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秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に  作者: カイエ
四章「帰還」
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#15

龍の騎士団(ドラゴン・ナイツ)!」

「ドラゴン関係ないじゃん! 紅の虎スカーレット・タイガー!」

「虎だって関係ねぇだろ?!」

「動物の名前入れるのやめない? 宝石の雨(ジュエル・レイン)

「カナのそれ、魔石戦に憧れてるだけだよね?『飢狼の牙』」

「かっこいい!」

「アリサ、センスあるな」

「そ、そう?」


 絶賛パーティ名決定会議中。

 しかしこれは……。


(ぶっちゃけ、センスが厨二すぎてキツい……)


 っていうか、みんなよくそんな言葉を知ってるなぁ。

 多分ゲームとかの影響なんだろうけど。


「ねぇ、ダイチくん」


 ぼくが皆の意外なセンスに慄いていると、カナちゃんに声をかけられた。


「なに?」

「ダイチくん……じゃなくて、グレンさんのいたパーティ名ってどんなだったの?」


 カナちゃんの言葉に、みんなハッとする。


「あ、それ知りたい」

「参考になりそうだな」

「うんうん」


 みんなが期待を込めた目でぼくを見る。

 ……ふむ。別に隠すようなことじゃないか。

 

「『ウィンスター教会』」

「「「「……は?」」」」


 ぼくが答えると、皆はキョトンとした顔になった。


「は、じゃないよ。『ウィンスター教会』だよ。名前」

「えっと……それは?」

「冒険者パーティの名前なんだよね?」

「うん」

「……なんで教会?」


 なんでと言われても。


「いや、普通にぼくが育った孤児院の名前だけど……」


 ぼくがそう言うと、みんな微妙な顔をした。


「正確には、ウィンスターは村の名前で、そこの教会だからウィンスター教会。そこの孤児院で結成されたから、そのまま名乗ってただけだよ」


 続けてそう言うが、みんなちょっと困ったような顔を見合わせたりしている。

 どうやらもっとかっこいい名前を期待していたらしい。


「なんだよ、確かにあんまりかっこよくないかもしれないけど、パーティ名なんてそんなもんだぞ。出身の村とか師匠の名前だとか、だいたいそんなもんでさ。みんなが考えるようなかっこいい名前のパーティなんてほとんどないんだってば」


 まぁ、やたらと大仰な名前のパーティもなくはないけど、そう言うのは大体、実力がついて実績が蓄積されて有名になり始めたときに改めて付けるブランドみたいなもんだ。初級でドラゴンがどうのって名前をつけたりしたら、おそらく笑われるか、生暖かい目で見られるだろう。


 それもこれもガラハドが悪い。「パーティ名はパーティの顔みたいなものだ」なんて馬鹿なことを言うから、みんな変に気負ってあんな厨二病みたいな名前ばかり出てくるんだ。


 そのガラハドのかつて所属していたパーティは『石英の古郷(パトリア・クリスタル)』という。かっこよさげに聞こえるが、ガラハドの出身地が石英の産地として有名な町だっただけだ。

 まぁガラハドは仲間が死んでからソロ冒険者だったけどね。


「そんなもんだよ。あんまり大袈裟な名前をつけると笑われたり目をつけられたりするかもしれないし。がっかりさせたかもしれないけど……」


 みるみるしょんぼりしていく子供たちに慌ててそんなことを言うが、一人困ったように笑っているカナちゃんがぼくの袖をチョンチョンと引っ張った。

 

「違うよ、ダイチくん」

「違う? って何が?」

「パーティ名のことじゃなくて、その……グレンさんって孤児だったの?」

「ん? ああ。()()は孤児だった。親の顔も知らない。捨て子だったと聞いている」


 オレがそういうと、皆はちょっと泣きそうな顔をした。


(ああ……なるほど)


 日本では孤児はそう多くない。少なくとも身近には居なかったように思う。

 つまりこいつらは、前世のオレの境遇に同情してくれているわけだ。


(みんな優しいな)


 オレは少し嬉しくなって、それでも誤解を解くことを優先する。


「勘違いしないでほしいんだが、少しも不幸じゃなかったよ?」

「そうなの?」


 そう言うと、皆はまた顔を見合わせる。

 みんな無言なままで、言葉を発するのはカナだけだ。

 うん、あまり良い状況ではないな……。


「血は繋がっていなくとも、院の連中は家族だった。母親がわりのシスターは厳しかったが、愛情深く優しい人だった」

「そのシスターさんは……?」

「とっくに亡くなったよ。もういい歳だったしな。孤児院の連中とパーティを結成してからわりとすぐだった」

「じゃあ、パーティメンバーは全員孤児だったの?」

「いや、そんなこともない。結成した瞬間は孤児院のメンバーだけだったが、あとから入ってきたやつは孤児じゃなかったし、それに一人は人間じゃなかったからな」

「「「「えっ!?」」」」


 人間じゃない、という言葉にみんなが反応した。

 確かに、向こうの世界じゃ人間以外の知的生命体はいなかったからなぁ。

 さらに人間のうち一人がエルフだと知ったらみんなどんな顔をするのだろうか。

 

「ダイチくん、前世のことを思い出すの、辛い?」

「いいや、まったく辛くはない」


 これは本心だ。


「じゃあ、良かったら……」


 カナが少し言い淀む。


「なんだ?」

「良かったら……前のパーティの話を聞かせて?」


 カナがそう言うと、他のメンバーもうんうんと頷いた。


「それは構わないが……そんなもんに興味があるのか?」

「そりゃもう、大先輩の話だし」

「大人ダイチの話なんだから、興味あるぜ」

「あたしも興味ある」

「ね?」


 ふむ。


「わかった。別に隠すような話でもないし、お前たちにしゃべったところで誰かに叱られる心配もない」


 もう全員死んじまってるわけだし。


「聞きたいなら話そう。……だが、そんな面白い話じゃないぞ?」


 オレがそう言うと、皆の目がキラキラと輝く。

 だから大した話じゃないと言うのに。


 期待を込めた目に囲まれながら、オレは語り始めた。


「先ほども言った通り、オレは孤児だった。と言っても、物心付いた頃にはすでに孤児院だったから、それが当たり前だった……」



※ グレンの昔語りは次の章になります。

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