16・5-① 私の天使 (マァサ・ペルーside)
本編で マァサは 雇い主と敵対しました。
武器を手に取ってまで…。
その心を 感じていただければ幸いです。
マァサ、頑張って生きてますすすー(´・ω・`)
再びお邪魔いたしますーぺこり
ペルー侯爵家の長女、マァサ・ペルー。
私が 12歳の時 お父様が事業に失敗した。
手を組んで事業を始めた商会に騙され
多額の負債を背負わされた。
高位貴族の伯爵という
爵位を売らなければならない程の 借金を。
お父様を騙した悪徳商会が お父様に交渉を持ちかけてきた
「そちらのお嬢様と 我が家の息子で婚姻関係を結び
伯爵家の当主に置いていただければ
借金も取り消し
ご家族もそのまま 領地でお過ごしいただけます。
いかがでしょう。」
お父様を騙した その男はニヤリと笑っていた。
私はお父様から話を聞いて とても悔しく腹立たしかった。
最初から 爵位を狙っていたんだ!
頭の中は 怒りでカッと熱くなった。
お父様が騙されたことは勿論
敵である悪徳商会の息子を 夫にすること。
その上その男に 将来は我が領地も
高位貴族である爵位も 名誉も奪われること。
貞操観念がなく 女癖が悪く 金使いが荒く
私を見下し 弟達を侮辱してくる商会の息子。
ペルー家の歴史が… 家族が… 私の純潔が… 私の矜持が…
あの男によって穢されることが許せず
私は家を飛び出し
絶望のまま街を フラフラと歩いていた。
こんな未来なら 要らない。 いっそ死んでしまおうか。
そんな事を考えている私に
周りの 「馬車が通るぞー」の声は 届かない。
気が付いた時には 身体は宙を舞い
激しい衝撃を受けた後だった。
「私は死ぬんだ。」
薄れる意識の中で
プラチナブロンドの長い髪の天使が 駆け寄る姿を見た。
最後に 美しい天使の姿が見れたから
もう悔いはないな… と意識を手放した。
目を覚ましたら 見慣れぬ風景の
ふかふかなベッドの中だった。
天使を思い出し 天国に来たんだ、と考えた。
視線を脇に移すと 記憶の中の天使が
ベッド脇に うつ伏せで寝ていた。
もう一度 会えた事が嬉しくて 泣きそうになった。
目に映る プラチナブロンドの髪の美しさに惹かれ
手を伸ばし ひと掬いすると
手の中で サラサラと滑り落ちていった。
その触り心地にうっとりした瞬間
「エヴァに触るな!」
突然 大きな声で怒鳴られ 身体が固まった。
怯えながら 声のする足元に目を移すと
ソファから立ち上がった 同じ年くらいの
美しい少年が こちらを睨んでいた。
彼も プラチナブロンドの美しい髪色だった。
恐怖で思わず
「こ、ここは、天国では無いのですか?」
と 声に出してしまう。
それを聞いた少年は
ぷっ、ふはっ はははっ と笑い出し
その笑い声で 天使が目を覚ました。
「…ん? …んん〜?… おにい、さま… どうし…
あっ!!」 と 天使が大声を上げ
こちらの顔を 泣きそうな顔で覗き込んできた。
「大丈夫? まだ痛いよね?」
青ざめたお顔の大きな瞳に 涙が溜まっていく。
その様子も美しくて 何も言えずに見惚れていると
「お前 エヴァに感謝しろよ。
馬車に跳ねられ 手足が曲がっていたんだよ。
普通は 平民が馬車の前に突っ立って轢かれたら
そいつが悪いから 放っておくけど
今日はエヴァが一緒にいて 助けようとするから
仕方なく連れてきて 回復薬を飲ませてやったんだよ。」
美しい少年は ふんっと鼻を鳴らし 顔を背けてしまう。
「エヴァは人が良い上に 話を聞かないからなぁ… 」
最後の独り言は 声が小さく 聞き取りにくかった。
話を聞いたところ
ここは天国ではなく どうも貴族の邸のようだった。
部屋の様子からして 高位貴族のお邸だ。
貧しい為 平民と変わらない格好をしていた。
間違われても仕方ない。
その上ボーとしていて 轢かれた私が悪い。
なのに わざわざ治療までしていただいた。
他の貴族なら 放置したまま走り去るのが通常だ。
それほどに平民と貴族の 命の差は大きい。
少し冷静になると
自分の置かれた状況に血の気が引いてくる。
「も、も、申し訳ありませんでした。
わ、わたくし、 マァサ・ペルーと申します。
命を助けていただき
ほんとうに ありがとうございましたっ!」
慌てて ベッドから飛び起き 淑女の礼を取ろうとした瞬間
「ぐぅっ、ぅ、、ぐぅ…」
あまりの痛みに 床に倒れ込んでしまった。
「何やってんだよー。 もう、仕方ないなー…」
天使の兄であろう少年が 最初は驚いた顔をしたが
呆れた顔に変わり 扉の外にいる護衛の騎士に声をかける。
天使は 倒れた私へ 慌てて駆け寄ってくる。
痛みで朦朧とする中
あの美しい光景をもう一度 見る事が出来て
私は嬉しくなってしまった。
騎士にベッドへ戻される中
天使を見て 嬉しそうな顔に変わる私を
美少年の兄が 呆れた顔で見ていた。
騎士が扉の外に戻った後
「ご迷惑をおかけして 申し訳ありません…。」
と ベッドの上でしか挨拶できない自分を
恥ずかしく思っていると
「君ってもしかして 貴族なの? 姓があるよね?」
と 兄に尋ねられる。
「はい、改めて お礼申し上げます。
この様な姿で申し訳ありません。
わたくし マァサ・ペルーと申します。
ペルー伯爵家の長女でございます。
助けていただき 本当にありがとうございました。」
不甲斐ない思いを抱えながらも 必死にお礼を伝える。
「お名前は マァサね! 私は エルヴァラ!!
