しを頼みます。
そして 浮浪児や浮浪者に情報を流し
見つけたものに褒賞を与えると約束すれば
王都を出ていない限り
かなりの高確率で情報を得られるでしょう。
ただ、お嬢様。 彼らの情報を信用し過ぎてはなりません。
金銭を得る為に 偽の情報を与える場合もあるからです。
この場合は
ご子息様を見つけてからの褒賞を お勧め致します。
万が一 人攫いにより既に王都を抜けていましたら
他の方法も考えねばなりませんが
ひとまず
この様な方法が よろしいかと思われます。」
リンデル様は 落ち着いた声音で つらつらと話し出した。
お父様は涙で濡れた顔を上げ 驚いた表情で
公爵家執事のリンデル様を見ている。
「そうなのね、リンデルありがとう!
お父様に私兵を頼みましょう!
あとはー…そうね!
マァサ 弟達の行きそうなところに 心当たりは無い?」
エルヴァラ様に声をかけられ ハッとする。
やっと何をすべきか 思考が動き出す。
「あ、はい。
行き先については 幾つか心当たりがあります。
ですが、もし…。」
この先を考え 体がブルリと震える。
お父様が涙するのは
弟達の家出を嘆いたから、だけでは無い。
弟達が万が一 自分の命を…。
それを想像すると 頭も身体も冷え 震えてくる。
私たちの様子を見たエルヴァラ様は 命が優先よね…
と ぽそりと呟くと
リンデル様に
「リンデル、急ぎましょう。
貴方からお父様に 事情を伝え 私兵を頼めるかしら。
王都門に私兵を向かわせて。 もちろんお金も用意して。
闇ギルドや冒険者ギルドにも発注を頼むわ。
あと、スラム街にいる
浮浪者や、浮浪児達との交渉はどうすれば良いの?
え? リンデルが出来るの? わかったわ、頼むわ。
では 人海戦術の指揮はリンデルにお願いするわね。
お父様からのお叱りは 後で受けると伝えておいてね。
私は人命が優先だと思うの。 お友達の弟達ですものね。」
この様な時なのに
エルヴァラ様の "お友達" を聞き 目頭が熱くなる。
「では私は
マァサと心当たりの場所を 急いで探しにいくわ。」
よく通る声で 素早く指示を出し終えると
エルヴァラ様は私の手を握り 優しい顔を向けて下さる。
「今はマァサも マァサのお父様もお辛いと思うわ。
でも悲しむのも 惚けるのも後にして
まずは 出来ることを 一緒に頑張りましょう。
それと マァサはまだ身体が辛いでしょう?
移動を早くする為に 私の護衛に移動を頼みましょう。
ルイ!」
三人の中で 一番大柄な騎士に声をかけられた。
失礼致します。と声をかけられ ひょいと横抱きをされる。
一瞬 羞恥心が湧いたが 弟達の顔が浮かび
早く探し出したいと そちらに気持ちが集中する。
協力して下さるエルヴァラ様、公爵家の皆様に
「ありがとうございます、よろしくお願いします。」
と お父様と私は頭を下げた。
エルヴァラ様は他の護衛達に声をかけ
それぞれに リンデル様と連絡を密に取り合うよう
指示を出されていた。
私達は 急いで馬車を走らせ 行きそうな場所を探した。
弟達は貴族街にある 景色の良い場所が好きだった。
高台だったり、野花の咲く河岸だったり。
周りから酷い扱いを受けた後
彼らは 自然の優しさに癒されていた。
もし自死を望んでいるのなら 好きな場所で…。
私はそれを心配した。 しかし 彼らの姿は無かった。
彼らの姿が見つかるまで続く 安堵と不安。
弟達は まだどこかで 生きているはず!
でも 知らないところで 亡くなっているかもしれない…
想いは お父様と同じなのだろう。
私達は青ざめながら どんどん追い詰められていった。
顔色を悪くし 馬車の中で手を握り合うお父様と私に
エルヴァラ様は尋ねられた。
「もし 潜伏を考えていたら
彼らはどこにいくのかしら?」
そうよね、潜伏だわ。
貴族街の中には
買い手の付いていないタウンハウスが 幾つかあった。
時々 浮浪者が忍び込むと聞いている。
私達はそこへ向かった。
一軒目の空き家には 誰も居なかった。
二軒目へ向かおうと 馬車に乗り込んだ時
双子が見つかったと
中継ぎの護衛騎士が 馬を走らせ伝えてくれた。
私達親子は 馬車の中で泣き崩れた。
エルヴァラ様は その様子を
何か言いたそうに じっと見ていらっしゃった。
話を聞くと リンデル様の元に
有益な情報が入ったらしい。
中継ぎの護衛騎士に誘導されるまま
向かった先は スラム街だった。
案内された先には 弟達ではなく
スラムの住人であろう少年が待っていた。
彼から 「二人を捕まえる為に
無理して 仲間に怪我を負わせたく無い。
二人の居る場所に連れていく。」 と言われた。
確かに 弟達は魔術を使える。
抵抗されれば 魔術を習っていない浮浪児達は大怪我をする
私達は 弟達が無事ならそれで良い。
浮浪児達のリーダーであろう少年の後に
大人しく私達は付いていく。
スラム街の独特な匂いの中 案内された先に弟達は居た。
薬草を選り分ける作業を 教えられていた。
私達を見た二人は 安堵と怯えの 両方の顔をした。
その顔を見て
お父様と私は駆け寄り 弟達を抱きしめた。
お父様と私は 怒りながらも 無事を喜び、泣いた。
弟達は 怖くて死ねなかった、ごめんなさい、と泣いた。
それぞれの嗚咽が落ち着いた頃
「ねぇ、なんで 死のうと思ったの?」と 声の先には
仁王立ちのエルヴァラ様が いらっしゃった。
今日も お読みいただきまして
ありがとうございますすすきやき(´・ω・`)♡ゴクリ