よく分からない感情
遅くなってしまってすみません
ゆっくりと目を開けるとカーテンの隙間から光が部屋の中に差し込むでいるので目に入る。
寝起きで頭がぼーっとしている。寝ぼけた状態で視線を彷徨わせて時計へと視線を向ける。
時刻は朝6時を少しすぎたくらいの時間だ。普段の俺ならまだ寝ている時間だが、今日はいつもよりも1時間以上早く目が覚めてしまった。
ゆっくりと体を起こす。
澪に膝枕をしてくれとお願いしてからなんだか落ち着きがなく色々と考えてしまう。
昨日の夜も寝ようと思ってもなかなか寝付くことができず、ずっとベッドの上でゴロゴロしていた。
気づけば澪のことを考えてしまっているような気がするし、昨日の膝枕のことが頭から離れない。
結局、寝た時間も遅かったし朝も早く目が覚めてしまったが不快感などはない。むしろ調子がいいようにすら感じる。
二度寝しようかと思ったがどうせ寝られないと思った俺は、ベッドから起き上がり洗面台へと向かった。
顔を洗い寝癖をなおす。そのあとリビングへ向かうとそこには父さんと母さんの姿がある。
母さんは台所で朝食の用意をしており、父さんはコーヒーを片手に新聞を読んでいる。
我が家は共働きで、二人とも出かける時間は同じくらいだ。
俺よりも1時間ほど早く出かけるので、起きた時には二人とも出かけたあとだ。なのでいつもは用意してもらっていた朝食を食べてから学校へと行くのだ。
料理をしていた母さんが俺の姿を見つけると、驚いたような表情をする。
「あら? 今日はずいぶんと早いじゃない。 おはよう」
「おはよう。なんか目が覚めちゃったんだ」
「そう。朝食は私たちと一緒に食べちゃう?」
「うん」
そう答え、俺は父さんのいるテーブルに近づき座る。
父さんが新聞紙か顔をあげ言う。
「早いな、おはよう」
「おはよう」
そのあとたわいもない話をしていると、朝食の準備を終えた母さんが料理をテーブルまで運んでくれた。
俺を含め父さんも母さんも、朝はがっつりとたくさん食べるタイプではないので簡単なもので済ませる。
今日のメニューは焼いた食パンに目玉焼き。温め直した味噌汁だ。
食パンにバターを塗り、その上に目玉焼きを乗せる。醤油を少しかけてからサンドイッチのようにして食べる。手早く食事を済ませ、食器を流しに置く。
いつもの時間まで家に居ようかとも考えたが、家にいても特にすることがないので学校に行こうと思い身支度を始める。
自室に戻り指定の制服に着替える。そのあと洗面台の鏡の前で変なところがないかを確認してから父さんと母さんと同じタイミングで家を出る。
いつもギリギリに登校するのだが、今日は時間的にもかなり余裕がある。だからなのか、なんとなんだが心にゆとりがあるような気がする。
すでに登校している生徒の姿を見える。俺も学校に向けて出発し、しばらく歩いていると後ろから声をかけられる。
「あれ? 伊織?」
何度も聞いた声に思わず心臓が跳ねるような感覚がした。
振り返るとそこには、幼馴染みの澪の姿がある。
「よ、よお」
「おはよう。どうしたの? 早いじゃない」
驚いたような表情をしながらこちらに近寄ってくる。
「……たまにはな」
「いい心がけだわ。というか、いつもがギリギリすぎるのよ。もう少し早くしたほうがいいわよ」
そう言って歩き出す澪に合わせて俺も歩き始める。
何故だかいつもと違いソワソワしてしまう。
しばらく何も喋らず歩く。なんとも言えない気まずさを感じてしまい困惑していると、澪から話しかけられる。
「ねぇ、どうしたのよ? なんだか今日の伊織変よ?」
「そ、そうか? いつも通りだと思うけど」
言葉にできない違和感を感じていたので思わず言葉に詰まってしまう。
それに何故だか澪の顔を見ることができず視線を逸らしてしまう。
俺の行動を不審に思った澪が俺の前に回り込むと、覗き込むようにこちらをみてくる。その表情は不審げだが、どこか心配したように見える。
「やっぱり変よ。もしかして、私に隠し事してるんじゃない? やましいことがあるとか……」
「そんなことないけど……」
「ほんと? それなら私の目をちゃんとみて言いなさいよ」
言われた通りにしないと、いつまでもこの状態が続きそうなので観念し、澪の目を見る。
長いまつ毛に大きい瞳。少し冷たさを感じるが、吸い込まれそうなほど綺麗な目をしている。
澪の顔を見るとこれまでに経験したことがなく、自分でもよくわからない感情に襲われる。
「ほ、本当になんでもない。そういえば、学校に用があるんだった。先に行くから」
そう言ってその場から逃げるように駆け出す。
「ちょ、ちょっと!」
澪の呼ぶ声が聞こえるが、構わずその場から立ち去る。
もやもやした気持ちと、やけにうるさい心臓の音を誤魔化すように学校へと走り出した。
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