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これは友達の話なんだが

遅くなりました。すみません!

 俺は授業中一人で頭を抱えていた。


 一体どうしてしまったのだろうか?

 今朝だって澪から逃げるように学校まで走ってきた。

 澪と喋ることがこんなにも気まずくなったことなんてなかったし、ましてや澪を避けるようなことこれまでしたことなんてなかったのに……


 今だって授業の内容が全く入ってこない。昨日の出来事や今朝のこと、昔のことを思い出しては、もやもやとした自分でもよくわからない感情に襲われる。

 気づけば澪のことを考えているような気がする……


 授業に集中しないダメなのに……内容が頭に全く入ってこない。このままだと今度の小テストで酷い点を取らことになるだろ。そしたらまた澪に怒られて、無理やり勉強をさせられてしまう。


 結局、授業が淡々と進んでいくなか、俺は全く集中できないまま午前中の授業が終わってしまった。


 みんなが昼食の準備を始める中、俺はただ座って今回の原因を考えていた。

 すると、いつものように一緒に食事をするために拓哉が俺の机の下にやってくる。

 手にはコンビニで買ったパンや飲み物が入ったレジ袋を持っている。


 俺の向かいの席に座ると体だけこちらに向けて話しかけてくる


「なぁ、何かあったのか?」


「な、何かって?」


 いきなりの質問だったが、心当たりがありすぎて動揺してしまう。

 もしかすると、見てわかるほどに今日の俺は変なのかもしれない。


「いや、澪ちゃんがさ、今日のお前変だって心配してて、様子を見てほしいって頼まれたんだよ」


 澪の名前が出ただけで心臓が大きく跳ねる。


「それで? 何かあったのか?」


 コンビニで買ってきたパンの袋を開けながら俺に話すように促す。


 どうするべきか……

 おそらく自分で考えているだけだとまとまらないだろうし、このモヤモヤしたものがいったいなんなのかわからないだろう。

 だからといって、この事を正直に話すのは気恥ずかしい。

 でも、拓也の他にこんな事を相談できる人がいないことも事実だ。

 どうしようかと考えた末に俺はゆっくりと口を開く。


「これは……友だちの話なんだが」


「は?友達の話?」


「そうだ」


「さすがにそれは無理が……」


「友だちの話だ」


「お、おう」


 納得がいかないように頷くが、そんな事御構い無しに話を続ける。


「その男には昔からの知り合いの女がいたんだ。なんだかんだずっと一緒にいるし仲は悪くないと思う」


「幼馴染みってやつだな」


 拓也の相槌にうなづく、どうやら話に乗っかってくれるようだ。


「この前、とある事をきっかけに膝枕をしてもらえる機会があったんだ」


「は?」


 驚いた表情をする拓也を無視して話を進める。


「それからというもの、その時の事やその女のことばかり考えるようになってしまったそうなのだ」


「……」


「ずっと頭から離れなくて授業にも集中できない。それだけじゃないっ、よくわからないもやもやとした感情に襲われるんだ!」


 顔をあげ拓也の方を見ると、まるでアホのやつを見るような目をこちらに向けている。


「それは、友達の話なんだよな?」


「そうだよ。そんなことより、お前にはこれがどういうことかわかるのか?」


「まぁな……」


「本当か!? なら教えてくれよ」


「はぁ……」


 大きなため息を一つ。


「それはな、その男が女のことを好きになったってことだよ」


「……は?」


「つまり恋だ、恋」


 拓也の言葉の意味はわかるが全く理解が追いつかない。


「どう考えてもそれ以外ないだろ」


 さも当然のことだと言わんばかり呆れたようにいうと、パンを一口食べる。


「いやいや! そんなわけない! 俺が澪に恋しているなんて!」


「おい……友人設定はもういいのか?」


 うるさいっ、そんなことはどうでもいいんだよ! 話がややこしくなるだろうが!

 心の中で拓哉に文句を言い、俺は頭を抱える。


 澪のことを好きか嫌いかと聞かれればもちろん好きだと答える。

 物心つく前から一緒にいるし、その後も今に至るまでずっと一緒にいるのだ。そもそも嫌いな相手だったらこんなに長く一緒にいない。


 でも、この好きというのは恋愛感情的なものなんかでは決してなく……そう、家族愛みたいなものだ!

 ずっと一緒にいて家族みたいな存在のはずだ。それなのに……まさか


 顔をあげ拓也を見る。


「俺……澪のことを恋愛的な意味で好きになったのか?」


「もう隠す気すらないんだな」


 そう言って最後の一口を口の中に放り込む。


「伊織は澪ちゃんのこと好きか?」


「勿論だ……でも、これは家族としてというか」


「伊織が言うならそうだったんだろう。でも、その感情は何かをきっかけに変わったんだろう」


「でも、俺は……」


「ずっと一緒にいたことで逆に分からない気持ちってのもあるだろ。ただ、お前の話を聞いた感じだと間違いなくお前は澪ちゃんに恋してると思うぞ」


「……」


 考え込む俺に、やれやれと肩をすくめながら言う。


「じゃあさ、ちょっと想像してみろよ」


「……なにをだよ?」


 悪戯っぽい笑みを浮かべながら言う。


「澪ちゃんが他の男と付き合い出して、その隣にはお前じゃなくて違う男がいるってさ」


「…………………は?」


 自分でも驚くくらい低い声が出た。その光景を想像するだけでイラッとする。うまく説明ができないほど怒りの感情が湧き上がってくる


「ほら、すごく嫌な気持ちになっただろ?」


 拓也の言葉を聞いて想像を止める。


「つまりな、お前は誰にも澪ちゃんを取られたくないくらいすきなんだ」


「――っ」


「澪ちゃんは可愛いからな、あんまりうかうかしてると現実になっちまうぞ」


 頭を殴られたような衝撃が全身を襲う。


「あ、あぁ……」


 俺はただ拓也の言葉に頷くことしかできない。

 拓也が自分の席に戻ろうと立ち上がった時、ちょうどお昼休みの終わりつ告げるチャイムが鳴った。

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[一言] 伊織君理不尽すぎるwww
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