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秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に  作者: カイエ
一章「秘密基地をダンジョンに」
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#18 一章エピローグ

 ケンゴがモンスターを倒してから五分ほど歩き、やっと外の光が見えてきた。


 今回はけっこう深いところまで潜ったな。

 モンスターも倒したし、なかなか良い結果になったと思う。


「あの、ダイチくん」


 カナが小さな声で話しかけてくる。


「なんだ?」

「先ほどのモンスターだけど、外に出てきたら大騒ぎにならないかな」


 ん? 外?


「何を言ってるんだ。こんなスカスカな階層なのにスタンピードなんてあるわけないだろう」

「スタンピード……?」

「ダンジョン内のモンスターが増えすぎて外に溢れ出す現象だ。基本的にモンスターはダンジョン外では生息できない。魔力が足りないからな。スタンピードが起きると人間や家畜の持つ魔力を求めて暴れまわることもあるが、基本的には何百年も放置された魔力の強いダンジョンでしか起きない。このダンジョンだと、……そうだな、何千年放置しようと問題はない」

「……よくわからないけど、大丈夫なんだね?」

「ああ、問題ない」


 それよりも今日通った魔力溜まりのほうが気になる。

 これまで一度も遭遇しなかったモンスターに今日になっていきなり二度も遭遇したのは、どう考えても無関係ではないだろう。

 いざとなれば、オレが一人で調べれば……


 * * *


 そんなことを考えるうちに、ぼくらはダンジョンから戻ってきた。

 基地部分にたどり着くと、みんな、へたり込んだ。

 やっぱり初めてのモンスター遭遇がショックだったのだろうか。


「ねぇ、ダイチ?」


 座り込んでいたアリサが、ギロっと()()の方を睨む。

 あ、これあかんやつや。


「ダイチ……さっきのアレ、何?」

「な、何と言われましても……」

「ダイチが、ダイチじゃなくなってたんだけど……ていうか、アレ、誰?」

「えっ、いやぁ、そりゃもう、あれも『ぼく』としか言いようが……」


 このあとぼくは小一時間、皆から質問攻めにされた。


 小一時間……つまりそれだけまだ時間が余っていたということだ。

 そう、ダンジョンであれほど歩き回ったにも関わらず、戻ってみればダンジョンに潜った時刻から一分程度しか経っていなかったのだ。


「どう考えても、この場所はおかしい」


 ダン、とアリサは机を叩いた。

 まだアリサの椅子はないのでぼくの椅子を差し出し、ぼくはしかたなく所在なさげに立っている。

 ぼくが一体どんな悪いことをしたというのか。


「これだけウロウロしてるのに、なんで時間が経ってないの? スマホと懐中電灯のこともそうだけど、それよりも何よモンスターって!」

「いや、ぼくもびっくりです。あんな大きな蜘蛛がいるんだね」

「誤魔化すな!」


 もう一度アリサが机を叩く。

 壊れるからやめて欲しいなぁ……。


「オレも聞きたいことあんだけどさ」


 ケンゴはそう言って、ポケットから赤い小石を取り出す。


「モンスター、ジャイアントナンタラをぶっ叩いたらさ、あっという間に溶けちゃったじゃん。あれってどういうこと?」


 ジャイアントナンタラ……惜しい。ジャイアントタランチュラだよ。


「や、ぼくにもさっぱり」

「あと、この石が残ってたじゃん。これも……何なんだ?」

「だからぼくにもわかんないよ……次ダンジョンに潜った時に、ぼくが答えられそうになってから質問してみるとか……」

「「「「いや、さすがにもう怖くて潜れないから!!」」」」


 全員からツッコまれた。

 あれぇ、おかしいな。一応この中ではぼくがツッコミ役のはずなのに。


 ぼくが現実逃避していると、カナちゃんが


「ちょっとそれ貸してみて」


 と手を差し出した。


「ん、これか?」


 ケンゴがそれを差し出すとカナちゃんはそれを受け取って、光に透かしてみたり、弾いてみたりして観察し始める。

 ああ、カナちゃんは何をしてても可愛いなぁ……。


「ねえケンゴ君、もしこれ壊れちゃったら困る?」

「ほえ? な、なんで?」

「えっと、ちょっと試してみたいことがあって……」

「う、うーん……」


 ケンゴが困った顔で腕を組む。


「ぶっちゃけ、ちょっと持ってるの気持ち悪い、てのはあるんだよな。でもモンスターを倒した記念って意味では惜しいような気も……」


 ゴニョゴニョ言うケンゴ。

 いいから黙ってカナちゃんに差し出せ。


「だめ……?」


 カナちゃんが少し悲しそうにケンゴに「お願いポーズ」を取る。

 ケンゴが諦めたようだ。


「あー、わかった、わかったよ、いいぜ。何する気か知らねーけど」

「ありがとう!」


 カナちゃんは、ぱぁっと明るい顔になって、


「こうするんだよ」


 といって、魔石を握りしめて


「るーめん」


 と呟いた。


 とたん、魔石はシュルっと音を立てて空気に溶けて――そこには、小さな光の玉が浮いていた。


「「「「魔法ッ?!」」」」


 カナちゃんを除いた全員が驚いて叫ぶ。


「やった、成功!」


 カナちゃんが嬉しそうに飛び跳ねる。


「な、なな、ななな」


 ケンゴがまたもや意味不明になっている。

 じゃなくて。


「カナちゃん、何をしたの?!」

「えとね、さっき『ダンジョン』で、ダイチ君が最初に倒した石を握って「るーめん」って言ったのが聞こえたんだ。そしたら光の玉が現れて……そのときは驚いたけど、ダイチ君が『なぜ驚いてるんだ?』(きりっ)とか言うからさ。だから、真似してみたら、できた」


ちょっと待って。それぼくのマネ?

……じゃなくて。


「えっ、じゃあ、もしかしてこの石があれば誰でも魔法が使える?」

「ま、魔法……ちょ、魔法?!」

「ぼくらも魔法が使えるってこと?!」


 みんなのテンションがおかしい。


 そして、当然のことながら。


「「「「モンスターを狩りまくって魔石を集めるぞ!」」」」


 と、そういうことになったのだった。

 これで第一章は終わりです。

 次から第二章スタートです。

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