エルヴァラ・バーシルよ。 マァサ、よろしくね!」
天使が ニッコリと愛らしい笑顔を 向けてくださる。
エルヴァラ・バーシル様… エルヴァラ様…
名前を頭の中で 繰り返して ハッとする。
バーシル公爵家様!!
そんな方達に助けて頂くだなんて!
善意の公爵家として 名高いバーシル家様に
お世話になってしまった事に恐れ慄き 青ざめていると
「あのさー、よくわからないけど
この家で しっかり身体を治しなよ?
エヴァが心配するだろ?
まだ 折れた骨が治りきれてないから
あと三日は 回復薬を飲んで安静に寝ていなよ?
君の家は ペルー伯爵家だよね?
家には手紙を送っておくから 大人しく寝て
早く治しなよ。」
言葉に丁寧さは無いが 内容は優しかった。
「ありがとうございました。
あの… お名前をお伺いしても よろしいでしょうか。」
おずおずと確認してみると
あっ、そうか!と目を見開きながら 答えてくださった。
「オレは エルディン・バーシル。 エルヴァラの兄だ。
じゃぁ エヴァ、行こうか。」
エルディン様が エルヴァラ様に声をかけた。
だが
「えーー!
お兄様、私はもう少し マァサとお話ししたいわ!」
と 嬉しいお誘いをいただき 気持ちが高揚する。
しかし エルディン様に
「エヴァ、怪我人に無理をさせる事が
小さいレディのやる事かい?」と 嗜められてしまう。
むぅぅーーーと頬を膨らませ 暫く思案された後
「確かに お兄様の言うとおりだわ。
マァサの身体は まだ辛いものね!
マァサ!
沢山休んであっという間に治して 私とお喋りしましょ!
きっと 楽しい時間を一緒に過ごせるわ!」
ねっ!と元気な笑顔で 素敵な提案をしていただく。
「はい!
私もエルヴァラ様と たくさんお喋りしたいです!」
私も あまりの嬉しさに元気に答えてしまう。
恥ずかしいわ、12歳にもなるのに
嬉しい気持ちを抑えられないなんて。
嬉しさと恥ずかしさで 顔を真っ赤にしながら
エルヴァラ様に笑顔を向けていると
エルディン様が 「エヴァ」と手招きしながら
扉へと向かわれる。
エルヴァラ様は付いていきながら こちらに振り向き
「マァサ、ゆっくり休んでね。 またね」
と 可愛らしい笑顔で 手を振ってくださる。
「ありがとうございます。」と
私も お二人が扉の向こうへ消えるまで手を振っていた。
その後は バーシル公爵家から ペルー伯爵家へ連絡が行き
数日 お世話になる事になった。
回復薬をいただきながら 公爵家でお世話になっている間
エルヴァラ様は 何度もこちらへ訪れてくださった。
色々なお話しをして下さり 私にも聞いて下さった。
エルヴァラ様のお歳は 8歳だと伺った。
私の弟達も8歳で 双子だと伝えた。
そしてそのまま "双子の忌み子"の話になった。
真剣に聞いて下さった上に 周りからの心無い扱いに
「それは御伽話の話なんだから 気にしなくていいの!
そんなの ぜったい偶然よ!」
と 強く明るく 励まして下さった。
私にとって 天使の様であり 太陽の様な方だった。
だけど私がお世話になった事で 我が家の問題に
エルヴァラ様を 巻き込んでしまった。
マァサを語り尽くせなくて まだ続くのですが…
皆さん 許してくれますか? |・ω・`)ちらり
今日も ありがとうございますすすー(´・ω・`)♡