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秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に  作者: カイエ
三章「遭遇」
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29/64

#2

 この日、ぼくたちは新しい道を見つけて探索していた。


 ほとんど一本道が続いて、そのうちに少し広い八差路に出る。

 いつかカナちゃんとアリサを連れて見つけた広場に近いけれど、今日見つけた広場には真ん中に噴水らしきものがあった。

 噴水は水が枯れていたが、ちょっといい雰囲気の場所だったので、ぼくたちはここで食事を兼ねて休憩することにした。


「はい、サンドイッチ持ってきたよ」


 アリサがカバンをゴソゴソやって、包を取り出す。

 洋食屋をやってるアリサの家では、たまに材料が余ってしまう事があるらしく、そんなときにはアリサが料理して持ってきてくれる。


「お、サンキュ、うまそ!」


 ケンゴが真っ先にてをだそうとして、コータがその手をぱちんと叩いた。


「先に頂きます、でしょ!」

「お、おぅ、すまねぇ。アリサ、頂くぜ」


 いつもやり取りをして、ケンゴがサンドイッチにかぶりつく。

 ぼくも一切れもらって、口に運ぶ。


「うわ旨っ!」


 思わずそんな言葉を口にする。

 薄切りのハムが大量に挟まっていて、本当に旨い。


「ホントだ、美味しいね!」


 カナちゃんも喜んでもくもくとサンドイッチを口に運ぶ。

 小動物のようでとてもかわいい。


「うちのパパ、いつも材料の仕入れに失敗すんのよ……今日の材料もそう」


 勿体無いったら……とアリサがブツブツ文句を言いつつ、自分もサンドイッチを食べる。

 みんなでサンドイッチを食べながら、周りを見回す。


「こんな噴水みたいなものもあるんだね」

「水はないけどな」

「どうにかしたら、水が現れたりしないかな」

「どうだろ」


 壁を見ると、照明のようなものもある。もちろん光ってはいないけど。

 天井を見ると、ちょっとしたドームのようになっていた。


「あっ」


 カナちゃんが小さく声を上げる。


「……星?」

「「「え?」」」


 みんな一斉に空を見上げる。


「ほら、星……なわけはないんだけど」


 カナちゃんがそう言って、facem(灯りよ) で生まれた光の玉に手をかざし、光を消す。

 辺りが一気に暗くなり、


「わぁ……」


 アリサが声を漏らす。


 空は、まるで満天の星空のようだった。

 ドームには、点々と光の粒。

 描かれたものには見えない。

 窓の外に広がる夜空のような、ごく自然な星明かりだった。


 うおお……と感嘆の声を上げるぼくたち。


「これも、魔術とやらで出来てるのかな」

「ダンジョンだぞ? 何のために?」

「わかんねぇけど、そもそもダンジョン自体が魔法でてきてんだろ?」

「そういえば、ダンジョンって何のために作られたのかな」

「目的がはっきりしないけど、見た目が綺麗でも、僕らを殺すためにあるってダイチが言ってたな」

「ますます、こんなに綺麗にする意味がわからないね」


 皆で上をむいて、しばらく見とれる。


 こうして見ると、とても洞窟の中だとは思えない。

 なぜか薄っすらと周りが見えるし、空はさらに明るく星空が広がっている。

 魔法というのは、すごいものなんだな……。


 どのくらいそうしていただろうか。

 突然コータが真剣な顔になり、「しっ!」ぼくたちに注意を促した。


「……コータ?」

「モンスターか?」


 アリサとケンゴが小声で様子を伺うも、


「静かにして……ううん、多分モンスターじゃない。とにかく、みんな、こっちへ……音を立てないで」


 そう言ってコータは立ち上がると、もと来た道へ忍び足で向かう。


 コータの索敵能力は信用できる。

 いつだって、隠れたところにいる敵を真っ先に見つけるのがコータだ。

 だから全員余計なことは言わず、静かにその後を追う。


「みんな壁に寄って。なるべく音を立てず、息も鼻じゃなく、口でして」

「わかった」


 皆、素直にコータの言うとおりにする。


「何も起きねぇぞ」


 聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でケンゴがコータに尋ねるも、コータは怒ったような顔で口に人差し指を持っていく。「黙れ」という意味だ。

 と、反対側の通路が、ぼんやりと明るくなった。


(この光は……「facem(灯りよ)」?)


 灯り魔法? このダンジョンで、僕たち以外の?


 モンスターは光を必要としない。

 つまり、この光は――。


 はたして光に少し遅れて、ガシャ、ガシャ、と規則的な音が聞こえてくる。


(足音……?)


 皆はコータに言われるまでもなく、必死に息を潜めている。

 今居る通路は暗い。

 魔法の星空の光が届かないので、こちらから噴水は見えるが、噴水側からこちらは見えないはずだ。


 足音はだんだんと大きくなる。

 おそらく二足歩行。

 たまに立ち止まるように音が止むが、またガシャ、ガシャと音がして、それはだんだん大きくなる。


 そして――光が現れ、続いて一人の男が姿を見せた。

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