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1枚目

本日2話目です

 学校が終わるのがいつも以上に長く感じたが、ようやく放課後になった。


 拓也から帰りにご飯を食べに誘われたが、今の俺にとても重要な用事があるので丁重に断ってきた。


 急いで家に戻り澪にメッセージを送り少し待つと返事が返ってきた。



『すぐに俺の部屋に来てくれ』

『なんで?』

『なんでも言うこと聞きます券の使い道を決めたんだ』

『……わかった。でも今すぐは無理。1時間後』

『了解。もしかして忙しいか?』

『平気。とにかく1時間後!』

『……おう』



 どうにか澪の呼び出しに成功した。

 いきなり呼び出してしまったことに今更ながら申し訳なさを感じる。昔から澪の優しさに甘えてしまっている。

 まぁ、この前荷物持ちとしていきなり呼び出されたのだからおあいこだろう。


 部屋の掃除などをして時間を潰していると玄関のチャイム音が鳴る。

 我が家は共働きなので今の時間は、家にいるのは俺一人だけだ。


 インターホン見るとそこには澪の姿があり、急いでドアを開ける。

 そこで俺は澪の姿を見て思わず言葉に詰まる。

 そこにいたのは制服ではなく、いつも以上に気合の入った感じの服装に身を包んだ澪の姿だった。


 美少女である澪はどんな服でも似合うが、今の姿の破壊力は尋常じゃない。幼馴染みとして澪の私服姿んで見飽きるほど見ているが、ここまで気合のはいった姿は見たことがない。


「……」


 黙って見つめていると、澪から冷ややかな声が飛んでくる。


「なに?」


「いや……」


 なんて言っていいのかわからずうまく言葉が出てこない。

 こんなことになったことが今までなかったので困惑してしまう。


「いきなり呼び出しておいていつまで玄関に立たせておくのよ」


「わ、悪い」


 慌てて澪を家の中へと招き入れる。

 澪は何の躊躇いもなくいつものように俺の部屋の方へと進んでいく。

 玄関の鍵を閉めてから澪の後を追う。


 部屋に入り二人きりになり、いつもと違い少し居心地の悪さを感じる。

 何とも言えない雰囲気を消すために口を開く。


「急に呼び出して悪かったな」


「別にいいわよ」


「えーと、着替えてから来たんだな」


「そうよ、悪い?」


「悪くはないけど……」


「そんなことより、女の子がおしゃれしてきたんだから感想の一つくらい言いなさいよ。いつもそう言ってるでしょ?」


「あ、あぁ。とても似合っていると思うぞ?」


「そう、ありがとう」


 そう言うと、少し表情を崩す。

 いつからか忘れてしまったが、小さい頃から女の子がおしゃれしたら褒めるものだと言われているような気がする。


 たしか、母さんが一番初めに言っていたような気がする。

 母さんに影響されたのか知らないが勘弁してほしい。

 荷物係りで呼び出されるたびに同じようなことを言われている人の身にもなってもらいたい。


「それで? 使い道の決まったんでしょ?」


 そっけない態度に見えるが、ほんのり顔が赤くなっているのがわかる。冷静のように見えるが、若干声が震えている。


「ほら、さっさと言いなさいよ。覚悟はできてるわ!」


 覚悟って……澪の服装に惑わされている場合じゃなかった。

 俺は『なんでも言うこと聞きます券』を出し言う。


「膝枕をしてくれ!」


「…………………………………はぁ?」


 びっくりするくらい冷たい声に思わず反射的に謝りそうなのを必死に堪える。

 目が笑っていない。


「いや……えーと……」


 澪の圧力に気圧されてしまう。

 すると、澪は俯きふるふると肩を震わせる。


「膝枕? 膝枕って何よっ。こっちは色々準備したっていうのに……お風呂にだって入ってきたし、下着だって……」


 俯いた状態で何か言っているようだが、小さすぎて何を言っているのか全くわからない。


「ごめん、なんだって?」


 聞き返すとばっと顔を上げた澪。


「なんでもないわよっ!」


 そう言って部屋の真ん中で座る。

 どうしたらいいのかわからず棒立ちになっていると澪が自分の膝を叩いて言う。


「早くきなさいよ。膝枕して欲しいんでしょ?」


「えっ……本当にいいのか?」


「膝枕するくらいなんてことないわよ! 早く!」


「……はい」


 えも言われぬ雰囲気に素直に従い、慌てて近寄り澪の膝に頭を下ろす。

 澪が膝をもぞもぞと動かし頭の位置を変える。


「これで満足?」


 おぉ……これが拓也の言っていた膝枕。

 拓也の言う通り太ももは柔らかいし、なんかいい匂いするしで色々とすごい!


 人生で最初で最後膝枕に感動していると、拓也の言葉を思い出す。澪の照れた姿を見なくては!

 そう思い顔を上げるが顔が見えない。あれ……?


 顔を上げた先には他の人より大きい胸だ。服を押し上げているせい全く顔が見えない。

 予想と違う事態に困惑していると、澪の細く綺麗な手で両頬を押される。それと同時に少し怒った顔をした澪が覗き込んでする。


「ちょっと! 聞いてるの?」


「き、聞いてるからっ」


「で? 感想は?」


「なんというか幸せって感じです」


「そう、ならいいわ」


 満足そうに頷くと両頬から手が離れる。すると、今度は優しい手つきで頭を撫でられる。

 あまりの恥ずかしさに起きあがろうとすると、押さえつけられてしまった。


「動かない!」


 起き上がれるのをやめ、されるがままになる。とても安心する。しばらくこのままの状態でいると、次第に力が抜けていき眠気におそられる。

 瞼が重くなり意識が遠のく。

 完全に意識がなくなる前に澪の声が聞こえたような気がした


「おやすみ」


 ◆◆◆◆


 ゆっくりと意識が覚醒していく。どうやら寝てしまっていたようだ。

 ゆっくりと目を開けるとそこには、こちらを覗き込む澪の姿がある。

 寝起きのボッーとした頭でい今の状況を理解しようとするが、うまく頭が回らない。


「おはよう」


「おはよう」


 澪の挨拶に反射的に返す。

 あぁ、そうだ。『なんでも言うこと聞きます券』使ったんだった。

 今の状況を思い出し、澪に話しかける。


「どのくらい寝てた?」


「うーん、1時間くらいかしらね」


 思った以上に寝てしまっていたようだ。


「もしかして、ずっとしてくれていたのか?」


「うん。だってそう言うお願いでしょ?」


 そう言って手に持つ『なんでも言うこと聞きます券』をひらひらと振る。


「満足したなら起きてくれない? 流石に足が痛くなってきたし」


 起き上がり膝から頭をどかす。


「ありがとう」


「『なんでも言うこと聞きます券』なんだから気にしなくていいわよ。この券でお願いしたことは絶対でしょ?」


「……そうだったな」


 俺たちはこの券を誕生日などにお互いに送り合っていた。

 その時に、この券を使ったお願いは絶対だって子供ながらに約束したのだ。

 澪が〇〇して遊びたいと言ってこの券を使った時は必ずそれをして遊んでいたことを思い出した。


「それじゃあ、私帰るわね」


 そう言って立ち上がる。


「いきなり呼び出してごめん」


 俺の言葉にかるく微笑み部屋を出ていく。その後ろ姿を見ながら、今日の出来事と幼い頃に『なんでも言うこと聞きます券』を使って遊んだ記憶が頭の中でぐるぐるとするのだった。

お読みいただきありがとうございます!


面白いと思っていただけましたら、ブクマ、評価、感想よろしくお願いします!

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